ぴいなつの頭ん中 -26ページ目

ぴいなつの頭ん中

殻付き。そにっくなーすが言葉を地獄にかけてやる

白昼社から刊行された、(そにっくさんも寄稿している)文藝誌オートカクテル 耽美特集のレビュー企画です。気になったら買いなさい。


星に(なって)願いを…伊藤なむあひ

映画『ラブ・アクチュアリー』みたいなあたたかく願いが叶うちょっとした幸せのシーンと、ぞくっとするような突然の願望成就が織り混ざってどんどんイメージが膨らむ。もし自分が世の中のみんなの願いを叶えてあげる能力をもったとしたら、どういう風にできるだろう?あれは叶えてもいい願いなのかな?おしまいや死がないことをつい祈ってしまうこともあるけれど、おしまいや死によって生かされているようなもんなのだ。『誰かの幻想でも、嬉しい』は最強にパンチライン。


コトリ…にゃんしー

セカイで暮らすこどもたちのやりとりは青くてやさしくてほんわりした絵本の中の出来事のように見えるのに、物語が進行してくうちにどんどんやわらかくて青い水彩画が具体性を持って醜い現実が顔を出す。かれらが春を知らなかったのは春がそういう季節だからだ。変わっていったり、思い出したり、しなければならない季節だからだ。春を青で描こうとすると人間の成長過程のうち最も醜くて美しい形態となる。コトリはおそろしい。


シンデレラ、ー彼女について思う二、三のこと…赤木杏

自分とは物理的に異質なもののように思える父親。自分とは精神的に異質なもののように思える母親。時計がいちばん親みたいな存在であり、家庭という閉じられた社会のなかでシンデレラはぼんやりさせられていく。ふたりの姉の様相や行動の描写がものすごい。ディズニーの悪役キャラみたいに、映像がパッと浮かぶ。意地悪な姉を、みずからの美しさに気づいていないひとと思い、姉は美しいですと話すシンデレラにとって、人生を知らないシンデレラにとって、美しさとはなんなのだろう。



1枚目

親愛なるあなたへ

あなたを愛しています。
あなたの手であたしを殺してください。


2枚目
下駄箱に手紙を入れられるなんてとてもドラマチックだと
あなたはわくわくしたのではないですか。
つい最近、大きく輝く本物の月のしたで高校生が委託殺人を行なった事件があったことで
あなたはびくびくしたのではないですか。
あたしはあの事件があるまえから、あなたのことを愛していましたし
愛する人にこそ殺されたいと思っていました。
あたしは世をはかなんで死にたいのではありません。
どっちかというと人生楽しんでいるほうですし。
ただ、この世でいちばん愛する人に殺されて死ぬことを夢見ているだけなのです。

3枚目
待ってます。
あなたが朝使うのと同じ車両に毎朝乗っています。
頭にあかいりぼんをつけた150センチくらいの女です。

かしこ
13歳の魔女はおかあさんから教わったお薬のつくりかたのなかでいちばんしっかり覚えているもののうちのひとつを実践する。

ちいさな手に顔ほどの大きなフラスコ。両手じゃなきゃ持てない。故郷から遠く離れたこの海辺の街では、フラスコ一個あたりの値段が結構高いから、割らないように細心の注意をはらって取り扱う。

恋なんかまだ知らないから、惚れ薬のつくりかたは覚えなかった。
憎しみをまだ知らないから、毒薬のつくりかたも覚えなかった。
彼女が夢中になったのは空を飛ぶこと。
すっかり古びた、けれどしっかりしたシトカ・スプルースの、手づくり箒。ギター職人のおとうさんが作ってくれた大切なものだ。あれは10歳の誕生日、ケーキのろうそくを力一杯吹き消したあとに、あかいりぼんを纏って差し出されたそれは、彼女のいちばんの宝物。シトカ・スプルースが彼女のふとももよりも先に触れたのは、彼女の涙だった。故郷を出て、自分で選んだ遠い街で、魔女としてのひとりだちをしなさい。将来を決める告知を受けたちいさい彼女のひとみは、さびしさとふあんがみるみるたまっていっぺんに流れ出した。

いまでは箒をみても、故郷を思い出しても、泣いてしまうことはない。新しい街ではうまくやっている。飛ぶことしか能がないわたしができることをみつけたのよ。それも到着凡そ2時間ほどで。居候しながら始めた宅急便稼業は波に乗っていた。

魔女が箒にまたがり空を飛べるのは、しくみがある。特殊な薬剤を箒のえに塗りたくってから、またがると、魔女の内膜は
箒の木材と化学反応を起こした薬剤を吸収し、興奮を起こすのだ。
彼女が今作っているのは箒に塗るための薬剤。

彼女は空を飛ぶことだけしか覚えなかったから、おとうさんのくれたシトカ・スプルースに、自分の薬剤を塗ってから、またがる。
『あ……』
刺激は最高潮……10歳のときにおぼえてから13歳の目覚めは日に日に強くなってゆくばかりだ。
ハイになった気持ちに任せていれば体はどんどん浮かびあがる。
陶酔と興奮を持続させながら彼女は空を飛ぶ。
『魔女の宅急便です。お荷物を届けに参りました』
上気した頬、充血した両眼。顔にはゆるみきった笑みが浮かんでいる。
ドアが閉まる前、最後に聞いたのは知らない男のマジで?という声だった。マジでのマが最大限に強調されるあまり分解されたイントネーション。もあじで?と言ってるようにリスニングされても、結局私は25年間で脳内に培った文脈と経験で、マジで?って言ってるんだなぁと思う。笑い方で人を差別するのはいけないが私はその男のホッホッホヒーッヒッヒという笑い方がとても好きだった。綺麗な指。ホッホッホヒーッヒッヒ。新幹線はきらい。デブは必ずドア付近にいるとよく君は言っていたよね。唾や雨が顔に飛ぶたびに私はちょっとした幸せを覚えた。ホッホッホヒーッヒッヒ。真面目で仕事のできる君が発する唯一の異質。ホッホッホヒーッヒッヒ。思わず飛び出るみたいな笑いがとても好きだ。申し合わせたような5秒前以内に予定された笑いなんてなんの価値がある?鼻息じゃないかあんなもの。ホッホッホヒーッヒッヒにこそ価値があるのだ。愛があるのだ。笑顔があるのだ。
随分間があいてしまいましたが
時をかける少女、のパロディとして
○○をかける少女、というのをたくさんたくさんみんなで考えて
いくつか出てきたのでまとめます。


水をかける少女
迷惑をかける少女
ふりかけをかける少女
文字をかける少女
後足で砂をかける少女
マヨネーズをかける少女
橋をかける少女
ハンガーをかける少女
カネをかける少女
大勝負にかける少女(@kujujuju0206)
タスキをかける少女
雑巾をかける少女
掃除機をかける少女
アイロンをかける少女
目をかける少女
夜這いをかける少女
奇襲をかける少女
容疑をかける少女
揺さぶりをかける少女
情けをかける少女
声をかける少女
わなをかける少女
かまをかける少女
催眠術をかける少女
音楽をかける少女
圧力をかける少女
もやをかける少女
手間暇をかける少女
二股をかける少女
命をかける少女
thanks あしゅりんさん(@ashuring)


番外編
じっちゃんの名にかける少女(@matsurara)
2かける少女(@yummy_upup)
給料日までまだ2週間あるのに、負けが込みすぎてほとんどカツカツで自棄になりイチバン倍率の高い馬に3連単で全財産8000円をかける少女(@yummy_upup)

おもしろかったですね
またこういう大喜利やりたいですね