フォ〇ストで2016年4月からアップしておりました大宮さんの恋物語の過去作です。
全編サトシ語りです。
毎日20時更新予定です。
楽しんでいただけたら・・・どぞ・・・♡
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「無事に戻ってきてくれて・・・。」
「・・・。」
「ホントによかった。」
胸に顔をうずめ。
甘えるようにすり寄るカズ。
鼓動が。
自分でもわかるくらいに・・・ドキドキ言っている。
これは。
・・・やばい。
その・・・これは。
そういう事で・・・いいんだよな。
このカズの仕草と・・・さっきの言葉は。
まっすぐにとらえていいんだよな。
見下ろすと。
ちょっとくしゃっとなったカズの黒髪が。
艶やかに光っている。
いつも見ていたカズの黒髪が。
俺の胸の中にある不思議。
いや・・・不思議なんだけど・・・でも。
紛れもない現実だ。
うん。
これは・・・嬉しい。
そうかも・・・と思ってはいたけど。
こんなにもはっきりと。
気持ちを伝えてくれるなんて。
嬉しくて・・・たまらない。
そっと・・・抱き寄せて。
きゅっと力をいれる。
同じように力をいれ・・・俺にしがみつくカズに。
愛おしさが増す。
俺の腕の中で。
俺にしがみついて下を向いたままのカズが。
ポツポツと話始めた。
「最初は・・・声・・・だったの。」
「・・・。」
「灰色の煙の中・・・。」
「・・・。」
「息が苦しくて・・・咳こんだ僕を・・・。」
「・・・。」
「呼ぶ声。」
「・・・。」
まさか。
あの1年以上前の・・・あの火事の時の事を。
言っているのか・・・?
「僕を心配そうに見つめるあなたを見て・・・。」
「・・・。」
「この人なら大丈夫・・・って・・・。」
「・・・。」
「あの時・・・朦朧としながらも・・・思った。」
「・・・。」
すっと体を動かし。
起き上がるカズ。
俺を・・・見つめ。
そして言葉を続けた。
「それからずっと・・・。」
「・・・。」
「夢を見続けていたみたい。」
「・・・。」
「あなたの夢を・・・ずっと・・・。」
「・・・。」
ずっと・・・って。
1年以上も・・・?
眠っている間。
ずっと。
俺の夢を見ていたの・・・?
「ここ・・・宇宙船で目覚めた時は・・・。」
「・・・。」
「何が起きているのかわからなくて・・・。」
「・・・。」
「ただただ・・・怖くて。」
「・・・・。」
「震えてたけど・・・。」
あの時の。
医務室でのカズを思い出す。
部屋の隅で震えていたカズ。
「でも・・・声が・・・。」
「・・・。」
「あなたの・・・聞き覚えのある声が聞こえて・・・。」
「・・・。」
「大丈夫だから・・って・・・助けるから・・・って・・・。」
「・・・。」
「ああ・・・あの人だ・・・って・・・そう思って。」
「・・・。」
「僕は・・・。」
「・・・。」
「安心したの。」
そんな事。
思い出してくれていたんだ。
「この・・・腕に。」
「・・・。」
「・・・つかまってさえいれば・・・。」
「・・・。」
「僕は・・・大丈夫なんだって・・・。」
「・・・。」
そう言いながら。
俺の腕にスリスリと触れるカズ。
まるで・・・歌うようなその声に。
夢を見ているようなその表情に。
くぎ付けになる。
「どうして・・・。」
「・・・ぇ・・・?」
「告白した俺から逃げたの?」
「・・・。」
下から覗き込むようにして。
言った。
責めてる訳じゃないけど・・・でも。
それなりに俺・・・へこんだから。
「あれは・・・。」
「・・・。」
「びっくりしちゃって///。」
「・・・。」
「その時はまだ・・・そういう・・・恋とか・・・そういうの///。」
「・・・。」
「わかってなくて///。」
「・・・。」
「だから///その・・・あんな事言われて・・・。」
「・・。」
「びっくりしたって言うか・・・その///。」
「・・・。」
ぎゅっと。
カズの肩を抱き寄せ。
頭同士をコツン・・・とくっつける。
窓ガラスに映る俺達。
ぴったりとくっついて。
まるで。
一つの塊になって。
二人・・・宇宙に漂っているようだ。
「じゃあいつ気づいた?俺を・・・そういう意味で好きだって。」
「・・・。」
「・・・ん?」
「なんか・・・キャプテン・・・。」
「・・・ん?」
「そんな強引な感じだったっけ///?」
「・・・ダメ?」
「別に・・・いいけど///。」
照れているのか。
軽く・・・俺から離れようと体に力を入れたのがわかった。
わかった・・・けど。
そんな簡単に離さないよ。
どれだけ。
俺がこうしたかったか。
「やっぱりあの・・・ジュン君を助けに行く時に・・・。」
「うん。」
「キャプテンを・・・失うかもって思ったら・・・。」
「・・・。」
「すごく怖くなって・・・。」
「・・・。」
「それで・・・。」
「・・・。」
「だから・・・。」
「・・・。」
「ね・・・ぇ///。」
「ん?」
「くすぐったい///。」
俺は。
ずっと。
カズのその・・・黒髪をなでていた。
そのまま・・・耳に触れ。
その柔らかい耳たぶを触っていたようで。
カズから軽いクレームが来た。
つづく