Asterisk 15 | ナツコのブログ

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にのちゃんが大好きです。
かわいい大宮さんを愛でております。
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フォ〇ストで2016年4月からアップしておりました大宮さんの恋物語の過去作です。

 

全編サトシ語りです。

 

毎日20時更新予定です。

 

楽しんでいただけたら・・・どぞ・・・♡

 

 

 

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・・・と。

廊下からの扉がすーっと開き。

カズがエアロックへと入ってきた。

俺を見ると壁に手をついて泳ぐように近づいてきて。

俺の肩の取っ手を握って動きを止めようとする。

少し振られるようにしてバランスを崩したその体に。

俺はそっと腕を添え動きを止めた。

カズは・・・さっと宇宙服の状態を見て。

そして。

・・・。

・・・。

さっきから俺が苦戦していた留め具を。

一発でカチッと・・・留めてくれた。

それだけではなくて。

無言で・・・着々と俺の宇宙服の留め具を留めていく。

浮いたままの状態で手早く着せてくれる。


「カズ。」

「・・・。」

「宇宙服・・・着方知ってるの?」

「・・・マーくんに教えてもらったから・・・。」

「・・・。」

「知っておいた方がいい・・・って・・・。」


なるほどね。

俺の知らないところで。

こうして・・・カズは。

いろんな事を学んでいたのか。

・・・でも。


「無重力・・・苦手だろ?」

「・・・。」

「もう・・・戻って・・・」

「少しなら平気。」


黙々と留め具を留めて行くカズ。

俺と目を合わせない。

仕方なく俺も留め具をチェックし始め。

だんだんと宇宙服が完成していく。

浮いているカズの体。

それでも・・・初めて無重力で浮いた時よりも。

体のバランスを取るのが上手くなっている。

そんなところにも。

時間の経過を感じていた。













「ありがとう・・・もう大丈夫だから・・・」

「・・・させない・・・って・・・。」

「・・・え?」

「・・・。」

「・・・カズ・・・?」

「・・・。」

「・・・。」

「一人になんかさせないって・・・言って・・・くれたよね。」


ふっと。

顔を上げたカズ。

やっと目が合った。

俺を。

見つめるカズの瞳が潤んでいる。

宝石のようだ・・・と思っていた琥珀色が。

今。

熱い温度を持って俺を見つめる。

その。

あまりの熱さに耐え切れず。

今度は俺が目をそらした。


「俺にもしものことがあっても・・・。」

「・・・。」

「・・・マサキやショウがいるから・・・。」

「・・・。」

「・・・操縦は・・・マサキも訓練を受けているから大丈夫。」

「・・・。」

「病気の事だって・・・ショウがちゃんと見てくれるし。」

「・・・。」

「だから・・・一人じゃないよ。」


本当は。

そう言う意味じゃないって。

違うって。

そう・・・思いたい。

でも。

・・・。

・・・。

そこまで自惚れられない。


「怖いのは・・・。」


言いながらカズが。

すっと俺の・・・宇宙服の手を握る。

かすかに感じる・・・カズの力。


「一人になること・・・じゃなくて。」

「・・・カズ・・・?」

「・・・。」

「・・・。」

「あなたを・・・失う事。」

「・・・。」


その。

あまりに震えた声に。

思わず顔を上げ。

そして見つめ合う。

カズ・・・それは。

どういう意味?

俺は今。

どんな顔・・・してる?

















「到達まで7分切った!キャプテン!」

「・・・。」

「キャプテン!」

「了解!もうすぐエアロックを出る!」


マサキの大声で・・・現実に引き戻される。

カズが。


「シールド・・・下ろすね。」


そう言って。

俺のマスクのシールドを下げようと手をかけた。

そして。

下げる直前に。

俺の目の前にきて・・・カズが言った。


   無事に戻って


甘い声。

まるで・・・おねだりをするような。

そんな・・・ささやき声。

シールドが下がる。

無音。

シールドの向こうの和が。

顔を近づけて来て。

そして。

・・・。

・・・。

シールドの端に。

ちゅっと。

口づけた。

カズの唇の形に・・・一瞬・・・曇ったシールド。

でも。

曇り止めがされているシールドは。

すぐにその痕を消してしまった。

でも。

俺の・・・目に焼き付いたカズのキス。

あれは。

うん。

キスで・・・いいんだよな。

振り向きもしないでエアロックを出て行くカズが見えて。

そしてすぐに減圧が始まった。

さっきまで軽く震えていた手の震えが止まり。

心が落ち着いてくる。

と同時に。

覚醒したように頭がクリアになり。

いいイメージしか浮かばない。

宇宙空間をジュンめがけて進み。

その体を自分とつなぎ。

そしてまた・・・すぐにここへ戻ってくる。

そんな事が。

簡単にできるような気がしていた。
















無音。

音をなくして。

目を閉じる。

カズの・・・声。

心に奏で。

ががっと・・・体に響く振動で目をあける。

目の前には・・・宇宙空間。

扉は。

開かれた。

イヤホンのチャンネルをあけると。

ショウがジュンを呼ぶ声と。

マサキの時間を読み上げる声が聞こえた。

よし・・・行こう。

うん・・・いける。

俺は。

命綱を確認し。

そして。

トン・・・と壁を蹴った。






つづく