フォ〇ストで2016年4月からアップしておりました大宮さんの恋物語の過去作です。
全編サトシ語りです。
毎日20時更新予定です。
楽しんでいただけたら・・・どぞ・・・♡
**********************************
「ジュン!」
叫んでも届かない。
バイタルを見る。
正常値を示しているけど。
・・・。
・・・。
応答がない。
命綱を巻き取ろうとしたけど。
船体のどこかにひっかかっているようで。
少し巻き取っただけで。
ガクガクいい止まってしまった。
「ジュン!」
「脳震盪を・・・起こしてるかも・・・。」
自分も頭を軽く抑えたままのショウが俺の横に並ぶ。
そのショウの後ろ。
カズが。
イスにもたれたままうつろな瞳で俺を見ていた。
「キャプテン・・・中にいた俺達でもあれだけの衝撃だ。」
「・・・。」
「もろに受けたジュンは・・・どれだけの・・・」
「キャプテン!隕石群が来る!」
「・・・!」
マサキの大声につられレーダーを見る。
小規模の隕石群がやってくるのが見えた。
さっきの衝撃波に影響されて。
どこかで生まれた隕石群だ。
多分・・・到達まで十数分。
船内にいれば・・たとえぶつかっても大したことのないくらいの大きさだけど。
今。
船外にいるジュンに。
もしも・・・ぶつかったらひとたまりもない。
いや・・・例え。
ぶつからなくても。
命綱が切断されたら。
ジュンは広い宇宙空間に。
放り出されてしまう。
「ジュンを助けに行ってくる!」
マサキが。
部屋を出て行こうとする。
その肩をつかんで言った。
「マサキ・・・その骨折した腕では無理だ。」
「キャプテン・・・。」
「俺が行く。」
「・・・。」
しばしの沈黙。
ジュンを助けに行くとはいえ。
隕石群がやってくる中・・・船外活動をすることになる。
時間との勝負で・・・もし間に合わなければかなり危険だ。
でも。
・・・。
・・・。
ショウは・・・船外活動の訓練を受けてはいないし。
カズはもちろん論外。
マサキがケガをしている今。
行けるのは。
俺しかいない。
「サトシ・・・。」
「ショウ。ジュンに呼びかけ続けてくれ。」
「わかった。」
ショウが。
真剣な瞳で頷く。
俺は。
マサキの肩をつかんで言った。
「マサキ・・・俺とジュンに何かあったらお前がこのガイア5のキャプテンだ。」
「・・・。」
「航行ルートはインプットされているし。」
「・・・。」
「アスタリスクに近づけば・・・遠隔操作をしてもらえるから。」
「・・・。」
「着陸は向こうに任せろ。」
「・・・。」
「わかったな。」
「・・・。」
「返事。」
「・・・わかった・・・。」
俺はマサキに。
隕石群のガイア5への詳しい到達時間を計算し。
俺に伝えるように言った。
そして。
・・・。
・・・。
イスに座ったままの愛するカズに。
・・・。
・・・。
カズに。
・・・。
・・・。
触れたかったけど触れずに。
そして言いたかったけど何も言わずに。
コントロールルームを出た。
飛ぶようにして廊下を進み。
そのまま船外へと出られるエアロックに入った。
エアロックとは。
船内と船外を結ぶ・・・気圧を変化させる無重力の部屋のようなモノで。
ここで宇宙服に着替えることになる。
ジュンも。
ここから出て行った。
壁に吊り下がった宇宙服に自分の体を入れる。
留め具を留める手が若干震えている。
俺しかジュンを助けられない・・・というプレッシャーと。
隕石群がやってくる・・・という時間的なリミット。
そして。
もしかしたら。
もしかするかもしれない・・・という恐怖。
それが。
現実として降りかかる。
大きく深呼吸をして。
頭を軽く振る。
もう一度。
さっき震えて止められなかった留め具に手をかけるけど。
やはり・・・留められない。
体を脱力させ目を閉じて。
もう一度大きく深呼吸をする。
「隕石群・・・到達まであと9分30秒!」
マサキの大声が。
エアロックの壁のスピーカから聞こえた。
あと9分30秒の間に。
宇宙服を着てエアロックの圧を変化させ船外へ出てジュンを助け。
またここに戻ってくる。
脳内で瞬時にシミュレーションをする。
ギリギリだ。
ここで・・・宇宙服を着るのに。
時間をかけている場合じゃない。
俺は。
もう一度・・・留め具に手をかけた。
つづく