大宮さんの恋物語です。
毎日20時更新予定です。
ではでは・・・どぞ・・・。
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Side.O
はぁ・・・。
思わずため息をついてしまってから。
周りに誰もいなかったかと慌てて見回す。
撮影が終わり・・・みんな片付けやらで忙しくしている。
だから俺は。
もう一度・・・誰にも気づかれないように。
大きく息を吐いた。
映画の一つの胆でもある告白のシーンを撮った昨日。
そのまま・・・二人で暮らすマンションへと向かった。
そこで言われたニノからの提案。
本当の恋人同士のようにふるまい。
監督やスタッフさんをだまそう・・・という話。
最初は。
ニノの言ってることがいまいち理解できなかったんだけど。
その意図がわかると。
いろんな意味で・・・混乱してしまった。
ニノは当然知らないけど。
俺はガチでニノが好きで。
で・・・ニノの提案は。
好きを偽って恋人同士のようにふるまおうというもの。
それって俺。
難しくないか?・・・と。
混乱しないか?・・・と不安になり。
さらには。
自分の気持ちをどう隠していけばいいのかわからなくて。
納得できないままに。
でも押しきられたような形で・・・ニノの提案に賛成した形になってしまった。
・・・だよな?
俺賛成したんだよな?
もう。
なんか。
どんな会話をしたのかすら思い出せなくて。
ただ思い出すのは。
俺に抱き着いてきたニノ。
腕の中から上目遣いで俺を見るニノ。
俺の二十顎を嬉しそうにつかむニノ。
仲良くしよ・・・と言われ。
思わずきゅっと抱きしめてしまったこと。
ああ・・・俺。
やっぱあの時抱きしめたよな・・・と。
なんか・・・うん。
いろいろ危ないんじゃないかと思う。
自分の気持ちが漏れちゃうんじゃないか・・・と。
いや・・・漏れてもいいのか?
って言うか。
どこまで恋人としてのフリをするのか。
どこまで好きのフリをするのか。
自分でその線引きが。
上手くできそうになくて。
どうにも・・・心がざわついていた。
あの雨の告白のシーンですら。
好きの感情を隠すことができなかったのに・・・。
昨夜・・・一緒に飲みながら。
話している時は楽しかった。
ただただ二人で他愛もないおしゃべりをして。
頬を少し赤らめて・・・クスクス笑うかわいいニノを見て。
そばにいられる喜びをかみしめていられたのに。
今朝・・・一緒に朝ご飯を食べて。
今日から恋人同士よ?なんて言われて。
行ってきます・・・のハグを玄関先でしたらもう。
なんか・・・色々ごっちゃになって・・・ドキドキが止まらなくなってしまった。
ニノはいいよ。
特別好きでもない俺を。
大好きなフリすればいいだけなんだから。
でも俺の場合は、
本気で好きなニノを。
特別好きではないフリをしつつ。
大好きなフリをしなくちゃいけない。
結局「好き」なんだから全然いいんだけど。
間に1つ・・・ややこしい「特別好きじゃないフリ」を挟まなくちゃいけなくて。
それが。
そのことが・・・どうにも落ち着かなくて。
自分がどうすればいいのか・・・加減がよくわからない。
超絶難易度が高すぎて。
クリアできる自信が全然なかった。
さらには。
この付き合いは・・・期間限定だということ。
映画の撮影が終われば終わる関係。
もちろんそれは当然なんだけど。
それを踏まえたうえでの・・・恋人設定なんて。
切なすぎるし。
絶対に辛いに決まってる。
距離が近くなった分。
離れるのもきっときついだろう。
撮影最後の日。
今日で終わりね・・・なんて言いながら。
くるり・・・と俺に背を向けるニノを。
俺は見送らなくちゃいけないんだから。
その日は絶対に来るんだから。
それでも・・・きっぱりと断れないのは。
ニノをがっかりさせたくないから?
それとも。
それでもいいからそういう関係になりたいと。
俺も・・・望んでいるから・・・?
.
つづく