大宮さんの恋物語です。
こちらは続編です///。
本篇はこちら→「バレンタインのお話(仮)♡1」です。
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そして・・・今。
和が俺の目の前にいる。
玄関に立っている和。
白いモコモコの上着に黒のリュック。
相変わらずかわいい///。
お邪魔します///と照れたように言いながら・・・すぐ真下。
他の人の靴を探すかのように玄関をさっと見渡すから。
つい・・・言ってしまった。
「誰もいないから。」・・・と。
和は。
ふいっと・・・顔を上げると。
俺に向かって・・・「知ってる///。」・・・と言う。
ああ・・・なんかもう///。
色々頭を駆け巡る。
いいのかな・・・と。
今日。
いろいろ・・・進んでいいのかな・・・と///。
だってそんな言い方だったから///。
だから俺は。
こっち・・・と言いながら。
二階へ上がる階段を・・・ちょっと気が急いてしまって。
たたん・・・と駆け上がってしまい。
上で和を待つ格好になっちゃって。
そういえば・・・コーヒーでも用意しようと思ってたのにお湯沸かすの忘れてたことも思い出し。
何やってんだ俺///・・・と。
とにかく・・・浮かれている自分を自覚した///。
部屋に入ると・・・和がすぐに言う。
「わ・・・キレイにしてる。」
「いや///・・・けっこう掃除したから。朝から。」
「そうなの・・・?」
「・・・ん///。」
「それって・・・。」
「・・・。」
「僕が来るから?」
「ん・・・そう///。」
「・・・///。」
チラ・・・と上目遣いで俺を見たけど。
すっと・・・すぐに視線をそらした和。
ああ・・・もう・・・さ。
いいかな。
和も俺と同じ気持ちってことでいいかな///。
もうすぐにでもその腕を引き寄せ・・・。
・・・。
・・・。
いや。
慌てるな///。
がっつくのはかっこ悪い。
落ち着け落ち着け・・・と。
俺はばれないように深呼吸を何度かした。
座っちゃお・・・と言いながら。
ラグに座り・・・ベッドを背にする和。
白のもこもこを脱いで・・・黒のパーカー姿になると。
キョロキョロと・・・部屋を見まわしている。
本当ならこのタイミングでコーヒーでもいれるんだろうけど。
でも・・・ちょっとまだ和といたくて。
だって手が届く距離で。
誰もいなくて。
触れていいんだし。
・・・いいんだよな?恋人同士なんだから。
少しの間も離れたくないって言うか。
同じ時を過ごしたいって言うか。
「うわ・・・これ懐かしい///。」
「ぇ?ぁ・・・シールか///。」
和が。
壁に貼ってあるシールを見つけて言う。
それは俺が・・・小学生の頃に貼ったシールだった。
よく見ると。
壁のあちこちにシールが貼ってある。
全然気づかなかった・・・って言うかもう壁と同化しちゃってるから・・・。
「ずっとこのおうちなの?」
「そう。生まれた時からずっとここ。」
「じゃあここからあの小学校も通ってたんだね。」
「ん。」
あの小学校で。
あの運動会の日。
初めて和と会った。
俺が転ばなければ。
和が保健係じゃなければ。
いやもっと言うと・・・あの時和が保健室にいなければ。
俺と和は・・・こうならなかったのかもしれない。
ホントに・・・まさにこれは奇跡。
「あのね。」
「・・・ん?」
「あなたが僕を最初に認識したのって・・・あの運動会の保健室でしょ?」
「・・・うん。そうだよ。」
「でもね。僕は・・・違うの。」
「・・・え?」
「ちょっと恥ずかしいんだけど///。」
「・・・。」
「僕はもっと前からあなたを知ってた。」
「・・・。」
初めて聞く話。
って言うかそもそも。
小学生の・・・あの時の話なんて。
そんなにしていなかったから。
いや・・・したけど。
保健室で手当してもらった話とか・・・その後一緒に遊んだ時の話とかしたけど。
話すのはその後の話ばかり。
父親の借金で引越し・・・その後も転々と住む場所を移動していたということとか。
結局・・・迷惑がかかるからと言って離婚したこととか。
コンビニで仕事し始めて・・・昔住んでいたこのあたりへの異動の話があったから志願したとか。
そういう話は聞いたけど。
あの保健室で出会う前の話なんてしなかった。
だってそれ以前の・・・俺に関係している話が・・・あるなんて思ってなかったから。
「僕ね。その頃・・・算数の授業があまり得意じゃなくってね。」
「・・・ぅん。」
「授業中・・・全然集中できなかったの。」
「ああ・・・それはわかる。俺もそう。苦手な授業って集中できない///。」
「でしょ///?でね。その時間・・・よく窓の外を見てたんだけど。」
「・・・ぅん。」
「その時・・・校庭で体育してたのがあなたのクラスだったのよ。」
「・・・へぇ・・・。」
「ちょうど僕が見た時は走ってたの。みんな。校庭を。」
「・・・ぅん。」
「その時にね。初めてあなたを見たの。走るあなた。」
「・・・。」
「すっごくかっこよくて・・・目が釘付けになった。」
「・・・ぇ・・・マジで///?」
「ぅん。マジで///。」
和は。
俺は・・・とにかく速くて。
そして走り方もとてもかっこよかった・・・と言う。
和はあまりかけっこが速くなかったから。
さっそうと走る俺がすごく素敵に見えた・・・と言う。
「子供ながらにね。すごくドキドキしたの・・・覚えてる///。」
「・・・そう・・・なのか///。」
「フフ・・・うん///。」
「知らなかった・・・///。」
「それから毎週・・・その算数の時間はあなたのこと見てたんだけど。」
「・・・///。」
「なんかね。あなたっていつも困った顔してたの。先生の話聞いてる時。自信なさそうにしてたのよ。」
「・・・マジ///?」
「ぅん///。いつもみんなの後ろの方にいるし。」
「・・・///。」
「でもね。走ると速いの。すっごくきりっとした顔してあっという間にゴールするの。」
「・・・。」
「それがホントもう・・・かっこよかったのよ・・・すごく。」
「・・・。」
ふっと・・・窓の外を見る和。
まるで・・・窓の外に走る俺がいるかのように。
懐かしそうな顔をして・・・じっと外を見ている。
そんな・・・記憶の中の俺に。
軽く嫉妬する。
同じ俺なのに。
和の記憶・・・頭の中にいる「俺」はもう絶対で。
その頃の俺はもう和の中で揺らぐことはないかっこいいヤツで。
だから・・・そんな「俺」に嫉妬する。
つづく
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