大宮さんBL前提のお話です。
苦手な方はご注意を///。
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Side.N
櫻井先生とのオペが終わり。
着替え。
もう・・・とっくに終わっている食堂で。
その薄暗い中・・・僕は。
自販機でコーヒーを買ってぼんやりと座っていた。
長いオペだった。
多分・・・僕史上初っていうくらい長かった。
足が痛む。
少し屈んでふくらはぎをもみながら深く息を吐いて。
僕は・・・今日の櫻井先生のオペを思い出していた。
一言で言うなら。
多分・・・天才。
凄い人だな・・・と言うのが。
もう最初・・・メスをいれるその潔さで・・・わかった。
スピードはもちろんだけど。
とにかく正確で躊躇がない。
脳内は無数の血管があり・・・大事な神経もたくさんある。
だから・・・たいていの医者は慎重すぎるくらい慎重にオペを進める。
それが脳外科の手術が長くなる理由の一つだった。
でも・・・櫻井先生は迷いがない。
あっという間に大事なところにメスを入れる。
指と器具を使って・・・目的に向かってただただ進む大胆さがあった。
でもその大胆さは・・・きっと。
経験に裏打ちされた自信からくるものなんだと思う。
それくらい・・・手さばきが慣れているように見えるし。
ピンポイントでまっすぐに届いている。
さらに言うと・・・スタミナと集中力がすごい。
最初から最後まで・・・長時間のオペなのにスピードが衰えない。
ずっと同じ速さでオペを続けていた。
助手でついている先生は一度交代している。
実は僕も・・・最初このオペが決まった時に交代をするように言われていたんだけど。
どうしても櫻井先生のオペが全部見たくて・・・だから。
交代を断わっていた。
結局・・・最終的に。
長時間のオペに最初から最後まで携わっていたのは櫻井先生と僕の二人だけだった。
術中・・・小さく流れているのはクラシック。
途中・・・3度ほど櫻井先生から音楽を止めるように指示がでたけど。
それ以外はずっと音楽がかけられていて。
先生は鼻歌を歌っている時もあった。
術中に曲を流すのは不思議なことではないけど・・・でも。
救急ではそんな余裕がない事が多いから。
ちょっと新鮮に感じた。
身体が冷えて・・・ぶるっと震える。
窓の外を見ると雪。
天気予報が当たって・・・午後から雪が降り始め。
もうずっと降っているから。
雪が積もってきている。
あまり見ることのない白い風景を見るともなしに見つめる。
凄い手術だったな・・・と。
もう一度深く息を吐いて。
少しぬるくなったコーヒーを飲んだ。
白い風景と静かな薄暗い空間で。
久しぶりに・・・一人を感じる。
非常灯がほんのりと周りを照らしているだけで。
廊下の向こうは真っ暗だ。
自分のため息が大きく聞こえ。
静けさを再認識する。
こんな・・・自分の呼吸を認識するなんて。
あまりない経験だった。
そう言えば・・・いつもいつも。
大野先生がそばにいてくれたな・・・と。
そんな事・・・思い出す。
スマホのLINE画面をあける。
かなり遅い時間。
大野先生は・・・もう眠っているかもしれない。
普段なら起きている時間だけど・・・でも。
昨夜は源さんの件でほとんど寝ていないだろうから・・・だから。
ベッドに入ってはいなくても。
リビングのソファでうたた寝しているかもしれない。
連絡して・・・とは言われていたけど・・・でも。
このLINEの連絡で起こす事になってしまうかもしれない。
どうしよう。
静かに降る雪。
まるで羽がフワフワと落ちてきているよう。
大野先生の優しさみたいだ・・・なんて思う自分に苦笑いして。
僕は画面に文字を打ち込んだ。
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つづく