昨夜は

「指原莉乃 卒業コンサート

 ~さよなら、指原莉乃~」へ。

 

会場の横浜スタジアムは

4月も終わりだというのに

夜は強く冷え込み

 

何度も心が挫けて

暖かい室内に入りたくなったが

ケータリングのホットコーヒーの力を借りて

なんとか最後まで

この目で見届けた。

 

 

では

横浜スタジアムにちなんで

野球に例えてみよう。

 

2010年のAKB48

オールスター打線は

相当強力だった。

 

3番 大島

4番 前田 

5番 篠田

が不動のクリーンアップか。

 

そして

トップバッターである

キャプテン高橋を中心に

名古屋のプロスペクト松井(珠)

安定感とアンバランスさが魅力の渡辺

守備も上手い柏木、など

日によってはクリーンアップ

も打てる布陣を揃え。

 

板野、宮澤、河西など

もし他球団であれば

十分に看板選手になり得る

好打者たちも

しのぎを削っていた。

 

そりゃ強いはずだ。

 

各々の選手があふれる個性を持ちながらも

「アイドル」の主たる魅力である

「かわいさ」を武器に

ヒットチャートを席巻していた時期だ。

 

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そこに頭角を現してきたのが

ノーマークのルーキー指原莉乃。

 

指原は新たなトレンドを

AKB48というチームに持ち込んだ。

 

「かわいいだけがアイドルではない」

 

TV番組企画のバンジージャンプを

飛ぶことを最後まで頑なに拒否し

結局飛ばずに

(他のメンバーはもちろん

泣き叫びながらも飛んでいた)

 

それを理由に番組から干されたことを

自虐ネタにして笑いに変えたり。

 

職場放棄とも言えるその行いに

「ヘタレキャラ」という

アイドルらしからぬ新しい価値観を

作り、正当化してしまった。

 

僕が最初に指原莉乃を見つけたのは

深夜のTV番組でのオタ芸だ。

 

 

衝撃的だった。

 

 

指原自身、十分すぎるほどの

美少女にも関わらず

可愛さ「だけ」では他の選手に

絶対に勝てないと悟ったのか

 

「私は可愛くない!」という

ある種の逆説的メッセージを公言し

 

「指原クォリティ」という

とびきり面白いブログをきっかけに

あっという間に耳の早い事情通の間で

話題になり

 

AKBの最大の弱点だった

バラエティー部門における

天才的な切り返しと

トークワードの選び方の斬新さに

ファンやスタッフ、先輩メンバーはもとより

芸能界の数多のタレント達をもを唸らせた。

 

粗さを残しつつも

長打力のある魅力的な

スラッガーに成長した指原。

そんな彼女が下位打線にいたのだから

当時のAKB48は本当に選手層が厚かった。

 

やがて何度かの世代交代によって

指原は不動の4番でエースの座に。

大谷翔平もびっくりの二刀流、いやそれ以上である。

 

歌って踊って、喋って作詞してプロデュースして。

若手を育てて、映画を監督までした。

(その作品がまた面白いのなんのって)

 

HKTでの彼女の立ち位置は

まさにプレイングマネージャーでありながら

芸能界の大海に漕ぎ出せば

実に聡明な「可愛い後輩」にもなれるのだ。

 

AKB48グループは

指原莉乃が4番を打つことによって

チーム自体のバランスが崩れたのも

否めない事実である。

 

彼女はあまりに「異能」すぎて

簡単にコピーが出来ない存在だからである。

 

 

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指原莉乃は僕が作曲した

BINGO!」をAKB48の

オーディションで歌い合格した。

2007年の9月のことだ。

 

その、つい二ヶ月前

7月にリリースされたばかりの

この歌を選んだのは何故だったのか。

 

もし、指原がオーディションで

「BINGO!」を歌っていなければ

今の彼女はなかったかもしれない。

 

いや、他の曲でもやはり彼女は合格し

今のようなスターになっていたのかもしれない。

 

しかしながら彼女は

オーディションという一世一代の大切な機会に

「BINGO!」を選んだのだ。

 

その事実だけは永遠に変わらない。

 

学校では目立たない存在だったという

大分のアイドル好きの少女が。

AKBのオーディションという

一世一代の賭けに

僕の曲を選んでくれた。

 

きっと何度も何度も

練習したのだろう。

不安と希望をその胸に抱え

思春期の暗闇の中から

未来への小さな光を求めて。

 

大分の名もなき少女だった彼女は

僕の作った歌を大切に

聴いていてくれたのだろう。

 

そのことを考えると

僕の胸は熱くなる。

 

16:00あたりからオーディション風景と爆笑トークが

 

作曲家冥利に尽きるとは

まさにこのことである。

 

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作曲家としての僕から見ると

指原莉乃とは

楽曲に対して愛情を持って

公平に接してくれる非常に

ありがたい存在である。

 

昨夜の卒業コンサートでも歌ってくれた

僕が作曲した2009年の

AKB48劇場曲「そばかすのキス」は

指原が2013年にイベントTIFにて

選曲してくれたおかげで

再評価された、という感覚が僕にはある。

 

初めての指名コンペで一晩で書いた思い出の曲だ

 

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指原莉乃が覚醒しなかったら、

AKB48グループは今の形では

なかっただろう。

 

もちろん指原莉乃の代表作にして

平成の大ヒット曲

「恋するフォーチュンクッキー」も

存在していない。

 

ロックミュージシャンにもこの名曲の

ファンは多い。

この愉快で素敵なバージョンは必見である。

 

 

どんな意味あいにおいても

指原莉乃は偉人というほかない。

見事なアイドル人生だった。

 

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僕は昨夜の卒業コンサートを観ながら

指原なき後のグループのことをずっと

考えていた。

 

もちろん彼女の後継者などいるはずもない。

唯一無二の存在だからだ。

しかし、指原莉乃に「圧倒的な才能」が

あったかというと答えはNOだろうと思う。

 

彼女は徹底的にあらゆる視点から

自分自身を見つめて

プロとして生きてゆくには

どうすればよいか考え

そこだけを磨き実践し、

失敗し研究しまた実践した

100%努力の人だと僕は思う。

 

入団時はドラフト4位という

ノーマークとも言える位置から

メジャーリーグ史に残る偉業を

成し遂げるまでに至った

元イチロー、鈴木一朗にも似た存在だ。

 

指原は決して

ドラフト1位ではなかったはずだ。

 

ここに何かのヒントはないだろうか。

現メンバーにも

 

そしてもちろん僕にも。

 

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昨夜の終演後

ステージに残りメンバー全員で

記念撮影をしていた指原を

僕は遠巻きに眺めていた。

 

 

記念撮影が終わり

指原が仲間たちに囲まれて

僕がいる前を通り過ぎた。

 

ふっと僕の顔を見て

とても魅力的な笑顔で

「お疲れ様でした!」と

言って通り過ぎた。

 

あくまでも

スタッフの一人としてたまたま

僕と目があったに過ぎないだろう。

 

彼女は挨拶をする。

とても礼儀正しく。

 

僕も「お疲れ様です」と

頭を下げる。

 

指原とは2年ほど前に軽く紹介をされ

一言だけ挨拶を交わしたことが

あるのだが、おそらく彼女は覚えてはいないだろう。

それは仕方のないことだ。

 

そして、今後の人生で

彼女と目を合わせて

挨拶をすることはないだろう。

かなりの確率で。

 

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作家仲間とスタッフとの

軽い打ち上げの席で

「もう恋チュンのような奇跡は起こらないのかなぁ?」

と僕がつぶやくと

 

楽曲担当のスタッフが

「僕たちは何よりも楽曲が第一だと思っています!

よい作品を作ればチャンスはまだまだあります!

よろしくお願いします!」と言ってくれた。

 

そうだよな。

ヤンキースの元監督ヨギ・ベラの

迷言でもあるじゃないか。

 

It ain't over till it's over

 

僕はこの不思議な言葉が大好きなのだ。

僕があきらめた時点で僕は終わりじゃないか。

無謀としか言えない挑戦をかつてしたからこそ

今、なんとかここにいるんだろう、成瀬。

 

まだまだ、がんばらないとな。

 

さっしー、本当にお疲れ様でした。

「BINGO!」「愛とプライド」「そばかすのキス」を

丁寧に扱ってくれてありがとう。

いつかどこかでちゃんとご挨拶できる日が

来るように。

 

彼女の「はじめの一歩」に関わった

たった一人の音楽家として

恥じない生き方をしていこう。

 

僕は僕のできることを精一杯

やってゆくよ。

 

 

 

成瀬英樹

 

 

2019年6月29日(土)
成瀬英樹 レコ発記念スペシャルジョイントライブ 
"The Acoguist" 吉川忠英さんをお迎えして

場所 下北沢 風知空知
出演 成瀬英樹 スペシャルゲスト 吉川忠英
開場17時00分/開演17時30分 
予約 3,000円/当日 3,500円(共に+1drink)
風知空知メール予約(先着受信順整理番号付き) 
予約受付開始:4月1日(月)18時~ 
●メール予約:風知空知 yoyaku@fu-chi-ku-chi.jp
(ご希望公演名、お名前、枚数、電話番号をご明記ください)

成瀬英樹、新しい作品集「HIdeki Naruse with Friends」発売記念として
アコースティックギターのレジェンド中のレジェンド
吉川忠英さんをゲストにお迎えしての一夜です。

吉川忠英さんは僕の憧れの
アコーステックギターの名手中の名手。
そして、シンガーソングライターとして現在も
日本中を旅して歌って回っていらっしゃいます。

参加された作品はまさに「枚挙に遑がない」のです!
むしろ、ヒット曲で忠英さんがアコギを弾いてらっしゃらない曲を
探す方が難しいとすら言えます。

僕が子供の頃から愛聴してきた
名曲の数々も忠英さんのアコギなんです。

忠英さんへの想いはブログに記しました。ぜひご覧ください。
https://ameblo.jp/naruse-hideki/entry-12449940558.html