前年の夏にAKB48のコンペに提出したうちの一曲が採用になったと連絡があったのは、2007年に入って間もない頃だ。タイトルは「BINGO!」「ただいま恋愛中」という劇場公演で、まずは使われたんだ。公演曲なのでリリースは未定と聞いていたんだけど、劇場で人気が出たみたいでね。なんとシングルカットされることになったんだよ。AKB48史上初のサマーソングだ!

 

 

この曲を書いたのは2005年の12月。コンペ曲には過剰なまでに情報を詰めることが大切だと実地で学んでいた頃だ。インパクトが一番大切、ということだね。なんと言っても、コンペで曲を選ぶ側は、基本的には一度しか聴かない。それで合否を判断しなくてはいけないのだからね。

 

「BINGO!」は、ど頭の印象的な1234!のカウント(これはラモーンズなどパンクロックから来ている)で始まり、キャッチーなスキャットに流れる。このあたりは10代の頃好きだったバービーボーイズをイメージしたんだ。

 

 

歌に入ってからは二拍三連のメロディ。これは僕が一番尊敬するソングライター大滝詠一さんを意識したものだ。テンポをぐっと落とすとその影響がよくわかるはずだよ。

 

ただ、「BINGO!」に関して言えば、歌詞の力が本当に強い。僕は自分が仮歌詞をつけたデモ段階ではこの曲を失敗作と捉えていた。ちょっと詰め込み過ぎたかな、狙いすぎたかな、と感じていたんだ。だからこそストックとして残っていた。

 

秋元さんが「BINGO BINGO あなたにめぐり会えた」と、サビに抜群にご機嫌なラインを乗せてくださったおかげで、この曲は超ウルトラキャッチーなポップソングになったんだ。歌詞の力がどれだけ大切かを本当に学ばせていただいたよ。それからはデモの仮の歌詞にもより気を配るようになったという訳なんだ。

 

「BINGO!」のチャートアクションは最高位6位。トップ5に入りたいところだったけど、5位がAAAだったというのも、皮肉なものだなと思ったね。何にしても、僕初めてのトップ10ヒットだ。もし2007年に「ザ・ベストテン」がまだ続いていたら、ランクインしている訳だ(笑)本当に嬉しかったよ。

 

そして僕はAKB48という船に乗り込むことを勝手に決めた(笑)このユニットがブレークするところまで一緒にいよう。とね。それからはテレビや雑誌、ネットの情報も漁って研究を始めた。いや、ただ単にAKBにハマっただけなのかもしれないけどね!

 

僕が持っている「アメリカン・ポップス」の王道の楽曲も、このユニットなら、秋元さんなら、受け止めてもらえると思った。前にひどいことを言われたことがあったから、トラウマになっていたんだけどね(笑)

 

行き場もなく転がっていたストック曲をかき集めて提出したら次々に採用をいただいた。「ひこうき雲」「愛の毛布」「真夏のクリスマスローズ」「愛とプライド」「ごめんねジュエル」などなど。どれも、誰におもねることなく自然に僕の心の中から出て来た愛しい楽曲たちだ。それらが認められたのは本当に、本当に嬉しかった。

 

この年の紅白歌合戦にAKB48の初出場が決定した。その事を知らせるNHKのニュースの背景で使われた曲が「BINGO!」だった。もしかしたら紅白で歌ってもらえるかもしれない。そんな気持ちになるよね。

 

この年のAKB48のヒットは「BINGO!」と「僕の太陽」だった。半々くらいの確率かもしれない。いや、しかし、ニュース映像で使われたのは「BINGO!」だったんだから、もう決まりだよ。いや、まだまだ。心の中はざわざわと落ち着かない12月だったよ。

 

でもね、結局、前年2006年の「会いたかった」が歌われたんだ(笑)

 

しかも、この年の紅白には、僕の大切な先輩、馬場俊英さんが出場された。そんな僕たちにとって奇跡的な年、だったんだ。馬場さんと同じ舞台で、紅白に出られたら、どれほど嬉しいだろう。そういう気持ちも大いにあったんだよ。だからね。

 

結構ね、落ち込んだよ。そんなチャンスはなかなか来ないからね。がっかりしたよ。また一からやり直しか、と思った。

 

でも、すぐにこう思い直したんだ。圧倒的なヒットを書いて、堂々と紅白で歌ってもらえるようにならなあかん!とね。また僕はチャレンジを始めるんだ。だって、日本でヒット曲に関わる仕事をしていて、紅白を目指さない人なんていないからね!!

 

===================

 

いつもありがとうございます!

2016年にその紅白で歌われた「君はメロディー」のセルフカバーも入った、ソロアルバムをリリースします。ぜひこちらもご覧ください!

 

 

大阪、東京、とライブもございます!よろしくお願いいたします。

http://www.hidekinaruse.com

 

 

成瀬英樹