第二章 ラブレター
ビリー・クリフォードside
12
「ごめんね……兄さん」
何度目の謝罪の事だろう。
すでに辺りは真っ暗になってから、ビリーとルークは施設に帰宅した。兄弟そろって門限を破り、施設長からはこってり説教をくらってしまったが、それとは裏腹に、ルークの心は晴れやかだった。
身体はすっかり自分より大きいのに、震えながら懺悔するルークが愛しかった。
本気で弟の事が嫌いなら、きっとどんな手を使ってでも反抗しただろう。だが、こんなに自分を慕ってくれて、欲しいと言われて。
行きすぎた兄弟愛かもしれない。だが、ルークこうされて嫌ではなかった。
言葉ではない。
今まで弟を恋愛対象として見た事はなかったけれど、心のどこかでは、ルークとなら、こうなってもいいと思っている事を否めない自分がいる。
他の誰かでは、きっと許さないだろう。ルークだから。コイツになら、何をされても嫌ではない。
泣きそうなくらい切ない顔をされて、自分を欲しいとルークに言われたら、ビリーにはもう何も反抗する理由がなかった。
「いいって。気にすんな」
ルークがごめんねと言ったのは、先程の行為の事を指しているのか、門限を破った事を言っているのか、どちらとの意味にもとれる謝罪の言葉と返答だと気づいて、二人は目を合わせて笑った。
「ありがとう」
「なんだよ、急に」
「なんかお礼を言いたくなったから」
「お礼? なんの事だ?」
ビリーにはお礼の意味がわからなくもなかったが、知らないふりをした。自慢の弟だと思う。それを抜きにしても、素直で、まっすぐで、言葉だけでなく、身体でも、全身全霊をかけて自分の事を好きだと表現してくれるルークを、嫌いになるなんてできないと思う。
男同士だからだなんて、兄弟だからだなんて関係ない。
ルークとのキスも、気恥ずかしいけれど、嫌ではなかった。ルークだから許せたのだと思う。
考えてみたら、ファースト・キスだった。初めての相手が、弟だというのが、少し残念な気がしたが、それでいいと思う。
*
翌日の放課後。
クリフォード兄弟がクラブに顔を出すと、部活の面々の暗い顔があった。
「どうしたんです?」
「いや、この間入部した新入部員、辞めたんだって」
「ほら、退部届」
ビリーの靴箱に投函されていた手紙と同じ便せんに、退部届と書かれてあった。
なんとなく同じ部員には気の毒に思うけれど、これでよかったのかもしれない。ビリーとルークは部員にはわからないように、顔を見合わせて微笑んだ。
物理室の机の下でこっそりと手を繋ぎながら。
to be continued……