<ビリー・クリフォードside>
32
オレは唇に感じる違和感で目が覚めた。
え?
ふと目を開けると、目の前には誰かの顔がある。
ルーク?
それともルカなのか?
相手は目を閉じていて、瞳の色がよく判らない。
一瞬、どちらか判断できない自分が恐ろしくなった。
今までオレにキスをしてくるのは、当然、弟のルークの他にいない。
間違えたり、疑う余地もなかったのに、自分からルカにキスをしてからは、オレの中の判断基準が安易にもぐらついていて、それを認めるのが怖い気もした。
それほどまでに、ルークとルカの唇の感触はよく似ていたのだ。
冗談のつもりでルカにキスを求めたのがよくなかったのかもしれない。いいや、あれば、まんざら冗談でもなかった。
病室で口移しに水を与えてくれたルカの唇の感触をを、オレ自身が忘れたくなかったのだろう。
たぶん、ルークのものとそっくりだった唇を、本当にそうかもう一度確かめたかったのだ。
「……兄さん」
そうか……
その一言で、オレはようやく我に返った。
ベッドに横になるオレの上に覆い被さった人物は、ルークだった。安堵の為か、ほっと一息ため息をこぼす。
「な、なんだ……急に」
「起こしてごめん。兄さんはボクのものだよね?」
オレの上に四つん這いになったアルフォンスは、今にも泣きそうな顔をして尋ねてきた。
「な、何を急に言っているんだ……? 当たり前じゃないか」
「だって……」
ルークのこんな顔をみたのは久しぶりだった。
幼い頃、亡くなった母を思い出して泣いていた弟の姿を思い出す。図体はすでにオレよりも大きいクセに、弟のこうゆう態度を見ると、兄としての自覚が出るのか、条件反射的に威勢をはってしまう。
「心配しなくていい。オレはお前の兄ちゃんだろ? それは一生変わらん!」
オレは語調を強めて言うと、ルークの頭をぐりぐりとなでた。
「違うよ。ボクが欲しいのはそんな返事じゃない!」
ルークは再びオレに唇を押しつける。顔の角度を変えながら、柔らかいアルフォンスの舌がオレの口中を犯し始め、オレは自然と桃色のため息をこぼす。
……んふっ……
んん……
間もなくパジャマのボタンを器用に外し、ルークの少し冷たい手がオレの胸をまさぐり始めた。
手は忙しなく動き、ルークの唇が、オレの唇から首筋へと移る。首筋から耳の後ろへ。
急性だけれど、確実にオレの感じる急所をついてくる。
もう何度も体を重ねた結果、オレのポイントを知り尽くし、そしてオレの体も、自分の意思や理性とは関係なく、自動的に反応し始める。
久しぶりに襲う快感。
このままおぼれてしまえたら、どんなにいいだろう。
だが、オレは頭の片隅にあの時言われたルカの言葉「ああ、いるよ。僕はずっとここにいる」あの優しい言葉が頭をよぎり、ふと我に返った。
「ちょっ……まだ昼間だぞ……」
オレはうわずる声を抑えながら、ようやくそれだけ吐き出だした。
ルカとオレの部屋は、リビングルームに向いた隣の部屋同士。
もしかしたらルカは壁一枚隔てたリビングルームにいるかもしれない。
オレは声や音が漏れるのが気になって、ルークの与える熱に十分酔えないまま、気もそぞろに覆い被さる体を押しのけようとした。
to be continued……