room number 213
――ねえ、ボク達の出会い、覚えてる?
あの日、初めて出会った時のことを
一緒に過ごしたあの部屋のことを
今もあの思い出の鍵はここにあるよ――
<ルーク・クリフォードside>
1
ボクは東京に向かう新幹線の中、自由席の空きを探して車中をうろついていた。
今日は大雪。
わざわざこんな日に出かける輩なんてそういないだろうから空いているだろうと思っていたのに。現実はそう甘くない。
こんなはずなら指定席を取ればよかったのかな。
でも、お金はあまり使いたくない。これから東京で兄さんと暮らす為に少しでもお金はとっておきたい。
ボクの名前はルーク・クリフォード。今年十九歳になる。
名前のとおり、ボクは日本人ではない。
ここ日本で、田舎の育ちだったボクと兄さんは、この容姿のせいもあっていつも異端児だった。加えて優秀な頭脳。周りはいつもボク達の事を特別扱いしたがったし、実際ボク達兄弟はそうだった。
兄であるビリー・クリフォードは、若干二十歳で大学を飛び級で卒業し、近年バイオ研究に力を入れている某企業にぜひ特別社員とにと、研究員として迎えられた。
ボクも兄さんに負けないくらい勉学もできたし、同じように大学を飛び級で卒業できた。
卒業後はボクもすぐに職につくつもりだったのだが、兄さんから更にその上の大学院に進学することを薦められた。
「学費はオレがなんとかするから、お前はもっと勉強しろ」と。
ボクたち兄弟には両親はいない。
父はボクが生まれるとすぐに蒸発し、代わりに母がボク達兄弟を女手一つで育ててくれたが、過労のせいで無理がたたったのか、流行り病にかかるとあっけなくこの世を去った。両親もおらず、日本に身よりのなかった僕たち兄弟は施設で生活することを余儀なくされた。
両親がいない寂しさは幼いボク達にとって否めなかったが、ボクは兄さんと一緒にいることで、ずいぶんと救われた。結局、ボクは兄さんさえいればどこでもよかったのだ。
施設の生活は、想像していたよりひどいものではなかったが、僕たちはこの容姿と頭脳のせいでいつも特別扱いされ、いつも目立っていたし、それがとても嫌だった。まあ、それも仕方がないと思う一方、もう一つ人目につきたくない理由が別にあった。
ボクと兄さんは兄弟でありながら、恋人同士だったからだ。
今思うと単に寂しかったのだと思う。両親もおらず、学校や施設で良くも悪くも何かと注目を浴びることに慣れていない幼い子供がいろんな中傷や期待を受け止められずはずもない。
くじけそうになるのを。ボク達兄弟は互いに励まし合い、寂しい時は慰め合ってきた。最初はそれがどういうことかわからなかった。気がつくと、ボクが兄さんを求め、兄さんもボクを求めてくれる。とても自然ななりゆきだった。
施設の生活は集団生活が基本。いつも誰かの目を気にしながら行動しなければならないのが、とても苦痛でならなかった。
けれどこれからは違う。
人目をきにしなくてもいい。
ずっと兄さんと一緒にいることができる。
兄さんは一足先に東京で社会人生活をしていて、ボクも大学院が東京にあるため、一緒に生活できるんだ。
ボクは東京での兄との生活を夢見て、新幹線に飛び乗った。
to be continued……