諦(あきら)めない事を体験したターニングポイント 発明家Aさん(67才男性)
広い工場の一室でそれは世に紹介される事を誇らしげに待っているようでした。
Narundaさんこれ凄いんですよ!
高さは2メートル30センチ幅は1メートル奥行きは5メートル程の神秘な機械。
なんだかパイプがあちこちにあります。
その隣にそれと同じような大きさですが配電盤が装備されています。
各々の発明機の後ろにはその機械を上回る大きなタンクが附随(ふずい)
されています。
機械の一つには筑波大学とメタルでネームとシリアルナンバーのようなものが
印(しる)されていました。
Aさんはその機械の横で満面の笑(えみ)を浮かべてこう話し出しました。
「昨日3リッターのX(エックス)剤を入れて試運転した所です。
失敗でした。」
「そうなんですかぁ~ でも一体なんなんですか?この発明品は?
失敗したのにとっても嬉しそうですし…」(Narunda)
「これはまだ未完成なんですよ! 約3年間試験を何度も繰り返して
昨日の試運転で、とうとう後少し微調整をすれば、完成なんです!」
「この発明機が完成したら市場でたくさん出回っている商品が
ほんの少しの価格が上がるだけで過去の常識が全く変わる商品となり
皆さんのお手元にそれが届く事になりますよ!そんな日ももう間近です!」
Aさんは発明家です。この発明品はAさんのアイディアを基に筑波大学に
依頼して試作し、さらにAさんが加工して完成させるのだそうです。
う~ん… このシチュエーション星新一さんの小説にでも出てくる雰囲気
です。
謎の物体X(エックス)はあえて伏せさせていただきますが、Aさんの発明機
が完成したとしたのならば世界の常識が間違いなく変わる発明に違いありません。
Aさんのターニングポイントは約60年前小学校2年生の夏まで遡(さかのぼ)ります。
Aさんの実家は商品の卸問屋を営んでいました。
Aさんはまだ小学2年生でしたが家業の卸問屋の配達を
当たり前のように手伝っていました。そんなある日従業員さんの運転する車の助手席に乗って
いた時にそれは起こりました。
Aさんの乗っていた車両が交通事故に遭いAさんは車から放り出され
車両の下に挟(はさ)まれてしまったのです。
子供だったAさんの足が大きく損傷してしまいました。
運転手の従業員さんは大きな怪我もなく助かったのは幸いでした。
病院に運ばれたAさんについてドクターからAさんのお父さんに説明がありました。
「現在の医療では息子さんの足を切断しなければ息子さん自身が助からないですよ!」
Aさんのお父さんは言いました。
「先生、私はなんとかしてこの子の足を切断する事なく今後も元気な生活を
させてあげたいのです!なんとかなりませんか?」
「現在の医療では、この足の損傷を治せる方法は残念ですが難しいのです。
それどころか1分1秒でも早く足を切断しなければ息子さんの命に関わるのですよ!
お父さん決断してください…」
ドクターの呼びかけにお父さんは
「わかりました。では私が今すぐ私の知りうる病院すべてのドクターに
連絡をしてこの状態を報告します。それでもすべてのドクターが
手の施(ほどこ)しようがないというのであれば私も諦めましょう。
その時は息子の足を切断してください。」
今と違って60年前の日本にネットも無ければスマホも有りません。
お父さんの知りうる人脈をたよりに呼びかけを行います。
とても迫力があったのだと思います。
1人が2人に声をかけ2人から4人へ4人が8人へ8人が16へ
16人が32人へ瞬く間にその一人一人が見事にお父さんの迫力そのままに
事を伝えられたそうです。
そして
一人のドクターが 「できるかも知れない」と言ってくれました。
とはいえ設備が整っているその病院までAさんを搬送しなければいけません。
しかしAさんの足の損傷が著しく悪く現在の病院から治療の施せる病院まで
搬送する事が危険である事。そのため搬送も認めないというものでした。
Aさんのお父さんは自宅の畳1枚程度の雨樋(あまどい)を外し、
その上にAさんを乗せ、自分のトラック車両で治療のできる病院へと
搬送してしまうのでした。
「出来るかもしれない」
今のAさんの口ぐせでしたね!
小学校2年生の夏から小学校3年生の夏まで概(おおむ)ね1年間の入院生活で
治療の末Aさんは普通に歩ける状態まで完治されました。
もちろんドクターの素晴らしい手術。
看護師さんの献身。Aさんの若くて優れた生命力もあったと思います。
病院が搬送を認めない中勝手に父親が私を搬送した事は
ドクターを初め病院には迷惑であった事かもしれません。
それでも「出来るかもしれない」という可能性にかけた父親の
お陰でこの足が有り私のその後の人生が大きく変わりました。
私のターニングポイントです。
Aさんと発明機 私はなんとなく星新一さんの
小説「気まくれロボット」を思い出しわくわくした気持ちになってしまいます。