耳をすませて聴こえたターニングポイント 落語家、噺家の真打 Rさん(50代男性)


「え~ お笑いを一席」


今日もRさんの噺(はなし)が始まりました。


ラウンジバーのカウンターの隣の部屋から聴こえるその声は何となく小さな声


何を話しているのか耳をよーくすまさなければ聴こえません。


普段はJAZZの演奏を流したり、最新のカラオケも備えられている部屋に


高座が設けられ紋付き袴(もんつきはかま)姿の和装の出立ちで


そこに正座をしています。


30席で一杯になった部屋にはRさんの口から放たれる「笑い」という言葉に


聴き手の想像力が始まります。


Rさんは伝統芸能である落語家、噺家の中で最も位の高い真打(しんうち)


とよばれる名人です。


落語家、噺家さんの芸能は衣裳や舞台装置を極力使いません。


身振りと手振りのみで噺を進めます。


そして一人で何役をも演じるのです。


Rさんの技巧は少し驚いたような愛嬌のある目


指の先から手や躰(からだ)を動かして


そこにあるはずの無いさまざまな物を私達の想像という


噺の世界を通して目の前に広げていくのです。


それは私達のおじいちゃん、おばあちゃんのそのまたおじいちゃん、おばあちゃん


の時代へ自由自在。


舞台装置がなくても朝になったり夜になったり


舞台もRさんの話術でラウンジから江戸の町にすっかり様変わりしてしまいます。


気がつくと


先程まで何を話しているのか解らなかったRさんの声が大きく


身振り手振りも別人のように次から次へと色々な出演者となり


私達も口元がにやにや


あちらこちらから「くすくす」


次第にRさんの思うつぼ大爆笑です。


そんなRさんのターニングポイント


それは子供の頃、耳をすませて聴いていたラジオ。


「私の子供の頃は家族の長のやる事なす事が絶対の時代でした。


私の家の家長はおじいちゃんです。まだテレビも無い時代に


おじいちゃんの聴くラジオに家族で耳を傾けたものです。


私の出身は地方のため放送局も3局しかなく、番組もニュース


と演芸をおじいちゃんは好んで聴いていました。


私は子供でしたからニュースには全く興味がなくて演芸が始まると


いつもおじいちゃんのそばに行きラジオから聴こえる噺に耳を


すませました。


落語は噺の最後にオチがつきます。


おじいちゃんも私も爆笑です。


笑うって健康! 噺家さんの人柄や体験でこちらまで元気になれます。


時代は変わっても人の人情は変わらずいたいですね。」


Rさんはお酒が大好きです。


噺家としてお客様を酔わせてご自分も酔うのが粋なところです。


お後がよろしいようで…