なりあやの韓国シネマ留学記 -32ページ目

なりあやの韓国シネマ留学記

2017年、3度目の韓国留学。
ソウルの大学院で映画を勉強します!

韓国の国民的詩人、尹東柱(ユン・ドンジュ)を描いた映画「東柱」(2016 原題:동주)。

今年2月に韓国で公開された時に観ましたが、いまだに、わたしの今年のベストです。「釜山行」も「アガシ」も良かったけど、尹東柱その人への思いもあって、今年は「東柱」やなぁ。

 

 

ポスターからも想像がつきますが、この映画は東柱の幼なじみで従兄の宋夢奎(송몽규)も東柱と同じくらいの比重で出てきます。ポスター左が東柱、右が夢奎。

東柱役のカン・ハヌル(강하늘)も良かったけど、夢奎役のパク・チョンミン(박정민)、素晴らしかった。青龍映画賞の新人男優賞、納得です。今後注目の俳優。

 

取材で尹東柱について調べたことがありますが、確かに、東柱と夢奎はセットと言っていいぐらい、ただの幼なじみとか従兄で済まない間柄です。東柱の行動の背景には、夢奎がいる。2人は同じ年に同じ場所で生まれ、一緒に今の延世大学に通い、留学先の京都で捕まって、治安維持法違反の罪で福岡刑務所に収監されます。1945年2月に東柱(27歳)が、3月に夢奎が獄死。あと半年生き延びたら終戦でした。

 

2人が主人公ですが、第三の主人公が、2人を取り調べる刑事。在日コリアンのキム・インウ(김인우)さんが熱演。

 

先日、東柱の最初の留学先、立教大学で、「東柱」の日本初上映会がありました。

 

残念ながら別件で上映会には間に合わず、その後のトークイベントにうかがいました。

そのトークに、キム・インウさんが登壇。

 

 

遠くからスマホで撮ったので画質が良くないですが……

マイクを持っているのが、キム・インウさんです。

 

2月に観た時、気になってすぐに調べました。「暗殺」や「ミスターGO!」にも出ていて、どおりで見たことあると思った。

名演でした。この映画のメッセージを背負っているのは、むしろ二人よりも、キム・インウさん演じる刑事だと思いました。

 

その右隣が脚本家ですが、青龍映画賞をはじめ、「東柱」は脚本賞も多数受賞しました。

ご本人も「東柱の詩のおかげ」とおっしゃってましたが、それは大きいですよね。詩が、カン・ハヌルの声で読まれるだけで、うるっときました。

 

監督は「王の男」や「王の運命」で知られるイ・ジュンイク監督ですが、「東柱」はかなり低予算で撮ってます。投資を受けるということは、それだけ干渉を受けやすいということでもあるので、監督の思い描いたものにかなり近い作品なんじゃないかなと想像します。

 

東柱は、この作品では偉人としては描かれていません。むしろ、独立運動に身を投じる夢奎の陰で、詩を書くことしかできない自分を恥じている。東柱が自分も一緒に戦いたいと言っても、夢奎は「おまえは詩を書きつづけろ」と言う。でも、だからこそ、わたしたちが東柱の詩を読むことができるんですよね。詩は残る。押収されて残らなかったものがあったのは本当に残念ですが。

 

東柱が出そうとして出せなかった詩集「空と風と星と詩」は、死後の1948年に出版されました。

 

日本でも来年公開されるそうです。ぜひぜひぜひ、観てください。

夏休みに韓国で買った本↓ 色んな本と並行して読んでて、やっと読み終わりました。

 

 

「한국영화는 무엇을 보는가」

訳したら「韓国映画は何を見るのか」あるいは「見ているのか」の方が近いかな。

 

サブタイトルが「『国際市場』で起きたこと」。 ※邦題は「国際市場で逢いましょう」

なんとなく、最近の映画の本を読みたいな~と思って買ったんですが、映画に絡めた最近の韓国社会についての本でした。

 

2016年1月に出版されて、一番新しい映画では2015年夏に公開された「ベテラン」に至るまで。さすがに冬公開の「インサイダーズ/内部者たち」までは含まれなかった。惜しいなぁ。

 

本の全体にわたって、何度も出てくる言葉が「헬조선」(=Hell朝鮮)。

韓国社会の不条理な現状を地獄に例えた新造語。

この言葉を聞くたび(読むたび)に重い気持ちになるんですが……自国を地獄に例えるなんて……。朴槿恵退陣要求も、ただ単にチェ・スンシルに絡むうんぬんでなく、不満が蓄積していたという背景があると思います。

 

「国際市場」と言えば、2014年12月に公開され、1400万人超の観客を動員した大大大ヒット映画です。大好きなファン・ジョンミンが主演です。

 

 

でも、この映画、けっこう韓国内の映画関係者の評価は低いんですよね。

わたしも、号泣しといてなんですが、なんか違和感はありました。

その違和感の正体を、この本が詳しく解説してくれます。

 

前書きでは「この本では『国際市場』の大々的なヒットを一つの社会現象として捉え、その意味を探った。特に、なぜ今、朴正熙の時代に戻っているのか、についての答えを見つけたかった」とあります。ここ1、2年、韓国の映画、演劇の取材をしていて、うっすらとその雰囲気は感じていました。

 

読めば読むほど「韓国大丈夫かな」と不安になりますが、朴槿恵大統領の弾劾訴追案が可決されたということで、今後を見守りたいと思います。

 

月1回の読書会が、先日、最終回を迎えました。

神保町の韓国ブックカフェ「チェッコリ」で春から読んでいた「열하일기(熱河日記)」。

ついに読み終わっちゃいました。

 

 

朝鮮時代の旅行記です。

「世界最高の旅行記」だそうです(笑)

 

著者は、朴趾源(박지원/パク・チウォン)、号は燕巖(연암/ヨナム)。

 

朴趾源自身はフリーランサーですが、親戚にえらいさんがいて、1780年、清への使節団に加わります。清の乾隆帝の古希(70歳)を祝うための使節団です。熱河は避暑地。本来は北京までの予定でしたが、北京に着くと乾隆帝は熱河に行ってしまっていて、慌てて熱河へ。

 

現代語訳した先生、高美淑(고미숙/コ・ミスク)先生が、最終回に来てくださいました。もちろん普段は韓国にいらっしゃるのですが、他の用もあって来日されました。

 

 

オレンジの電気の下にいらっしゃるのが、高美淑先生です。

 

こなれた訳で読みやすいとは言え、時代が時代なので、知らない言葉もいっぱい出てきて、なかなか一人で読むのは難しい本でした。

少数精鋭の読書会のメンバーの話がいちいちおもしろく、話についていきたくて、ユーチューブで高美淑先生の講義を聴いたら、これまたおもしろい(´∀`)

 

その講義で、朴趾源に勝手に親しみを感じていました。

一つは、フリーランサーというところ。能力はあるのに、官職につかなかった。なので、使節団の中でも自由な立場。好奇心の塊で、誰にでも話しかけ(筆談ですが)、清と朝鮮を比較しながら日記を書いています。個人的なことをつづった日記ではなく、話は時に地動説にまで及びます。

 

先生は朴趾源が「友情に生きた」と言います。若い時に鬱病になったのをきっかけに、逆に外に出て市井の人々と交わって対話することで、克服していったそうです。この生き方は現代の若者にも参考になるんでは、とも。わたしも友情に生きたい(笑)

 

先生自身も、「熱河日記」を現代語訳した縁で、中国を旅するようになり、今は米国や日本など世界に友達がいます。

 

そして、来年の留学先を尋ねられたので「東国大学」と言うと、「うちの研究所のすぐ近く」と。先生は감이당(カミダン)という研究所をされています。

 

http://gamidang.com/

 

まだ全体像がよく分からないですが、朴趾源みたいな先生がいっぱい集まってる模様。わたしも来年フリーランサー1年生になるので、仲間に入れてもらおうと思います。

 

ちなみに、チェッコリ(책거리)という言葉の意味は、読書会の打ち上げのようなものだそうで、われわれ、チェッコリで最高のチェッコリをしました。