韓国の国民的詩人、尹東柱(ユン・ドンジュ)を描いた映画「東柱」(2016 原題:동주)。
今年2月に韓国で公開された時に観ましたが、いまだに、わたしの今年のベストです。「釜山行」も「アガシ」も良かったけど、尹東柱その人への思いもあって、今年は「東柱」やなぁ。
ポスターからも想像がつきますが、この映画は東柱の幼なじみで従兄の宋夢奎(송몽규)も東柱と同じくらいの比重で出てきます。ポスター左が東柱、右が夢奎。
東柱役のカン・ハヌル(강하늘)も良かったけど、夢奎役のパク・チョンミン(박정민)、素晴らしかった。青龍映画賞の新人男優賞、納得です。今後注目の俳優。
取材で尹東柱について調べたことがありますが、確かに、東柱と夢奎はセットと言っていいぐらい、ただの幼なじみとか従兄で済まない間柄です。東柱の行動の背景には、夢奎がいる。2人は同じ年に同じ場所で生まれ、一緒に今の延世大学に通い、留学先の京都で捕まって、治安維持法違反の罪で福岡刑務所に収監されます。1945年2月に東柱(27歳)が、3月に夢奎が獄死。あと半年生き延びたら終戦でした。
2人が主人公ですが、第三の主人公が、2人を取り調べる刑事。在日コリアンのキム・インウ(김인우)さんが熱演。
先日、東柱の最初の留学先、立教大学で、「東柱」の日本初上映会がありました。
残念ながら別件で上映会には間に合わず、その後のトークイベントにうかがいました。
そのトークに、キム・インウさんが登壇。
遠くからスマホで撮ったので画質が良くないですが……
マイクを持っているのが、キム・インウさんです。
2月に観た時、気になってすぐに調べました。「暗殺」や「ミスターGO!」にも出ていて、どおりで見たことあると思った。
名演でした。この映画のメッセージを背負っているのは、むしろ二人よりも、キム・インウさん演じる刑事だと思いました。
その右隣が脚本家ですが、青龍映画賞をはじめ、「東柱」は脚本賞も多数受賞しました。
ご本人も「東柱の詩のおかげ」とおっしゃってましたが、それは大きいですよね。詩が、カン・ハヌルの声で読まれるだけで、うるっときました。
監督は「王の男」や「王の運命」で知られるイ・ジュンイク監督ですが、「東柱」はかなり低予算で撮ってます。投資を受けるということは、それだけ干渉を受けやすいということでもあるので、監督の思い描いたものにかなり近い作品なんじゃないかなと想像します。
東柱は、この作品では偉人としては描かれていません。むしろ、独立運動に身を投じる夢奎の陰で、詩を書くことしかできない自分を恥じている。東柱が自分も一緒に戦いたいと言っても、夢奎は「おまえは詩を書きつづけろ」と言う。でも、だからこそ、わたしたちが東柱の詩を読むことができるんですよね。詩は残る。押収されて残らなかったものがあったのは本当に残念ですが。
東柱が出そうとして出せなかった詩集「空と風と星と詩」は、死後の1948年に出版されました。
日本でも来年公開されるそうです。ぜひぜひぜひ、観てください。

