『中国経済 2023』第3回 工業② | 奈良の鹿たち

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『中国経済 2023』

第3回 

 「工業②」

 

 

工業の中でも、今やIT・AI関連産業が国の工業力の指標となっています。まさに中国はこの方面でも世界の先頭を走っていて、米国をも凌いでいる部門はたくさんあります。

IT戦略は世界経済を支配すると言われていますが、まさに中国の経済、政治支配が世界に強まっていきそうです。

しかし、近年、米中対立で米国からの規制が厳しくなり、また危機管理への対策から東南アジア諸国への生産シフトの移行が始まりました。

 

<NEV電気自動車生産台数> 

NEVは中国汽車工業協会(CAAN)が車種分類の中で、EVとPHV(プラグインハイブリッド車:

バッテリー駆動のモーターとガソリンエンジンの両方を搭載)を合わせたものです。

2022年末で、NEVへの補助金が終了しましたが、第一四半期(1~3月)のNEVの生産は27.7%と急速な伸びが続いています。

 

<パソコン生産台数(万台)> 

(中国国家統計局 中国統計年鑑2022年度版)

世界のノートPC市場は年間約1億6000万台(2019年)。9割は中国で生産され、その大半を台湾企業が担っています。

今後、ベトナムやタイを中心とした東南アジアが現在9割の生産を担う中国を抜き、世界最大の生産地になる見通しです。それでも10年後の30年には世界生産の5割を担うといわれています。一方、中国での生産は現在の9割から4割まで急低下する見込みです。メーカーには、中国の人件費高騰が重荷となっているほか、中国に過度に依存した生産体制のリスクを分散する狙いがあり今後、東南アジアへの生産シフトが活発になるとみられます。

 

<携帯電話生産台数(万台)> 

(中国国家統計局 中国統計年鑑2022年度版)

低価格で品質も良いため、国内のみならずインドや東南アジアの低所得者を中心に圧倒的な人気を誇っています。

スマートフォンなどの電子機器の生産拠点としての役割を、世界中のメーカーから一手に引き受けてきた中国。米国との貿易摩擦や人件費の高騰、そして国内需要の急増などによって、「世界中のスマートフォン工場」としての立場が変わり始めています。

しかし、中国の携帯電話市場は2021年あたりから、ずっと「厳冬」の状態が続いています。

市場調査会社によると、2021年の世界の携帯電話生産台数で、中国、インド、ベトナムがそれぞれ67%、16%、10%を占めましたた。しかし、中国のシェアは前年に比べ減少しています。最大の理由はファーウェイの生産台数が激減したことです。また、中国では携帯電話の需要が減少しているため、今後は中国のシェアが減少していくと予想されます。

中国情報通信研究所によると、2022年第1四半期(1~3月)の国内出荷台数は前年同期比29.2%減の6934万台。さらに4月は前年同月比34.2%減の1807万台に落ち込みました。このうち5Gスマートフォンは1458万台で全体の8割を占めましたが、出荷台数は前年同月比31.9%減でした。

 

<集積回路生産個数(百万個)>

(中国国家統計局 中国統計年鑑2022年度版)

中国半導体産業の停滞が続いています。これには、シリコン・サイクルの悪化だけではなく、米国による対中半導体規制強化も影響しています。2022年10月に強化された対中半導体関連輸出管理は、中国での半導体生産拡大を目的とした装置の確保を困難にするとみられます。現時点では、米国企業による製造装置が規制対象となっていますが、日本、オランダなど米国に追随する国が現れています。2022年の中国の半導体装置輸入のうち日本からの輸入が31%、米国が16%、オランダが14%であり、3カ国が揃って規制を強化することになれば中国への影響は大きくなります。
中国国内の製造装置メーカーは、世界的にみると依然として小規模であり、中国産装置で輸入品を代替することはかなり難しいとみられます。世界の半導体需要が回復しても、生産は伸び悩む可能性があります。中国の半導体生産数量は2021年後半をピークに減少傾向が続いています。
2015年5月、製造業の高度化を目的とした産業政策「中国製造2025」のなかで、中国政府は半導体自給率を16.7%(2021年)から2030 年までに 75%に引き上げるという計画を掲げていました。しかし、そのために組成された巨額の投資事業の失敗が相次いでいます。半導体産業に必要な技術・人材の不足も問題となっていて、現状のままでは目標達成はほぼ不可能と思われます。米国による規制により半導体生産を巡る今後の状況はさらに悪化するとみられ、中国政府は半導体強国に向けた政策の大幅な見直しを迫られています。

 

<産業用ロボット生産台数(台) 中国・米国・日本>

(日本ロボット工業会)

中国で製造を行う企業にとって、毎年10%近い人件費高騰や少子高齢化の進展により、労働力確保は今後さらに難しくなっていくことが予想されます。中国の人口は2022年に減少に転じ、高齢化率は2022年に14.9%に上るとされています。生産年齢人口(15~64歳)は2013年をピークに減少しており、2022年の9億8,430万人から2050年には7億6,737万人にまで低下すると推計しています。

その解決策の1つとして、昨今、製造業の産業用ロボットの導入による工場の自動化・省人化などスマート化を推進しています。

中国全体の産業用ロボットの設置台数をみると、2010年代から大幅増が続いています。中国の産業用ロボットの年間設置台数は2013年に日本を抑えて世界最多となり、その後9年連続でトップを維持。2021年の年間設置台数は前年比51%増の 26万8000 台で、世界全体の年間設置台数(51万7000台)の半数以上を占めています。2021年の中国の製造業作業員1万人当たりのロボット密度は322台と世界5位に位置し、2018年(140台)の20位から大きく順位を上げました。

しかし、2018~2022年の中国の産業用ロボット年間販売台数における国外メーカーのシェアは6割前後で推移しており、国産メーカーのシェアを上回っています。

科学技術の自立自強を掲げる中国政府は、中国産ロボットの生産拡大や国産化の推進も打ち出しています。

2035年までに中国のロボット産業の総合力が世界のトップレベルに達することを目標とし、同目標に対し各種産業のファンドによる積極的な投資を促進するなど、金融支援を強化するとしています。

 

<太陽光発電モジュール生産 2020年>

(資源総合システム)

「モジュール」は、セルを必要数並べて、樹脂や強化ガラスで保護し、屋外で使用できるように処理されたもので「パネル」とも呼ばれます。「モジュール」はただの部品ではなく、パッケージ化された製品として完成されたものです。

中国光伏行業協会(CPIA)は、国内の太陽光発電容量が2023年に95~120ギガワット(GW)拡大するとの見通しを示しました。世界全体の約7割を占め、引き続き世界最大の生産地かつ消費地となっています。120GWなら前年比30%増に相当し、過去最大の伸びになるといいます。

 

 

   「日本経済指標と米国経済指標」  http://www1.odn.ne.jp/keizai/

   「中国経済指標」                           http://www1.odn.ne.jp/china/

      

 

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次回は 第4回  「IT・AI」

 

 

(担当E)

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