『中国経済 2022』
第5回
「エネルギー」
中国は、発電量、電力消費量とも世界最大ですが、二酸化炭素排出量も世界一です。
<太陽光発電>
(太陽光発電の累積参入量の推移)(国際エネルギー機関IEA)
「2030年までに、風力発電と太陽光発電の総設備容量を12億kw以上とする」
2020年12月習近平・中国国家主席は大きな目標を発表しました。
「12億kw」とは、一般的な大型原子力発電所の出力が100万kwだから、その量は大型原発1200基分に相当します。この量は、日本全体のすべての発電所の能力の4倍以上にもなる膨大な量です。それをたった10年で達成すると言うのです。
導入拡大の要因は、太陽光発電の大幅なコスト低下にあります。2010年代に太陽光の発電コストは大幅に低下。中国では約10分の1になりました。 この価格は、世界的にも安いといわれる中国の石炭火力の発電コストと同水準です。
大幅なコスト削減を実現したのは、グローバル市場で圧倒的な地位を獲得した中国メーカーの力です。太陽光発電市場における中国メーカーの強さは恐ろしいほどです。
中国メーカーは世界最高のコスト競争力と、世界最大の国内市場を背景に市場を席巻してきました。
2019年には世界シェアのトップ5を独占、トップ10のうち8社を中国メーカーが占めるという圧倒的な地位を築いています。2018年に世界全体で販売された太陽光発電モジュールの7割強が中国製だった、という驚きのデータもあります。
青海省、甘粛省などの広大な原野に数万から数十万kWのメガソーラーが次々と建設され、中国国内の太陽光発電市場は巨大化しました。2021年の現在では、日本市場における中国メーカーのシェアは50%を超えています。
<エネルギー総消費量>
(中国国家統計局 中国統計年鑑2021年度版)
中国政府が推進するエネルギー消費の「双控(ダブルコントロール)」政策が、中国各地のアルミ精錬会社や鉄鋼メーカーの生産に大きな影響を及ぼしています。双控とは、電力や石炭などのエネルギーの消費総量を抑制すると同時に、エネルギーの消費効率の改善を図るという意味です。
ここに来て双控政策の推進が強化されている背景には、2021年の前半に少なからぬ地方でエネルギーの消費効率が悪化したことがあります。国は双控政策の解釈を次のように明確化しました。まず、双控政策の目的は二酸化炭素排出量が多い化石燃料の消費を抑制することにあり、あらゆるエネルギーの消費を抑制することではない。そのうえで、政策の執行にあたってはエネルギー消費総量の抑制よりも、エネルギー消費効率の改善を優先するとしました。
<一次エネルギー供給構成>石油換算(2018年)
(IEA)
中国のエネルギー消費構造は、化石エネルギーが大きな割合を占めています。一次エネルギー消費に占める石炭の割合は、2010年頃までは約7割を占 めていましたが、その後は減少傾向に転じています。 2018年の石炭消費量は、全体に占める割合が初めて6割を下回りました。 一方、石油と天然ガスの消費量は年々増加しており、2018年の消費量は 2008年比でそれぞれ 90%増、478%増となりました。全体に占める割合は石油が約20%、天然ガスが約7%です
21世紀に入り、中国のエネルギー総消費量は経済成長と共に急速に増加し、今日では、世界最大のエネルギー消費国となっています。BP(2019年)の統計によると、2018 年の中国の一次エネルギー総消費量は世界の一次エネルギー 需要の約24%を占めています。
<原油生産量>
(中国国家統計局 中国統計年鑑2021年度版)
中国の原油は低油価に伴う投資縮小とコストの高い成熟油田の生産を抑制したことで、2015年から2018年にかけて生産が減少していました。しかし、米中貿易摩擦や産油国の供給不安定化を受けて同国のエネルギーセキュリティ意識が高まり、政府が国有石油企業に国内供給強化を働きかけ、企業が投資を増加させたことで2019年以降増加に転じています。新型コロナウイルス感染拡大に伴う石油生産操業への影響は限定的でした。ただし損益分岐点がバレルあたり60ドルを超える成熟油田を抱える同国の原油生産が今後大幅に上向くことは考えにくいようです。
<発電量>
(中国国家統計局 中国統計年鑑2021年度版)
中国では現在、電力不足が深刻化していますが、これは石炭を主燃料とする火力発電所の発電抑制が主因とみられます。中国政府は、2030年までに二酸化炭素の排出量をピークアウトさせ、2060年までに実質ゼロとすることを目標とし、地方政府にエネルギー消費量抑制などを課しています。
また、石炭価格の上昇で、電力会社が十分な燃料を確保できないことも、電力の需給ひっ迫につながっています。さらに、中国政府は新型コロナウイルスの発生源を巡りオーストラリアと対立しており、オーストラリア産の石炭や農産物などの輸入を制限する事実上の制裁を続けています。オーストラリア産の石炭は、中国の輸入石炭の25%強を占めていましたが、昨年から輸入は止まっており、石炭は品薄状態にあります。
<中国・米国・日本 発電量>
(IEA)
<中国・米国・日本 二酸化炭素排出量>
(IEA)
化石エネルギーの大量消費によって、中国は世界最大のCO2排出国になり、2018年には エネルギー由来のCO2排出量が約9.5GT となりました(IEA 2019年)。これは日本の排出量の約9倍 であり、世界第2位の排出国である米国の約2倍に相当します。またSO2やPM2.5 など、様々な環境負荷物質の排出量も多く、大気汚染や酸性雨などの深刻な環境問題を引き起こしています。また、一人当たりのエネルギー消費水準を見ると、中国は欧米や日本などの先進諸国と比べてまだ低く、アメリカの3分の1に過ぎません。現在のエネルギー消費構造のまま、経済成長と共に中国のエネルギー消費水準が先進国と同じレベルに至れば、CO2を含めさらに大量の環境負荷物質が排出され、世界全体にとっても、中国自身にとっても、深刻な 環境悪化を招くことになります。
「日本経済指標と米国経済指標」 http://www1.odn.ne.jp/keizai/
「中国経済指標」 http://www1.odn.ne.jp/china/
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(担当E)
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