『中国経済 2022』
第6回
「消費」
(中間層)
10年以内に中国経済は世界最大になるとの予測がなされる中、中国政府は「双循環」と「共同富裕」の二つの重要方針で内需の拡大や消費の高度化などを通じて、米国に並ぶ市場の創出を進めています。
中国の中間層は、既に米国の2倍の3億4,000万人が存在し、2025年に5億人に達する可能性が指摘され、個人消費の拡大ペースの加速が見込まれています。「共同富裕」では、成長と再配分の両方の実現が重視されており、所得の平等な分配による中間層の増加を重視する方針を強調しています。
(3級都市以下の消費者)
中国では、3級都市以下の消費者のポテンシャルが注目を集めています。これらの地域では、住宅コストなど生活費の安さによって、大都市の消費者に比べて可処分所得が多い場合があります。通勤時間が短いなどの利点もあり、自由な時間を確保し趣味や旅行など積極的な消費行動をとりやすいことから、個人消費が伸びています。3級都市以下の中には、年間の可処分所得が14万元(約224万円)から30万元(約480万円)世帯が人口の34%を占める都市が出てきています。これは、5年前の1,2級都市に近い水準で、その購買力が高まっています。
(Z世代)
中国では、一般的に1995~2009年生まれの若者を「Z世代」と言います。「Z世代消費力白書2019」(テンセント)によると、中国の「Z世代」の人口は2億6,000万人超で、総人口の約19%を占めます。そのうち、(1995~1999年生まれ)が38%、(2000~2004年生まれ)が32%、(2005~2009年生まれ)が30%を占めます。 2020年の「Z世代」の月間平均可処分所得は4,193元(約7万5,474円)とされており、全国住民の月間平均(2,682元)を上回っています。 1995年は以降に生まれた「Z世代」は、日々の生活においてデジタル技術を活用している世代です。スマートフォンを巧みに使って情報を収集し、主なコミュニケーションはSNSで行っています。デジタル技術を活用した情報収集により、幅広い分野に対し興味や関心を有しています。「Z世代」がトレンド関連商品を年間どの程度購入しているかについては、流行の玩具、衣服、靴類などを半年で3~5回購入している割合が3割強との結果が出ました。「Z世代」の特徴として、高い購買力に加え、装飾品や趣味を中心とした自分らしさを表現できる商品を選びやすく、趣味や自分の好きなことに対してお金を惜しまない傾向が示されています。2021年の「Z世代」の消費支出は、5兆元を超えると推計されています。高い消費力と旺盛な消費意欲により、「Z世代」は企業にとって新たなターゲット層となっています。「Z世代」などの若い消費者は、外国ブランドを盲目的に選択するのではなく、品質が同程度であれば割安な国内ブランドを選択する傾向があります。中国消費者の66%が外国ブランドよりも国内ブランドを選ぶと回答し、その回答者の過半数(62%)が「愛国心」をその選択理由としていました。国内ブランドが支持を受ける理由として、①品質に対する割安感②中国の国際的地位向上に伴う文化的な自信③国内ブランドが設立された同時期に生まれた「Z世代」にとって同世代意識があることを指摘しています。
(デジタル経済)
中国では、デジタル経済がGDPに占める割合が2005年の14%から2020年には39%にまで急速に拡大しました。とりわけ、SNSなどソーシャルメディアが販売の原動力となるソーシャル・コマースや、SNSでライブ配信しながら視聴者と配信者間で直接コミュニケーションをとりながらEO販売を行うライブ・コマースは、どちらもブランドと消費者間のコミュニケーションに大きな変革をもたらしています。
中国の平均的な消費者は、1日に7時間以上をモバイルインターネットで過ごしています。そのうち約3分の2の時間をWeChatやTikTokなどのSNSアプリの利用に費やしており、それらを通じた購買行動が顕著となっています。ブランドは、消費者へ直接販売することで多くの行動データをより早く、より低コストで入手でき、消費者が検証した商品へのインサイトを新製品やサービス開発に活かし、個別化と多様化が進む消費者ニーズへの素早い対応が可能となりました。
<消費小売総額(億元)>
中国商務省は、2025年までに小売売上高を50兆元(約850兆円)に増やす目標を掲げました。今後5年間で年5%増えることになります。
<一人当たり収入額(元)>
(中国国家統計局 中国統計年鑑2021年度版)
2011年から2020年までに住民一人当たりの可処分所得は年平均7.2%増加し、10年で累計100.8%%増加しました。
<自動車販売台数(万台)>
(中国国家統計局 中国統計年鑑2021年度版)
世界最大の自動車市場の中国で2021年は前年比3.8%増の2627万台となり、前年実績を上回るのは2017年以来で4年ぶりにプラスに転じました。前年比プラスに転じた原動力は、新エネ車の8割を占める電気自動車(EV)の販売拡大が大きいとみられています。
EVなどの「新エネルギー車(NEV)」が前年比2.6倍の352万1000台で、初めて300万台を突破。中国で新車販売に占める新エネ車の割合は13.4%と、20年の5.4%から一気に高まりました。
<自動車販売台数(中国・米国・日本)>
自動車の販売台数は、米国と日本を合わせたくらい。
トヨタ自動車の2018年の販売台数は、日本国内で74万台に対し中国では76万台販売しています。
<自動車普及台数(100戸当り)>
(中国国家統計局 中国統計年鑑2021年度版)
人口1000人あたりの自動車保有台数ランキングでは、米国が1000人あたり837台で1位になったほか、日本も591台で5位に入ったのに対し、中国はわずか173台で17位という結果になりました。人口あたりの自動車保有台数が日米に遠く及ばない大きな理由が、1人あたりのGDPがなおも低いことにあります。経済規模も自動車保有台数も世界トップクラスであるものの、それ以上に人口の母数が多いため、人口あたりで計算したランキングでは自ずと下位に沈んでしまいます。しかし、1人あたりの保有台数が少ないということは、中国の自動車市場にはまだまだ計り知れないほどの「伸びしろ」があることも意味しています。
「日本経済指標と米国経済指標」 http://www1.odn.ne.jp/keizai/
「中国経済指標」 http://www1.odn.ne.jp/china/
====================
(担当E)
====================