『北海道の地質的景観』 第18回 三笠 アンモナイト | 奈良の鹿たち

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『北海道の地質的景観』

第18回

<三笠 アンモナイト

 

 

 

三笠市は約1億2千万年前~6千800万年前の白亜紀の地層が走っています。

これを蝦夷層群といいます。

地層が堆積した時間も長く、また堆積環境も多様であるため、様々な種類の化石が産出します。

ここから白亜紀の多くの種類のアンモナイトの化石が大量に発掘されています。

約1億2000万年前~6800万年前の白亜紀という時代には、現在のような日本列島と呼べるものはまだ存在しておらず、日本列島はアジア大陸の一部でした。同様に北海道も存在しておらず、北海道は西部と東部に分断されていました。北海道西部はアジア大陸の縁辺にあり、北海道東部は現在より北に位置していました。二つの地塊の間には、海溝と呼ばれる地形的に深い溝が存在し、アジア大陸縁辺には比較的浅い海域があり、その海底で砂や泥などが堆積したのが蝦夷層群です。

その後、新生代中新世(約2000万年前)にアジア大陸の一部であった日本列島が日本海の拡大によって大陸から分離しはじめました。北海道の東部の地塊は南下をはじめ、その後北海道の西部地塊と衝突を起こしました。その影響で北海道中軸部周辺には断層や褶曲が発達し、日高山脈のような地形的な高まりもできました。両地塊の間の海底で堆積した蝦夷層群も隆起し、現在のような地層として地表に現れました。

蝦夷層群は、北海道中央部(南は浦河町周辺から北は稚内市宗谷岬まで)を南北に縦断しており、その地層は泥岩や砂岩、礫岩で構成されており、堆積期間は5000万年以上あり、また厚さも8000mを越えます。

蝦夷層群中部層準の三笠層は、約1億年前の白亜紀に出来た地層です。主に浅い海の底で出来た地層で、砂岩層や礫岩層からなります。礫岩層と砂岩層が何度も繰り返し積もってできた地層になっているこの地層からは、アンモナイト・イノセラムス(二枚貝)・首長竜恐竜などの海生爬虫類の化石の多くが発見されています。

 

アンモナイトは示準化石と呼ばれる地層の時代決定に有効なグループであるため、蝦夷層群産のアンモナイトも昔から研究されてきました。これまでに蝦夷層群からは500種類以上のアンモナイトが報告されており、世界的に有名なアンモナイト産地になっています。サイズも小さなものから大きなものまで様々で、大きなものでは直径が1mを越えます。蝦夷層群で産出するアンモナイトの中で特に有名なのが、「ニッポニテス」と呼ばれるアンモナイトです。「ニッポニテス」は一般に知られている平面状に巻いたアンモナイトと異なり、巻きのほどけた独特な巻き方をした種類(異常巻きアンモナイト)で、世界中の化石愛好家の憧れの化石になっています。


 

イノセラムスは約2億年前から約6600万年前(白亜紀)まで生息した二枚貝で、白亜紀末に絶滅しました。世界中で繁栄し、時代によって様々な種類(形)が存在することが知られています。
北海道の1億年前の地層からは、たくさんの種類のイノセラムスが産出し、特にこの付近に分布する地層(三笠層)からは、殻の大きさが1m近くにもなる大型の種類が産出します。

イノセラムスもアンモナイトと同じく示準化石として利用できるため、さかんに研究されてきました。

 

三笠市立博物館では、蝦夷層群から発見される首長竜、モササウルスやウミガメに代表される海生爬虫類化石を中心に、ノドサウルス類の頭骨とティラノサウルス類の尾の骨の2点を展示しています。他にも、翼竜の化石、海鳥の化石も展示しています。また、このコーナーには、三笠市から発見され、国指定天然記念物となっているエゾミカサリュウも展示しています。

三笠で発見されたモササウルスの新種(学名:タニファサウルス・ミカサエンシス)の頭骨化石も展示しています。1976年に発見され、翌年7月には国の天然記念物に指定されました。

恐竜化石については、これまでに、ロサウルス類、ノドサウルス類、テリジオサウルス類の産出が知られています。また、蝦夷層群から延びるサハリンの白亜紀層でも、1934年に日本人によって恐竜化石が発見されています。この恐竜化石は、ニッポノサウルスと命名されました。

 

 

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 次回は 第19回「釧路原野」

 

 

(担当 G)

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