『北海道の地質的景観』
第15回
<アポイ岳>
アポイ岳は、北海道様似郡様似町にあり日高山脈支稜線西南端に位置し、標高810.5mの山である。山がかんらん岩で出来ていて、特殊な自然体系であることから、1952年に高山植物帯が「アポイ岳高山植物群落」として国の特別天然記念物に指定されました。1981年には日高山脈襟裳国定公園の特別保護区となりました。標高が低いわりに、特殊な岩体のため森林が発達せず、「蛇紋岩植物」が生育する高山植物の宝庫として知られていて、花の百名山のひとつとなっています。
約1800万年前に千島列島が西に移動し、東北海道西部にぶつかった影響で日高山脈が上昇したときに、地殻の下にあったはずの上部マントル物質がめくり上がって、地表まで持ち上げられました。地球深部のマントルという非常に広大な部分を、このかんらん岩が占めています。
かんらん岩は、地下深くのマントルから上がってくる過程で、水分と反応して「蛇紋岩」というほとんど別の岩石に変化してしまう。しかし、アポイ岳のそれはほとんど変質することなく地上に現れています。マントルにあった時のままのかんらん岩が、地表付近で見ることができるのは、世界的にも非常に珍しい。地上にいて、マントルの中の構造を見ていることになります。
アポイ岳西方尾根「馬の背」の手前にかんらん岩の露頭があります。
「幌満かんらん岩」(Horoman peridotite)の名前で世界的に有名で,学術的にとても貴重な岩石です。
アポイ岳のかんらん(岩幌満かんらん岩)の特徴は(1)かんらん岩がきれいで新鮮であること.つまり,地下深部(数10km深の上部マントル)にあった鉱物がそのままの形で含まれているので,かんらん石(オリーブ色)斜方輝石(濃褐色)単斜輝石(エメラルドグリン)スピネル(黒色)が肉眼でよく見えること.(2)とっても多彩なかんらん岩であること.つまり,さまざまなタイプのかんらん岩が層状岩体をつくり,地球深部の上部マントルで起こっている色々な地質プロセスを教えてくれる貴重な情報源になっていることです。
かんらん岩は、その密度の高さを利用して、港のコンクリートの骨材などに利用されています。
かんらん岩は主に、黄緑色~緑色をしたかんらん石からできています。その美しい結晶は8月の誕生石「ペリドット」という宝石になります。
====================
次回は 第16回「宗谷丘陵」
(担当 G)
====================