『北海道の地質的景観』 第12回 積丹半島 | 奈良の鹿たち

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『北海道の地質的景観』 

第12回

<積丹半島>

 

 

 

長さ約40km、幅20~30kmの積丹半島の先端には、観光名所として名高い積丹岬神威岬があります。半島の東側で突き出ているのが積丹岬で、西側に突き出ているのが神威岬です。海岸は高さ50m内外の海食崖が発達し,海岸段丘面を除いて平地は少ない。

後志(しりべし)火山群に属し、新第三紀層(6500万~200万年前)の火成岩を基盤に、多くの火山が噴出。余別岳(1298m)、積丹岳(1255m)など 1000m前後の山地が連なり,山地は浸食が進んで壮年期の山容を示しています。

積丹岬のごつごつした景観は、貫入岩や溶岩の火山岩がつくったものです。積丹岬の海岸には、色々な種類の火山岩がころがっています。火山活動は、1000万から900万年前ころの時代です。しかし遠くには、水平でやや傾いた地層を見ることができます。

神威岬は、海に突き出たやせた尾根の上を、転げ落ちそうなほど細い道を先端まで歩いて行けます。神威岬では、柔らかそうな水平の地層が見られます。しかし、海の中に切り立ったような形状の岩や、遠くの崖には貫入岩や火山砕屑岩が侵食に耐えて不思議な地形をつくっています。また、あちこちに、火山岩の礫がころがっています。こちらの火山活動は、積丹半島よりやや新しく、600万年前ごろのものだと考えられています。

 

積丹半島には新第三紀や第四紀(10000万~6500万年前)に活動したマグマでできた岩石があります。それ以外の穏やかな海岸地域は、堆積岩からできています。マグマでできた岩石は、一般的に硬いため、本来なら侵食で削られるべき地域が、まだ残っています。これが海側で飛び出している理由です。
積丹半島には、神威岬にあったような堆積岩でできた地層もあります。特に西部の海岸ではよく見られます。堆積岩でできた地域は比較的やわらかいので、海の波による侵食を受けます。その結果、新しいものでは海食崖、古いものでは海岸段丘などの地形ができます。海岸段丘は積丹半島の西側で、海抜50mあたりによく見られ、最後の間氷期のものであることがわかっています。弱いがために侵食を受け、段丘と海食崖で険しい崖となっています。また、半島中央部の火山活動に関連したマグマの活動によって、地層中には火山砕屑岩や貫入岩がいたるところにあり、侵食を免れて切り立った地形をつくっています。

 

神威岬をまわって積丹半島の西海岸に出たところに沼前(ノナマイ)の大規模地すべり地形があります。地すべり地形とは,その名のとおり大地がすべり動いて出来た地形のことです。中央部の幅450mほどの部分は最近まで動いていて,1年間で1mも海に向かって移動したこともあったそうです。昭和初期にはここにあった袋澗(ふくろま:漁獲したニシンを一時的に保管する港湾施設)が破壊された記録もあります。このため昭和45年春には、ここにあった集落が移転しました。その後,地すべりの先端に土や岩の重石を積み上げたり,すべりを促進させていた地下水を抜き出すなどの対策工事が進められて,現在では動きはおさまっています。近くには,「動いた石」の伝説を伝える石神社もあるので,江戸時代には既に地すべりの被害が起こっていたのかもしれません。

 

  

 

 

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 次回は 第13回 「新冠 泥火山」

 

 

(担当 G)

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