『生物の変遷と進化』第5回
<30億年~6億年前>
(始生代後期~原生代)
「全球凍結」
(地球全球凍結)
●地球全球凍結
現在の地球で氷に覆われているのは北極、南極の周辺が主ですが、かつて地球全体が氷に覆われていた時代がありました。それは地球全球凍結(スノーボールアース)と呼ばれています。
地球全球凍結が起こる原因は、太陽活動の低下と地球上の酸素の増加・二酸化炭素の減少で気温の低下がもたらされたと考えられています。
陸地は厚さ数千mの氷河に覆われ、海も厚さ1000mの氷で閉ざされました。(富士山の2倍の高さまで氷が覆っていました)
平均気温マイナス40℃の時代が数千万年ほど続いたと考えられています。
その間、現生生物の共通祖先は、凍らない深い海の底や火山周辺の地熱地帯などで細々と命をつなぎました。海の表面が氷で覆われたため、太陽光が入ってこなくなり、多くの生物が致命的な打撃を受けました。ほとんどの生物が死滅し、まさに大量絶滅が起こったのです。この間の地層には生物の化石は発見されていません。シアノバクテリアはこの氷河時代を生き抜き、酸素をつくり出していました。
生物の生存にとっては最悪のように思われますが、「全球凍結は生命の進化を促進した」という重要な意味をもっています。
22億~6億年前までの間に全球凍結が3度起きていて、その都度、生物の進化を考える上で非常に重要な出来事が起こっています。
〇1回目(マクガニン氷河期)の全球凍結は約22億年前(約23~22億2千万年前)に起こっていて、それは原核生物が真核生物に進化した直前にあたります。
〇2回目(スターチアン氷河期)は約7億年前(約7億3千万年~7億年前)で、単細胞生物が多細胞生物に進化した直前でした。
〇3回目(マリノアン氷河期)は約6億年前(約6億5千万年前~6億3.5千万年前)で、このあとエディアカラ生物群といわれる生物の多様化・大型化が爆発しました。
凍った地球という過酷な環境にさらされたことが、生命の進化を促進するきっかけとなったようです。全球凍結や大量絶滅など過酷な環境変化の後には「大適応放散」というものが起きて、生物の多様性が増大するといわれています。氷に覆われていると多くの生物は絶滅しますが、一部で生き残った生物が新たな世界を生み出しました。
凍結がゆるんでいったのは、火山活動による二酸化炭素の温室効果だとされています。
その結果、二酸化炭素の濃度は2000年ほどかけて現在の400倍に達したとされ、気温も100℃ほど上昇して40℃程度になり、全球凍結から抜け出したと考えられています。
●メタン
近年、地球の温暖化・寒冷化にメタンが関わっていることが言われています。全球凍結もメタン生成菌が何らかの原因で減って、地球のメタン濃度が低下し気温が下がった結果だとされています。原始地球においてはメタン生成菌によるメタン放出によって地球大気が暖められ、生命の進化を促したと考えられています。またメタン生成菌の繁殖が抑えられ、メタンの放出が減り、藍藻類(シアノバクテリア)が登場して大気中の酸素が増え始めたという説もあります。
メタン生成菌の関与しているメタン生成量は年間3億〜7億トンとされています。一方、メタン生成菌が関与していないメタンの生成量は5千万〜1.5億トンとされていますから、メタン生成菌の地球に影響を及ぼす寄与率の大きさは明確です。
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次回は 第6回「真核生物の出現」
(担当B)
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