『生物の変遷と進化』第4回 酸素発生:光合成生物出現 | 奈良の鹿たち

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『生物の変遷と進化』第4回

<35~30億年前>

(始生代  中期)

酸素発生:光合成生物出現~ 

 

 

 

(酸素の発生)

 

 

現在の地球は、酸素が主成分(約21%)の大気を持っています。地球大気は、最初は酸素を含んでいなかったものの、酸素発生型光合成生物が出現した結果、大気や海水に酸素が含まれる「好気的」な環境がもたらされました。生物は、始めは酸素のない「嫌気的」な環境で誕生し、進化してきました。

光合成をする最初の生命体の化石は、西オーストラリアのビルバラ地域で発見された約35億年前の ラン藻類(シアノバクテリア )です。このシアノバクテリアは今から35~27億年前から存在していました。しかし、酸素濃度が急増し始めたのは、今から約24.5~20億年前頃でした。

この酸素大発生は「大酸化イベント(Great Oxidation Event, GOE)」と呼ばれています。

それまで、少なくとも現在の10万分の1以下だった酸素が、現在の100分の1レベルにまで増加しました。

何故、シアノバクテリアの発生から酸素濃度上昇まで5億年以上もかかったのか?

一説には、光合成活動が生じても,通常の自然変動では酸素濃度のゆらぎしか生じないが、23億年前ごろの第1回目の全球凍結イベントにともなう地球システムの大きな擾乱の結果、大気酸素濃度の遷移(低い安定レベルから高い安定レベルへの遷移)が生じたと考えられます。地球大気に酸素が高い濃度で含まれている理由は,全球凍結イベントが生じたためである、といえます。

もう一つの説として、地球自転速度が遅くなって一日の時間が長くなったためというものです。

地球誕生の48億年前は5時間、14億年前は18時間でした。

そのため、日中の太陽の当たる時間が長くなり、光合成が盛んになりました。

 

シアノバクテリアは、海面近くで太陽光を利用して光合成をおこない、二酸化炭素から酸素を生み出して大きなエネルギーをつくることを可能にしました。しかし逆に、大量の酸素がそれまで繁栄していた嫌気性原核生物の多くを大量絶滅させました。

シアノバクテリアは、藍藻と呼ばれる藻類の一種として分類されていましたが、他の藻類と違い細菌類と同じ細胞に核を持たない原核単細胞生物(古菌類)のため、現在では細菌として分類されるようになりました。

 

ミトコンドリア

進化遺伝学的な研究により、光合成能力をもつシアノバクテリアが、他の細菌と共生的に合体することによって真核生物が生じ、葉緑体となったと考えられています。シアノバクテリアが酸素を排出出来る葉緑体になったのは、その細胞内のミトコンドリアのお陰です。

ミトコンドリアは、もともとは独立した生き物で、好気性細菌という酸素を使ってたくさんのエネルギーをつくりだすことができる生物でした。それがシアノバクテリアの細胞に取り込まれ、細胞内ミトコンドリアになったと考えられています。

そしてたくさんのエネルギーを必要とする真核生物にとっては、ミトコンドリアはなくてはならないものとなりました。ミトコンドリアも一度細胞の外に出たら、もう生きてはいけません。元々は単独で生きられていたミトコンドリアの祖先ですが、細胞と一緒に過ごしている間に、細胞なしでは生きていけなくなってしまいました。つまり細胞にとってミトコンドリアはなくてはならない存在であり、かつミトコンドリアにとって細胞はなくてはならない存在といえます。

これを細胞内共生といいます。

 

シアノバクテリアは、細胞から分泌する粘液で海水中に浮遊する微細なミネラルの粒子を捕らえ、炭酸カルシウムと結合させて群体として成長し、層状の岩(ストロマトライト)を形成します。 ストロマトライトは1日周期で活動し1日1枚の堆積層を作り出します。化石のストロマトライトの1周期内に含まれる層の数を数えると、その時代の1年の日数を知ることができます。

その結果、8億5千万年前の化石ストロマトライトからは、1年が435日であったことが分かります。

 

 

 

 

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次回は 第5回「全球凍結」

 

 

(担当 B)

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