『生物の変遷と進化』第15回 2回目の大量絶滅 | 奈良の鹿たち

奈良の鹿たち

悠々自適のシニアたちです

『生物の変遷と進化』第15回

<3億7400万年前>

(デボン紀)

「2回目の大量絶滅」

 

(氷床)

 

 

2回目の大量絶滅の前まで、陸上には植物と昆虫が繁栄しており、海には多種多様な海洋生物が存在していました。植物、節足動物、脊椎動物が陸上に出揃った後、初めての大量絶滅が起きました。

陸上に進出し始めていた植物や動物、海に住む甲冑魚(かっちゅうぎょ:硬い外骨格を持つ魚)などの古代魚(ダンクルオステウス)や三葉虫・筆石のほとんどが絶滅しました。全ての生物種の82%が絶滅したことになります。

一方、軟骨魚類のサメ類は生き残り、以後の繁栄に繋がります。

腕足類や魚類のデータから、高緯度より低緯度の、淡水域より海水域において絶滅率が高いことが判明しています。川や沼などの淡水で生息していた魚などは、比較的多く生き残り、水際では両生類が誕生し、陸にはシダ植物の森林が出来ました。

このデボン紀の大量絶滅の次の時代には、昆虫が繁栄し、爬虫類が現れ、海ではオウムガイが進化してアンモナイトが現れました。

 

 

ボン紀後期の地層に、炭化水素の「コロネンcoronene」という物質が多く含まれていることが分かりました。コロネンは炭化水素で、有機物の燃焼でできる際、森林火災を上回る1200度以上の高温を必要とします。具体的には高温のマグマか、天体の衝突によるものです。まとまった量のコロネンは大量絶滅が起きた年代の地層でしか見つかっていません。

デボン紀後期の地層から、当時は東ヨーロッパとシベリアに大規模な火山があったことが知られています。東北大学海保名誉教授らはコロネンを手掛かりにして、大量絶滅の原因は大噴火以外にあり得ないと結論づけました。

大規模火山の噴火は、地球深部の高温物質がマントルから地表に向かって上昇する「(ホット)プルームplume」によって起こりました。噴火で拡散した二酸化硫黄や二酸化炭素などが引き金となって気候が変動し、大量絶滅が起きたと考えられます。

火山の大噴火が起きると、一時的に寒冷化が進み、その後、大量に放出された温室効果ガスにより温暖化が進行します。

このデボン紀後期の2回目の大量絶滅は、約2000万年間に順に小、大、中規模の3回に分けられます。

 

デボン紀末の大量絶滅の他の原因

この時期の環境の変化として、寒冷化海洋無酸素事変の発生が知られています。酸素および炭素同位体比のデータは、2回の寒冷化および有機物の堆積、大気中の二酸化炭素の減少を示しており、これは、海水準の上昇および大量絶滅と同時に起こっていました。また、海水中のストロンチウム同位体比の変動は、気温の上昇を示しています。これによって、ほとんどの海の生物が絶滅したとも考えられています。

 

氷床

この時期、大陸移動による氷床 の発達による気候の急激な変化、海水面の後退(海退)、乾燥化、低酸素化などの大きな環境変化がデボン紀後期に繰返し発生し、大量絶滅が起こったとも考えられています。

 

デボン紀後期に、小天体衝突の証拠となる隕石物スフェルール (巨大隕石衝突で出来た球状の粒子)の存在が報告されています。

スウェーデンのシリヤン・クレータSiljan crater(直径50km)が、この時代のものであるとされていますが、白亜紀末の生物大量絶滅を引き起こした巨大隕石の衝突跡であるユカタン半島のチチュルブ・クレーターChicxulub craterは直径160㎞にもなり、デボン紀に落ちた隕石はくらべて小さく、生物大量絶滅の引き金になりうるほどの破壊力はなかっただろうと思われます。

 

 

「デボン紀後期の2回目の大量絶滅」は、何がきっかけで多くの生物が絶滅したのか、いまだ謎の多い出来事です。今から3億7200万年前に、8割ほどの生物種が絶滅したといわれていますが、大量絶滅を引き起こす決定的な証拠が出てきません。

デボン紀の生物大量絶滅には、ちょっとした特徴があります。

デボン紀という時代は「魚の時代」といわれるほど、魚類が大繁栄し、サメの登場やイクチオステガなどの陸生の脊椎動物が現れるなど、大躍進の時代でした。しかし、魚類では海に住む種類と湖や川などの淡水域に住む種類とで、絶滅率に明確な差がありました。

板皮類(硬い甲羅で覆われた古代魚・ダンクルオステウス)では海に住む種の65%が絶滅しているが、淡水に住む種は23%程度。

棘魚類(エラに棘のある硬骨の古代魚)では海に住む種の87%も絶滅しているが、淡水に住む種は30%程度。

いずれも海生種に深刻なダメージを与えていることが窺えますが、魚類に限らず、デボン紀には節足動物など陸の生き物より、三葉虫や、腕足類、サンゴなど、海の生き物の方が顕著に絶滅しており、デボン紀の生物大量絶滅は海の中で主に起こったことが特徴です。

また、二枚貝の腕足類は赤道近くといった低緯度の熱帯の海に住む種類は91%と壊滅的なのに対して、高緯度の冷たい海に住む種類は27%にとどまっています。

この絶滅率の差から、大規模な寒冷化が起こったものと考えられます。

しかし、デボン紀の生物大量絶滅の時期に、今の南極のような大規模な寒冷化による氷床の痕跡は今のところ見当たらず、その原因が寒冷化だと確実には言えないのです。

 

 

 

 

====================

次回は 第16回「爬虫類の出現」

 

 

(担当B)

=============