前回は心の死滅について、欲望や自我意識によって思考が動かないように止める、というお話をしました。
今回は、どのようにその動きを止めればよいのかを考えてみたいと思います。
例えば、ヨガクラスに行ったときのことを考えてみましょう。
周りに自分より体の柔らかい人がいます。そこで自分のポーズと相手のポーズを比べて、
「あの人の方が体が柔らかい」
という思考が動きます。
あるいは、体の硬い人がいると、
「あの人よりは柔らかい」
という思考が動きます。
このとき、自我意識によって思考が動き、人と比べるという作用が起こったと考えることができます。
このような思考が起こったとき、その動きを止めなくてはいけません。
では、どのように止めればいいのでしょうか?
とにかく、
気をつけること
これだけを心がけます。
人を見る。
思考が比べる。
「あの人体柔らかいな」
思考に気づく。
「あ、比べちゃった。いけないいけない」
思考から離れる。
「ポーズを比べてもしょうがないぞ!自分の感覚だけに集中しよう」
自我意識に気づく。
「ポーズを比べたということは、ヨガのポーズが自分の自意識の対象になっているんだな」
自我意識から離れる。
「私はポーズとは関係ない。他人とポーズを比べることで得る優越感や劣等感は、私に何の幸せももたらさいない」
このように、
気づいたら止める
気づいたら止める
を繰り返すうちに、だんだんと自意識から離れ、思考が動かなくなってきます。
これをヨガに限らず、仕事、年収、車、顔など、自我意識によって他人との比較が起こったときに出来るだけ行います。
例えば、喫煙者が禁煙をするとき、酒飲みが禁酒をするときと同じですね。思考に対しても同じような感覚向き合います。
「あー、考えたいけど止めておこう」
注意深く、そして強い意思を持てば喫煙者は禁煙に成功します。同じく、思考にも同じような努力を傾けることによって制御ができるようになってきます。
『スッタニパータ(ブッダのことば)』の中で釈尊(ブッダ)は次のように説いています。
煩悩が起こる原因とその解決方法について、アジタというバラモンがブッダに質問します。
「煩悩の流れはあらゆるところに向かって流れる。その流れをせき止めるものは何ですか?その流れを防ぎまもるものは何ですか?その流れは何によって塞(ふさ)がれるのでしょうか?それを説いてください。」
師(ブッダ)は答えた
「アジタよ。世の中におけるあらゆる煩悩の流れをせき止めるものは、気をつけることである。気をつけることが煩悩の流れを防ぎまもるものである、と私は説く。その流れは智慧によって塞(ふさ)がれるであろう」
『ブッダのことば』
中村元 訳
このように、気をつけることが大切です。
喫煙者が禁煙をするように、酒飲みが禁酒をするような感覚で思考に対して向き合います。
「あー、考えたいけど止めておこう」
このような煩悩を消すという話になると、長時間の瞑想で自己が変容したり、何かの神秘体験によって急に変化が起きると考える人がいます。
しかし、そのような急な変化はあり得ません。本人は変わったと思っても、実際は一歩も進んでいないということがよくあります。
必要なのは地味な努力です。
長時間の瞑想や神秘体験によって自己の変容を求める人は、火種を片付けずに火を消そうとする人に例えられます。
燃え盛る火を吹き消そうとして強く息を吹きかけます。一瞬弱まったように見えますが、すぐ火は元のように現れてしまいます。
智慧のある人は、少しづつ火種を減らし、火を小さくしていって、最後に火種を全て無くして火を消し去ります。
もちろん、瞑想することを否定しているわけではありません。毎日10分か20分、こだわりもなく期待もせずに、穏やかに呼吸して思考を休ませる程度にしておくのが理想的です。
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