お赤飯たかなきゃ。 -9ページ目

チラリズム。

嫌いじゃない。


奥ゆかしさと恥じらいが醸し出す、淡くほのかな色気。

そして、偶然がもたらす、甘く儚い時のいたずら。


チラリズム―。


その魅力は十分に理解していた。

いや、理解などではなく、もっと本能的なもの。

声こそ潜めるが、正直、好きだと言っていい。


そして、日々、狙っていた。

その機会を、僕は虎視眈々と狙っていた。

いや、狙っていたというのは語弊がある。

そう、待っていた。僕は、じっと待っていた。

その一瞬を決して逃すまいと、目を光らせて待っていた。


「えっ!?」


だがその時、僕は何の準備もしていなかった。

何の予感も、心構えもしていなかった。

これを油断と呼ぶのだろうか。


「いやん!!」


小麦色の肌の隙間から覗く、乳白色の豊満な肉体―。

そして、めくれ上がった内部から漂う、甘く濃厚な香り―。


僕は、突然のチラリズムに、思わず上気した。


「こ、こんなことって、あ、あるの!?」


穴があるなら入ればいい。


山崎製パンの大人気商品『ホットケーキサンド』。


本来ならば、2枚のホットケーキが綺麗に重なっているはずだが、

封を開けると、片方のホットケーキの端が、ペラリ…と。

そして、間に挟まれたメープル&マーガリンが、チラリ…と。


「こ、こいつは…」


(犯罪すれすれ…)


理性を失くした僕は、一心不乱にむしゃぶりついた。

入門するかも知れない。

つい、車に乗ってお出かけ。だって、良い天気だったんだもの。

そして大地震以降、給油できずにいたガソリンを手に入れたんだもの。


「ヴァヴォン!ブルルルヴォルン!」


運転席に座ってエンジンキーを回すと、ノート君が元気一杯にしゃべり始めた。


穴があるなら入ればいい。  


そらフェラーリやらポルシェなんかと比べたら、ちゃっちい車であろう。

そうじゃなくても、他にもっと良い車はたくさんあるだろう。

だが僕は、この愛車、青色のノート君が大好きなのである。

いや、そもそも車なんてものには興味がないのである。


あらゆる話題に付いていくことができるとの自負がある僕だが、

昔から、バイクと車の話にはまったく付いていけなかった。

「750㏄のバイク買ってん!」と自慢されても、「はぁ…」と、ちんぷんかんぷん。

アイルトン・セナは好きだったが、僕の中でのCCは、レモン以外考えられなかった。

なので車の話題をされても、「ほぉ…」とはぐらかすのが精一杯。

でも、車のことを詳しく知らなくても、ノート君の“可愛さ”は分かる。

目がクリっとした何とも愛らしい顔をしているではないか。


そんなことはさておき、僕は気分爽快にノート君を走らせた。

目指すは、高幡不動金剛寺である。

東京都日野市にある、1100年の歴史を持つ言われるお寺である。


目的は、この御方―。日野市といえば、この御仁である。


穴があるなら入ればいい。  


「歳さん!」


叫んでも、応えてはくれない。

想像していたよりも体も小さく、顔色も青銅っぽかったが、まぁ、想定内。

歳さん像以外にも、境内には立派な本堂や五重塔などがあり、何とも風情豊か。

でも京都の近くで生まれ育った僕としては、何だか物足りないことも確か。


「こじんまりしてるなぁ~、まぁ、こんなもんかぁ…」


だが、しかし!

道路を挟んだ向かいの饅頭屋の休憩所に、一枚の張り紙が!


穴があるなら入ればいい。  


「きゃーー!」


揺れた。心が揺れた。

そして憧れた。履歴書に書くことに、憧れた。

『第一種普通運転免許』の下に、『天然理心流免許皆伝』と記すことに、憧れた。

少なくとも、車よりは興味がある。

それに、この写真のおじさんになら、今の僕でも勝てそうだ。

創始以来初となる「入門初日で免許皆伝!」なんてことも、あり得ない話ではない。


「ぬぐぐぐぐ…」


「入門したいけど…」


「痛いのかな??」


「お金、とられるのかな??」


とりあえず、まんじゅう買って、たらふく食べた。


入門するかどうかは、じっくり、考える。

地震余波とセリーグ開幕。

地震発生から5日が経った。


テレビからは悲惨な映像が流れ、犠牲者の数は日々増え続けている。

福島原発は悪化の一途を辿り、予断の許されない危機的状況。

そして、仙台や岩手、福島などの被災地と比べると微々たるものではあるが、

ここ東京でも依然として余震が続き、非常事態を実感する日々が続いている。


そう。電力不足による停電に加え、物流網の混乱と買いだめによる物資不足―。

「昼飯を!」と思って薄暗いコンビニに行くと、どら焼きとキムチしか置いてなく、

「晩飯を!」と思い、薄暗い“てんや”で野菜丼を注文しても、

気のせいか、ご飯の上のてんぷらの具材が、見本と大きく違うように感じる。


まぁ、個人的には買いだめを考える前に被災地の人のことを考えろと思うし、

騒いでる人々を見て、「ピエロたちが踊ってるなぁ」とも思うが、

この状況下では、それも仕方のないことなのだろう。批判はできない。

そして最終的に長生きをするのは、そういう危機感の高い人たちなのだとも思う。


とにもかくにも、地震の影響は様々なところにまで及んでいる。

スポーツ界でも、Jリーグを始めとして多くの競技が開催中止を発表。

だがその中で、プロ野球のセ・リーグが3・25強行開幕を決定した。


様々な意見があるとは思うが、僕は予定通りの開幕には反対であった。

選手やファンの心理に加え、この電力不足の状況下では、やはり“強行”だと思う。

ドーム球場やナイター設備での開催にどれだけの電力を使うのだろうか。

「プロ野球を通じて勇気を与え、日本を元気させる」―。

それはその通りだろう。その意見には激しく賛同する。

だが、まだ早すぎると思う。まだその時期ではないと思うのだ。

実際に被災した人々は、しばらくは自分自身のことで精一杯だと想像する。

野球なんて見ている場合ではないだろうし、それこそファンを無視している。

それも、中止にするつもりがファンの意見で開催を決めた、ということなら分かるが、

最初から“開催ありき”という協議には疑問が残るし、到底、賛同はできない。

「勇気を与えたい」というのは後付けであり、単なる思い上がりであるとも思う。

“やらない”ことでも、世間に対して十分なメッセージになるのではないだろうか。

何もグラウンドでプレーすることだけがプロ選手の役目ではない。

逆に“やる”ことで、「野球もやってるし、これで普通に戻ったね」と、

被災地の人々のことを忘れてしまうことの方が、今は恐ろしい。



と、夜中に自分の意見を一方的に吐き出してしまったけど、

まぁ、僕は普通に元気です。幸せです。


早く、いつものくだらないかんじのブログに戻りたいと思います。


穴があるなら入ればいい。