ノーモアヒロシマ。
つい、原爆ドームへ。
だってせっかくヒロシマに来たんだもの。
小学校の時の修学旅行以来の原爆ドーム。
その頃の記憶は残っていたし、テレビの映像でも何度も見ていた。
だが、実物を改めて目の当たりにすると、やはり凄まじい。
押し迫って来る圧倒的な現実に、僕はたまらず涙した。
平和記念資料館にも足を運んだが、そこでも涙が止まらない。
1歩進むと1粒、2歩進めば2粒の涙がこぼれ落ち、3歩進めば鼻水ずるずる。
てか、資料館に入る前に入場料が50円だと知ったときから涙がほろり。
涙もろくなったのは、歳をとったせいでしょうか。
「あ~もっと見たいけど帰りの飛行機に乗らなくちゃ…」
1時間も見れなかったけれど、とにかく“NO MORE ヒロシマ”です。
買っちゃったの。
アタリのラーメン。
なんだか出張が多い。
そして、ラーメンばかりを食べている。
仕事を終えると、大抵、腹が減っている。
腹が減っては戦もできぬし、快眠もできぬ。
快眠できなければ、心躍るような楽しい夢は見れない。
だから、夜11時だろうが12時だろうが、食うことにする。
だが見知らぬ土地で夜更けに一人で何か食おうと思うと、
凡庸な人間は、大抵の場合、ラーメンになっちゃうのだ。
静岡でも、松山でも、そして今回の群馬でも、そうなっちゃったのだ。
「いらっしゃいませぇぇ!」
その店は、駅前にあった。
のれんをくぐると、大勢のサラリーマン客の隙間から、
幾人もの店員による威勢の良い声が聞こえてきた。
(良いねぇ!威勢が良い店に、マズイ店はないからね…)
見知らぬ土地なので、すべてがチャレンジ。
ウマイかマズイか、当たるか外れるかは、すべて運任せ。
インターなんちゃらで調べることもできるが、僕はあえてそうしない。
普段は石橋を叩いて叩いて叩き過ぎて壊してしまう時もある僕だが、
時として、吊り橋をスキップで渡りたい気分になる時もあるのだ。
男には、そんな勇気と気概が必要なのだ。
「お待たせしましたぁ~!」
(モグモグ、、、おや?威勢ほど、味は良くないね…)
どうやら今回のチャレンジは失敗。ハズレかなと思った。
いや、ハズレとまでは言い切れない。だが、アタリではないような気がした。
でも僕は、こんな時のためにリスクマネージメントをしっかりしている。
そう。生ビールである。
(ゴクゴク、ゴク、ゴク!)
喉を鳴らしながら生ビールを一気に腹に流し込めば、
大抵のものは美味しく感じるようになるのだ。
「ごちそうさまです!」
とにかくお腹は一杯になった。満足である。
僕は店員にも決して引けを取らない張りのある声で、感謝の言葉を告げた。
そして伝票を持って、レジへと向かった。
「はい、え~、ラーメンと生ビールですね、、、」
20歳そこそこのバイト店員君がレジを打つ係だった。
でもなんだか慣れない手付きであった。
「え~、え~、、はい、2000円になります」
(え?違う!そんなはずはないよ!)
僕は雨に濡れた子猫のような視線をバイト店員君に送った。
僕は知っていた。700円と500円で合計1200円であることを。
「あれ?すみません、、、違いますね、、、え~と、、、」
僕の視線をしっかりと受け止めたバイト店員君は、
少し照れたような表情ですぐさまレジを打ち直した。
「え~と、これがこうで、、、、はいOKです、、、え?4000円!?」
(なっ!)
(バ、バカな!インフレか!?)
バイト店員君が改めて叩き出した値段は破格の4000円。
打ち直したはずが、さらなる値段高騰。
まさかの金額に、バイト店員君はすこぶる驚いていた。
だが、その役目は僕である。
(どれがどうなって4000円なんだ!)
(このラーメン屋はボッタクリか!!)
一歩間違えれば、血で血を洗う惨状となっても不思議ではなかった。
だが運が良かった。その時の僕は、すっかり満腹だったのだ。
満腹になって丸みを帯びた腹は、どう転がろうとも立つことはない。
「す、すみません、、、え~と、、、え~と、、、」
バイト店員君は焦りの表情でレジと格闘していた。
だが、このままだと今度は8000円に値上がりしそうである。
「え~、1200円だと思うんやけど…」
満腹の僕は、笑顔のまま口頭での交渉に打って出た。
「はい、そうです、、、そうなんです、、、」
結局、レジ抜きの暗算、という示談の形でなんとか事は収まった。
威勢は良い。味は普通。店員は愉快。
もろもろを総合すると、アタリのラーメンであった。
人は無力じゃない。
「頑張って」という言葉は軽々しい。
必要なのは哀れみではなく、知恵と希望と想像力。
人間にはその力がある。言葉にも、音楽にも。
なんてね。
久々に曲を聴いて震えたので、是非。