入門するかも知れない。
つい、車に乗ってお出かけ。だって、良い天気だったんだもの。
そして大地震以降、給油できずにいたガソリンを手に入れたんだもの。
「ヴァヴォン!ブルルルヴォルン!」
運転席に座ってエンジンキーを回すと、ノート君が元気一杯にしゃべり始めた。
そらフェラーリやらポルシェなんかと比べたら、ちゃっちい車であろう。
そうじゃなくても、他にもっと良い車はたくさんあるだろう。
だが僕は、この愛車、青色のノート君が大好きなのである。
いや、そもそも車なんてものには興味がないのである。
あらゆる話題に付いていくことができるとの自負がある僕だが、
昔から、バイクと車の話にはまったく付いていけなかった。
「750㏄のバイク買ってん!」と自慢されても、「はぁ…」と、ちんぷんかんぷん。
アイルトン・セナは好きだったが、僕の中でのCCは、レモン以外考えられなかった。
なので車の話題をされても、「ほぉ…」とはぐらかすのが精一杯。
でも、車のことを詳しく知らなくても、ノート君の“可愛さ”は分かる。
目がクリっとした何とも愛らしい顔をしているではないか。
そんなことはさておき、僕は気分爽快にノート君を走らせた。
目指すは、高幡不動金剛寺である。
東京都日野市にある、1100年の歴史を持つ言われるお寺である。
目的は、この御方―。日野市といえば、この御仁である。
「歳さん!」
叫んでも、応えてはくれない。
想像していたよりも体も小さく、顔色も青銅っぽかったが、まぁ、想定内。
歳さん像以外にも、境内には立派な本堂や五重塔などがあり、何とも風情豊か。
でも京都の近くで生まれ育った僕としては、何だか物足りないことも確か。
「こじんまりしてるなぁ~、まぁ、こんなもんかぁ…」
だが、しかし!
道路を挟んだ向かいの饅頭屋の休憩所に、一枚の張り紙が!
「きゃーー!」
揺れた。心が揺れた。
そして憧れた。履歴書に書くことに、憧れた。
『第一種普通運転免許』の下に、『天然理心流免許皆伝』と記すことに、憧れた。
少なくとも、車よりは興味がある。
それに、この写真のおじさんになら、今の僕でも勝てそうだ。
創始以来初となる「入門初日で免許皆伝!」なんてことも、あり得ない話ではない。
「ぬぐぐぐぐ…」
「入門したいけど…」
「痛いのかな??」
「お金、とられるのかな??」
とりあえず、まんじゅう買って、たらふく食べた。
入門するかどうかは、じっくり、考える。