Every Day I Love You vol.62 | φ ~ぴろりおのブログ~

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イタズラなKiss&惡作劇之吻の二次小説を書いています。楽しんでいただけると、うれしいです♪ 

大理石のフロア、深紅の絨毯が敷き詰められた階段を上がってメインダイニングに向かう。

「もう何度も来てるけど、入江くんと一緒に来たの初めてだね。うれしい。」

隣りを歩きながら俺を見上げてニッコリ笑う琴子。

「次に一緒に来るのは結婚式かもな。」

「衣装の最終フィッティングに来られないんだったら、そうなっちゃうね。次は結婚式だなんて...嘘みたいだね。」

「そうだな。」

話しているうちにレストランの前に着いた。

予約の名前を告げると、この度はおめでとうございますと笑顔で言われた。反射的にありがとうございますと答える。

二人揃って祝福の言葉を掛けられたのは初めてで、こいつと本当に結婚するんだなとある種の感慨が湧き上がる。

琴子も感激した面持ちでひょこっと頭を下げた。


席に案内されてしばらくすると、食前酒が運ばれて来た。

琴子と視線を合わせグラスを軽く掲げる。琴子も俺と同じようにする。

冷菜、温菜が順に運ばれてくる。前菜の次はスープだ。

「今まで飲んだコンソメスープで一番透き通ってて美味しい。」

琴子が言う通りクリスタルコンソメスープと言うだけあって、本当に綺麗で美味しいスープだった。

メインの魚料理と肉料理はソースも最高に美味かった。途中で出された桃のシャーベットが絶妙だった。

琴子が楽しみにしていたデザートはアメ細工で飾られた小さなフルーツの盛り籠のようだ。

「うーん♪美味しーい。」

ひとくち口に入れては蕩けそうな笑顔を見せる琴子に、こっちまでついつい釣られて頬が緩んでしまう。

深煎りのコーヒーをゆっくり味わってから店を出た。


「本当に美味しかったね。デザートがチョコレートだったらどうしようかと思ったよ。」

「何で?」

「だって、すっごい美味しかったでしょ。私のが余計に不味く感じちゃう。あっ、でも、もうお腹一杯で食べられないよね?」

「いまはちょっと無理...でも、運動すれば食べられるかな?」

「そうだね。じゃあ、駅から歩いて帰る?ワインを醒ますのにもいいかも。」

「そうだな。じゃあ、歩いて帰るか。」

「うん。」

いま気付いた...俺は琴子の子どもみたいな返事が結構好きみたいだ。



「琴子、ほら。手貸せ。暗いから危ないだろ。」

「へへっ。ありがと。」

差し出した手を琴子がギュッと握る。小っちぇー手。なんか可愛いよな...包むように手を繋ぐ。

「お前、もうパスポート申請したのか?」

「うん。ちゃんと間違えないように書いたよ。これでハワイに行けるね。」

斗南祭のクイズ大会で優勝した時の旅行券がそのままになっていた。

これから俺は忙しくなるばかりだ。少し無理をして新婚旅行でハワイへ行くことにした。

「そうだな。あとは壁紙とか決めないといけないんだよな。サンプル見るだけで疲れそうだよな。」

「えーっ。そんなことないよ。楽しいよ。」

「じゃあ、お前が先に幾つかピックアップしといて。その中から二人で選ぼう。ベッドは今度の休みに見に行こう。」


結婚式に待ったを掛けた時から同居は既定だ。それでいいと思っている。

俺はまだ学生の身だし、研修医になったらほとんど家にも帰れない。琴子を一人で置いておくのは心配だし可哀想だ。

まさか現実にそうなるとは思っていなかったが、琴子の部屋は俺たちの未来の寝室を前提にした大学1年の時の増築工事で広くなっていた。少女趣味な部屋に目を瞑りベッドさえ買い換えればいつでも新婚生活はスタートできた。

ここに来て、オフクロが収納が少ないからウォークインクローゼットにして、ついでに浴室も作ろうと言い出した。

医者の勤務は不規則だし、部屋に浴室があれば何かと便利だ。俺は内装工事も一緒にするよう頼んだ。


工事の間、卒業式が終わったら琴子は結婚式までふぐ吉でおじさんと暮らす。

客間で過すこともできたが、工事が決まってすぐに俺が勧めた。

俺が琴子に辛く当たっていた時、少しの間、琴子はふぐ吉で暮らした。

二人が戻ってきた時、俺はおじさんに謝った。

おじさんは思いがけず親子水入らずで過せて楽しかったと言ってくれた。

もう一度、そんな時間を過して欲しい。そう思った。



酔いもすっかり醒めた頃、家に着いた。

「「ただいま。」」

「お帰りなさい。料理どうだった?高砂ではほとんど食べられないから...琴子ちゃん、しっかり食べた?」

「はい。デザートまでペロリと...おばさん、高砂ってどこですか?」

「ばーか。新郎新婦が座る席だよ。」

「そうなんだ。そうだよね。式の間は食べられないよね。お腹鳴ったらどうしよう。」

真剣な顔で心配する琴子が可笑しくて思わず噴出した。

「ぶっ...お前、本当に鳴りそうだよな。」

「もぉ。入江くん、ひどい。笑いごとじゃないよー。」

「琴子ちゃん、大丈夫よ。お色直しの時につまめるものを用意しておくから。」

「ありがとうございます。」


「二人とも疲れたでしょ?早くお風呂に入ってゆっくりしたら。バレンタインだし。」

オフクロがチラリと俺を見て意味深な笑いを浮かべる。

何だよ、まったく...二ヒヒとでも形容したくなるようなあの笑いを見ると萎える。マジ、うぜぇ。

「ああ。そうするよ。だから、ほっといてくれ。」

「はいはい。本当に可愛くないんだから。琴子ちゃん、本当にこんなお兄ちゃんでいいの?」

「入江くんがいいんです。」

「きゃーっ。お兄ちゃん、聞いた?なんて可愛いの。お兄ちゃんは幸せ者ね。大事にしなきゃ罰が当たるわよ。」

「もう、わかったから。俺、風呂入る。」

付き合いきれないとばかりに階段を上がった。

入江くんがいいんです...くうっ。計算じゃないところがグッとくる。マジで速攻風呂入ろう。


~To be continued~