この月・火と和歌山は田辺へ。
5回目。
今回は基礎の配筋検査と、諸々の打ち合わせ。
先日、本屋を物色していて、珍しくまだ買ったことのない三浦哲郎の短編集を発見し、即購入。
往復12時間の今回の旅のお供としました。
念のため、時間が長いのでもう1冊も予備で用意。
いくつかの短編は読んだような気もしつつ、
久しぶりに味わう三浦哲郎の世界。
あまり読み急がず、じっくりと時間をかけて読み進めました。
生前、氏の座右にはモーツアルトの言葉が飾ってあったそう。
「充分に表現するためには、決して表現しすぎない事。
しかもそれでいて、完全に表現すること。
ただし、ごくわずかの言葉で表現すること」
短編小説の名手と謳われた氏は、この言葉に励まされつつ創作活動を続けたようです。
・・・
珠玉の短編小説のような住宅設計ができるようになりたい・・・。
独立以来ずっと心に留めていた理想。
そんな理想を引きずりつつ無用に年だけを重ねてきてしまった自分にとって、
この言葉は、心底にまでジワリと沁み込みました。
少し余白の残るように設計すること
隅々まで計算し尽くすこと
なるべく少ない仕上げ材で設計すること
普段心掛けている言葉の意味が、重なります。
目指してきた方向は少なくとも間違いではないんだなという確信はあるのですが、
うまくいかないときはその確信も大いに揺らぐのです。
でも、そんなときにそっと背中を押してくれる言葉との出会い・・。
やはり、三浦哲郎の世界はいつも何かを自分にもたらしてくれるのです。
思わず本を抱きしめたくなりつつ、その余韻に浸るため結局もう1冊の本は読まずじまい。
ただ、ユラユラと思いを巡らせつつ眺める、車窓を流れる景色がなんだか輝いて見えました。
・・・
良い12時間でした・・・。
さいたま市の設計事務所 創順居アトリエ 直井建築設計室 http://naoi-boo.com