野村望東尼(もとに)の歌
たひらけき道うしなへる世の中を
揺りあらためむ天地(あめつち)のわざ
もののふのやまと心を縒(よ)りあはせ
すゑ一すぢの大縄(おおつな)にせよ
いつも困難な時代には、天は人物を起こす。
幕末の動乱の中で、福岡藩士の寡婦となった野村望東尼もその一人である。多くの和歌を残しているが、そのうちの2首。
望東尼は、今も残る福岡の中心部に近い平尾山荘で、婦人ながら、国事に奔走する志士たちの支援を行なった。平野國臣、高杉晋作たちもかくまわれたことがある。
晩年には嫌疑を受けて、玄界灘に浮かぶ姫島に流罪となるも、長州の志士たちに救出され、山口県三田尻にのがれる。
そこで最後は断食して、維新の大業を祈りつつ生涯を終える。
今は、何不自由ない日本になったが、このような人物がいるだろうか。
同じ国難の時代に、越後の国には良寛さんを支えた貞心尼という人物がいた。活動した場、内容はそれぞれ違うが、日本という国を支える大綱の細い糸であった。
今、まさに大綱が必要な国難であり、それを成す細い糸であることはできるのではないか。
南山 遥