「持ち主が代わり、新たな視線に触れるたび、本は力を得る」
―カルロス・ルイス・サフォン『風の影』(2001)
映画の中に出てくるこのことば、いつも図書館で、ほかの方がまだ読んでいない形跡のある本を開くたびに、
「ついにあなたのことばが人(私だけど)に届くよ」
という思いになります。
本好きにはささることばがいくつも出てくる・・
何人かの方が観て来たとおっしゃって知った、ミニシアター系の映画
をやっと観に行けました。
本屋さん、というか小さな古書店なんですが、これがとてもステキなお店だったんです!
舞台は、「イタリアで最も美しい村」のひとつに数えられる、チヴィテッラ・デル・トロント。
高台にあり、森や畑が見下ろせるこのあたりの建物は、からりと明るいベージュ色の石垣のような石づくりになっています。そして、この古書店は、中の内装も半分くらいこの石がむき出しになっているんです。
とてもおしゃれ!
しかも、小さい一間くらいの間口ですが、そこから陽の光がたっぷり入ってきて、古書店とはいえとても明るいんです。
おまけに、おとなりは、おいしいイタリアのスイーツいっぱいのカフェ!
古書店の店主は、リベロという名前で、人生の晩年に差し掛かっています。
この古書店を訪ねる人たちの、それぞれの理由もおもしろく、店主リベロの、さも本好きで経験をつんだことを表している応対もしゃれています。
「発禁本」のコーナーがあるところから、もしかしたら今は温厚なリベロも、かつては自由をかちとるために燃えていた若者だったかもしれません。
ある日、リベロは店の表に出した、廉価本の箱を熱心に見ている少年を見かけます。
声をかけると、少年は、読みたいけど、お金が無いと言います。
さらに尋ねると、アフリカのブルキナファソ出身のエシエンという名前の少年でした。
「私の名まえはリベロ。イタリア語で自由という意味だよ」
「ヘンな名前」
と少年は言いますが、リベロは、こうしよう、本を1冊貸してあげる。
明日返しにくればいい、と言います。
エシエンは、ミッキーマウスのマンガを借りると、もう歩いているときからページを開き始めます。
1日で読んで返しにくるエシエン。
リベロはエシエンがほんとうに本好きなのがわかり、やがて「マンガは卒業だよ」
と言って、次々と、読みものの本を貸してあげ、読み終わったら、感想を話し合います。
エシエンの目がとてもいいのです。まっすぐで真剣です。
このエシエンに貸してあげた本のリストは、公式サイトや映画パンフレットに載っています。
私たちも知っている本ばかりですよ!
なるほどー、こういう本をこういう順番で貸してあげるのね、とそこもおもしろいです。
また発禁本のリストや、となりのカフェのスイーツについても、映画パンフレットには載っています。
ちょっと地味な表紙・・・
ああ、イタリア語が読めて話せたら、この本屋さんで本を見た後、カフェでスイーツを食べるとどんなにいいでしょう。
ミニシアターで大きい画面で観ると、本当に店内にいるような気持ちになります
「いい時間を過ごせた」と思わせられる映画でした
この映画、もう終了間近で、東京ではアップリンク吉祥寺とシネスイッチ銀座でしか上映されていなかったのですが、実は吉祥寺のもう一つのリアル本屋さんに行きたかったので、アップリンクのほうへ行ってきました。
その本屋さんは、原宿から吉祥寺に移転した、絵本と木のおもちゃとオーガニック食材の店
「クレヨンハウス」
です。移転してからまだ行っていなかったので・・・
アップリンク吉祥寺は、吉祥寺パルコのB2階にあるのですが、そこを出て、東急百貨店の前を通って少し歩いたところに・・・
おおーあったあった!
1階がすぐに、食堂と食材の店になっていました。
原宿店よりは、子どもの本の売り場は少し手狭な感じにはなっていましたが、そこに木のおもちゃあり、グッズあり、もちろん絵本も・・・と、おもちゃ箱のような空間でした
居心地のいい本屋さんがある街はほんとうにしあわせです。
これからもこんな本屋さんが長く存続してほしいなと思います。
できれば、カフェがあるお店で・・・