タイの子どもの本日記

タイの子どもの本日記

タイの絵本や子どもの本、タイの文化などについてぽちぽちと書いていきます。もと日本人会バンコク子ども図書館ボランティア。ご質問などはメッセージにお寄せください。

 

毎年夏に放送される、ABUアジアこどもドラマ、今年も29日から3日間放送されます

タイからは2日目の30日放送やしの木ニコニコ

 

Eテレの番組サイトはこちらです。

 

ABUアジアこどもドラマとは、このサイトによりますと、

 

「ABUアジアこどもドラマシリーズとは、ABU(アジア太平洋放送連合)に参加している放送局が「心の成長」をテーマに子どもを主人公にしたドラマを制作し、交換して放送する国際共同制作プロジェクトです。ドラマを通じて、各地域の生活や文化を紹介し合い、アジアの子どもたち同士の理解を深めることを目的としています」

 

ということです。

今年は、マレーシア、モンゴル、香港、タイ、日本、トルクメニスタンのドラマが放送されます。

タイだけではなく、ほかの国も、ふつうは見られないその国のドラマの一端が観られて、比べてみるとおもしろいですよニコニコ

 

(写真は、シーカーアジア財団のおはなしきゃらばんさんから、使用許可をいただいているものです。

図書館カーが来て、スタッフさんの人形劇を観ているタイの小学校の生徒さんたちです)

 

実家のほうに帰省していたので、まが開いてしまいましたが、前回『ばあさんとじいさん』(こちら) で、タイの代表的絵本作家チーワン・ウィサーサ先生は、

「読んだあとお話で遊ぶ」

ことができる絵本づくりをされているということを書きましたニコニコ

 

その第2弾としての絵本をご紹介します。

 

『はばひろ口のばけもの(ピーサート・パーク・クワーン)』

 

です。

この絵本も国際子ども図書館が所蔵していて、図書館間貸し出しでわが市の中央図書館で取り寄せてもらいました。

 

そしてこのお話もチーワン先生が紙芝居にしてみずから語っている公式動画があります。

 

 

 

このお話は紙を折る遊びと連動しています。

 

絵本の後ろに紙を折ってお話をするやり方が型紙の印刷とともに書いてあります。

そのページのコピーはブログにあげることはできないので、自分で折ってみました。

それにそってご紹介しますね。

 

口がはば広いばけものが、山のほら穴の外に出て来て、下界のともだちと遊ぼうと

大きいふくろを持っておりていきました。

口ぶえを吹きたいと思いましたが、口がはば広いのでつぼめることができません。

 

ここで長方形の紙を用意して、半分に折り、その折り目に向けて両端を三角に折って広げます。

 

 

 

長方形の半分の台形の部分に、はばひろ口のばけものの顔を描きます。

 

 

まず出会ったのはおさるの群れ(紙芝居の動画をごらんください)。

 

ばけものは言いました。

 

「おさるさんたち、大声出し合い競争で遊ぼうよ。

1番大きな声を出したものが勝ち、

負けたものはつかまえられて袋の中。

楽しいぞ、ハ・ハ」

 

サルたちは助け合って大声を出します。

あ!サルはどうやって鳴くのかな?

(紙芝居動画でも、子どもたちに問いかけていますね)

 

でもばけものはもっと大声をひびかせ、サルたちはおどろいて木から落ちてしまいました。

サルをみな袋の中に入れ、ばけものは幸せになって、先へと歩きました。

 

というふうに、子ゾウ、ウサギ、トラの子たちをふくろに入れていきます。

ウサギなどは、鳴けませんよね。

ふくろはたくさんの動物でいっぱいになって、ばけものはそれをひきずって歩きます。

次はこぐまです。

が、絵を見ると、ぎゅうぎゅう詰めのふくろの中から、トラの子が遊びに使っていた木の剣であながあけられていますウインク

 

そこから、そっと、つかまった動物たちが出ていくのも知らず、次に出会ったのは、子キツネたちです。

 

折り紙のほうは、ばけものの顔のところを三角に折ります。

 

 

裏返して見ると・・・

 

 

ここにキツネの顔を描けます。

(後ろの耳のあな部分のために、ばけものの顔を描くときは、はしっこまでしっかり口のりんかくを描いておけばよかったですね)

 

裏側の三角の頂点は、山にするために、木の絵とほらあなを描きます。

折り紙を持って語る場合は、この山から始めます。

 

 

子ぎつねたちは、リーダーきつねに折り紙をおそわっていましたが、リーダーは目のはしに、ばけものが近づいてくるのが見えました。

リーダーぎつねは言いました。

 

「みんな、よく気をつけて、もしぼくが合図を送ったら、助け合ってばけものを始末するんだ」

 

ばけものがやってきて、

 

「大声出し競争を」と言い終わらないうちに、子ぎつねのリーダーは合図を送りました。

 

「いち、に、さん!」

 

子ぎつねはいっせいに折った紙をふりおろします。

 

たちまち起こる大きな音、

 

「ぱん!ぱん!ぱん!ぱん!ぱん!ぱん」ピリピリピリピリ

 

ばけものはびっくりしてふくろを捨てて山に逃げ、ほらあなにかくれて、二度と友だちをからかうことはありませんでした。

 

このとき、折った紙は山のほうを持ってふりおろすと、中の紙が出て来て、

 

ぱん!

 

という大きな音がします。

紙芝居動画では、最後にチーワン先生がじょうずに大きな音を出していますね。

 

絵本では「A4かA3のコピー用紙でなるべく大きいほうがいい」と書いてあったので、最初A4のコピー用紙で折ったのですが、かたくて紙が出て来ずてへぺろ

新聞紙で折ったら音が出ました!

 

そのさまを見ていた夫、

「子どものころよくやったよ」

 

とのこと。

みなさんもやったことがあるかもしれませんね。

そこにうまくばけものやキツネを描くくふうをしたのがチーワン先生ならではです。

この紙を広げたりたたんだり裏返したり、最後にふりおろしながら語ることもできますねニコニコ

 

チーワン先生は学生時代から参加していたポータブルライブラリー活動(くわしくはカテゴリーを作っています)で、いかに子どもたちをお話にひきつけるかという経験から、こういう手法を考えついたそうなので、それを絵本と語る人、読む人にも伝えているのです。

 

 

タイの代表的絵本作家のひとり、チーワン・ウィサーサ先生の絵本、国際子ども図書館が所蔵しているものを数冊、図書館間貸出でわが街の中央図書館で貸し出してもらって、閲覧しました。

チーワン先生の絵本の特徴は「読んだあとお話で遊ぶ」ということをさらに強く感じたもの三冊を順次ご紹介しようと思いますニコニコ

 

まずは『ばあさんとじいさん』

 

この絵本は、2001年に福音館書店月刊絵本「こどものとも」の制作をもとに、タイでも『物語は親友(ニターン・プアンラック)』として、店頭を通さず幼稚園で販売する月刊絵本シリーズを制作することになった第1号です。

初版5000冊、会員価格30バーツだったそうです。

 

もともとは、タイに伝わる民話だそうです。

 

お話は、ばあさんとじいさんが、豆とゴマの種を植えて、孫に見張りをさせて出かけるのだけれど、孫が見張りをさぼったために、カラスに食べられてしまう。

こまった孫が次々にいろいろな人にたのみに行くというものです。

 

ここで、おもしろい文が出てきます。

 

じいさんとばあさんは豆を植えた、ゴマを植えた、 チェット・レット・チェット・タナーン

・・・

カラスが来て豆を食べた、ゴマを食べた、チェット・レット・チェット・タナーン

 

この「チェット・レット・チェット・タナーン」ですが、

เจ็ดเล็ดเจ็ดทะนาน

タナーンทะนาน という単語がわからずに、図書館が所蔵してるタイ日大辞典で調べると、


「米や豆などをはかる升、ココヤシの殻で作られる」

というていねいな説明です。

タイの道具や器って、ココヤシの殻でつくられるものが多いんですよやしの木やしの木やしの木

 

つまり、「7つぶ7ます」というような民話的なことばでしょうか。

 

さて、孫が泣きながら頼みに行くのは

 

漁師   カラスを矢で討ってほしい、で、ことわられ、

ネズミ  猟師の矢弦をかんでくれ、でことわられ、

ネコ  ネズミをかんでくれ、でことわられ、

イヌ  ネコをかんでくれ、でことわられ、

投げ棒 イヌに穴をあけてくれ、でことわられ、

火    投げ棒を燃やしてくれ、で、ことわられ、

水    火を消してくれ、で、ことわられ、

岸    水にかぶさってくれ、で、ことわられ、

ゾウ   岸をふんでくれ、で、ことわられ、

最後にコナジラミに ゾウの目にたかってくれ、

 

で、やっと承知してもらって、今度は逆の順番になって、漁師がやっとカラスを討ってくれ、カラスは豆をはきだした、ゴマをはきだした、

7つぶ7ます、ということになって、孫は帰ってきたばあさんとじいさんに叱られずにすんだ、というものです。

 

で、文で説明するのはつまらないんですが、著作権の関係で中のページはあげられない・・・

と思ったら、

 

チーワン先生みずからが紙芝居で語る動画がありました!

省略してはありますが、中の絵が見られます!

 

 

 

「ねこ」はシャムねこだし、「水」の波はタイのお寺の壁画にあるような描き方ですよね。

そこをお見せしたかったのでよかったです!照れ

でも、「7つぶ7ます」の表現は省略されていました・・・

 

そして、ゾウの目にたかる、コナジラミ・・・ですが、

 

ウィーหวี  って書いてあるんですが、これもタイ日大辞典で見たら、めっちゃくわしく書いてありましたびっくり

 

「半翅目、同翅亜目 腹吻群(カイガラムシ、アブラムシの仲間) コナジラミ科の虫、

世界に約1550種。体調1-2mmで白い粉に包まれている。

柑橘、マメ、ウリ、トマト、タバコなどの害虫。

これがつくとアリがやってきて、下の方はススが降ったように黒くなる。飛ぶときかすかにหวี(ウィー)という音をたてる」

 

・・・・

 

そんなに説明いる?!細かすぎるよ、富田竹二郎あんど赤木攻先生!爆  笑

 

お話はそんな感じですが(ばあさんとじいさんより、孫のほうがほぼ出てくるんだけど・・・)

 

最後にふろくのページがあって、登場するものたちの紙人形描かれて切り抜かれるようになっています。

そして、「ニターン・プアンラック」シリーズのキャラクターのふくろうおばさんが、この絵を切り取って、おとうさんおかあさんといっしょにゲームができますよ、とあとがきに書いてあります。

 

「同じように絵を描く」ゲーム、

 

「孫がカラスをおいはらうのをまねする」ゲーム、

 

「人形を使っておとうさんおかあさんに話してあげる」ゲーム、「学校の先生にイベントにしてもらっても楽しいわね」

 

ということですニコニコ

 

考えてみれば、チーワン先生の絵本には「あとで遊べる」要素が強くて、それは編集の依頼のせいだけではないと思うところがあり、ほかの絵本も読みながら、おいおいご紹介しようと思います。

 

 

先週6月28日に封切られたばかりのタイ映画観て来ましたニコニコ

 

『ふたごのユーとミー』

 

です。公式サイトはこちら。

 

私は新宿ピカデリーに行ってきましたが、とてもきれいなシネコンで、ロビーに大きく『ふたごのユーとミー』のディスプレイがありましたラブ

階段の踊り場にも、大きく。

 

 

物語は、一卵性双生児でうりふたつのユーとミーが主人公です。

ユーとミーのちがいは、ミーにはほくろがあることだけ。

 

 

だから、ユーがほくろを描いて、ミーがほくろをファンデで消して入れ替わっても、だれも気がつきません。

そしてふたりはいつも行動をともにして、一心同体、以心伝心です。

それでも、よく見ると少しふたりの性格が違うことが表情に現れています。

 

ところが、そんな二人が思春期を迎え、両親の不和と離婚危機という、もしかしたらひきさかれて暮らさなければいけない状況におちいります。

母親は今後のことを考えるために、夏休みにふたごを連れて、バンコクからラオスとの国境近くのナコーンパノムの実家に行きます。

そしてそこで、さらにふたごは、別々に行動するべきか考える状況に。

初恋、です。

 

メコン川沿いのどかなナコーンパノムの町で、少年少女たちの青春の始まりがきらきらと描かれ、さらにそれを彩るのが、ほくろのないほうのユーが、ピンというタイの伝統楽器をオープンエアの教室で習う場面です。

ピンの音色と、ピンを教えてくれる初恋の少年。

夏休みのタイ気分にすっかり浸れます~ラブやしの木やしの木 

 

そして驚くことが、この微妙な性格の違いはありつつ、いっしょに笑ったりけんかしたりじゃれあったりのふたごのユーとミーを演じるのが、初演技のティティヤー・ジラーポ―シン(バイポー)という少女一人だということ。

つまり、一人二役なのですびっくり

それは映画の番宣で知っていましたが、実際に見ても、いったいどうやって撮影したのか不思議です!

初恋の少年、マーク役のアントニー・ブィサレー(トニー)さんも初演技だそう。

彼もやさしくて、ハンサム、初恋の相手となるにはぴったりです。

 

タイではドラマも映画も、事前にたっぷりとワークショップが行われるそうなので、この映画にかぎらず、初演技の若手俳優さんたちも高い演技をみせることができるんですねニコニコ

 

そして監督さんが実際の一卵性双生児のワンウェーウとウェ―ウワン(名前ひっくり返しただけ!)のホンウィワット姉妹。

実際に自分たちもユーとミーのようにY2K時代が思春期時代だったそうで、若い監督さんです。

 

キャストや監督さんのインタビューなどが載っているパンフレットはこちらです。

 

ユーとミーはやがては別人格であることを意識していかなければならないでしょうし、それでも「ふたご」という共にある喜びも失うことはないでしょう。

その成長の入り口をさわやかに描いた映画ですラブラブ

 

そして7月5日には話題のタイ映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』もいよいよ公開。

この夏はタイ映画できまり(?)ですね。

 

 

 

 

 

仲間たちと定期的に読書会を開いています。

今回は、

 

『活版印刷三日月堂』

 

川越で、祖父の残した活版印刷所を人の縁で少しずつ復活させていく若い女性の物語です。

この物語は、悪い人が出て来ず、気持ちよくすーっと読める作品照れ

問題提起、ということが無いので、お話が広がるだろうかと思っていましたが、さすがみなさん、毎回ですが、今回もとてもおもしろい会になったので、ぜひブログでシェアしたいと参加者のみなさまにお許しを得ましたニコニコ

 

活版印刷とは、作中の説明を借りると、

 

「むかしの印刷方法ですよ。ほら、いまはコンピューターに入力すれば、そのまま文字が出てくるじゃないですか。

でも、むかしはそんなのなかったから、『活字』っていう小さな一文字ずつのハンコみたいなのを並べて、型に入れてインクをつけて刷ってたんですよ」

 

でも今もその味わいが好きな方もいるそうです。

その活版印刷を現代にどう活かしていくかも、物語とともに描かれていくのも興味深いところです。

 

銅版画と組み合わせると絵入りのものもできますし、そのことも2巻目に描かれています。(全6巻です)

 

そして・・・この『活版印刷三日月堂』の巻末に、

 

「活版印刷の取材に関しては、九ポ堂」の多大なご協力を得た、とありますが、活版印刷のフェアのようなもので、この「九ポ堂」さんの作品を買ってきた方が実際に見せてくれたのです!

 

 

 

なるほど、味わいがある・・・!

 

そして、1冊まるごと活版印刷の本も!

 

 

でも昔は、文学全集も、新聞も、みな人がひとつずつ膨大な量の「活字」を組みこんで版をつくっていたのですね!

たいへんな労力ですびっくり

さらに、かつて校正の仕事をされていたメンバーが、職について初期の初期に、この活版印刷の校正をされたことがあるそうで、ときどき「活字」が横向きになっていたりしたそう。

すぐにオフセット印刷にかわり、活字印刷所を見たことはなかったそうです。

 

そのうえ、バンコクにいたとき、フェアで、なんとトンロー(スクムヴィットSOI55)の「Pianissimo press」という「Letterprint」の工房の作品を買われたということで持ってきてくれた方が。

Letterprintは辞書では「凹版印刷」とありますが、つまり活版印刷のようなものです。

 

 

なんと、このPianissimo pressさんの日本での通販サイトがありました!

作品がこちらで見られます。

 

Instagramもあって、こちらからいろいろな作品や、印刷のようすの動画も見られます。

 

 

通販サイトや、カードの裏のこちらの説明にはこう書いてありました。(少し略して意訳しています)

 

「ピアニッシモとはイタリア語の音楽用語でとてもしずかにという意味です。私たちはスタジオの名前をピアニッシモにしました。しずかな音や声は耳にここちよく、やさしさや謙虚さを伝えてくれます。」

「ぴったりのカードを選んで特別な人に書いて送る、そうすればあなたの手書きのメッセージはくりかえしくりかえし喜びとともに読んでもらえる、それがピアニッシモの表わしたいことです」

 

「私たちはちいさなプリントや紙こものを、ほぼ凹版印刷でつくります。

これはとてもふるい技術で、活字を組みこんだり、鋼板を紙に押し付けたりします」

「この型押し加工によって、ユニークなあじわいの効果が出ます」

「私たちは、手動の機械を使っているので少量しか制作できません」

 

これは、まさに『活版印刷三日月堂』に出てくる「手キン」ですね!ラブ

 

そしてこう結んでいます。

 

「私たちの手作業のカードの上のあなたの手書きのメッセージは、あなたとあなたの愛する人たちにとってたいせつなものになるでしょう」

 

これ、ほぼ『三日月堂』の精神といっしょです!

タイでも日本でも、手仕事の活版印刷の美しさを愛する気持ちが共通だったなんて、ほんとうにサプライズでしたラブラブ

 

なお、このPianissimo pressさんは、店舗はなくて工房だけのようなので、作品はフェアやイベント、通販などで購入できるようです。

 

して作者ほしおさなえさんは、ほかにもいろいろなシリーズ作品を書いていますが、和紙ととものに成長する女性を描いた

『紙屋ふじさき記念館』の第5巻では、日本橋の和紙記念館で働く主人公たちが、なんとこの三日月堂を訪ねていっしょに仕事をする、というコラボレーションがありますよウインク

 

 

ご紹介した本の詳細はこちらをごらんください。