タイの代表的絵本作家のひとり、チーワン・ウィサーサ先生の絵本、国際子ども図書館が所蔵しているものを数冊、図書館間貸出でわが街の中央図書館で貸し出してもらって、閲覧しました。
チーワン先生の絵本の特徴は「読んだあとお話で遊ぶ」ということをさらに強く感じたもの三冊を順次ご紹介しようと思います。
まずは『ばあさんとじいさん』
この絵本は、2001年に福音館書店月刊絵本「こどものとも」の制作をもとに、タイでも『物語は親友(ニターン・プアンラック)』として、店頭を通さず幼稚園で販売する月刊絵本シリーズを制作することになった第1号です。
初版5000冊、会員価格30バーツだったそうです。
もともとは、タイに伝わる民話だそうです。
お話は、ばあさんとじいさんが、豆とゴマの種を植えて、孫に見張りをさせて出かけるのだけれど、孫が見張りをさぼったために、カラスに食べられてしまう。
こまった孫が次々にいろいろな人にたのみに行くというものです。
ここで、おもしろい文が出てきます。
じいさんとばあさんは豆を植えた、ゴマを植えた、 チェット・レット・チェット・タナーン
・・・
カラスが来て豆を食べた、ゴマを食べた、チェット・レット・チェット・タナーン
この「チェット・レット・チェット・タナーン」ですが、
เจ็ดเล็ดเจ็ดทะนาน
タナーンทะนาน という単語がわからずに、図書館が所蔵してるタイ日大辞典で調べると、
「米や豆などをはかる升、ココヤシの殻で作られる」
というていねいな説明です。
タイの道具や器って、ココヤシの殻でつくられるものが多いんですよ
つまり、「7つぶ7ます」というような民話的なことばでしょうか。
さて、孫が泣きながら頼みに行くのは
漁師 カラスを矢で討ってほしい、で、ことわられ、
ネズミ 猟師の矢弦をかんでくれ、でことわられ、
ネコ ネズミをかんでくれ、でことわられ、
イヌ ネコをかんでくれ、でことわられ、
投げ棒 イヌに穴をあけてくれ、でことわられ、
火 投げ棒を燃やしてくれ、で、ことわられ、
水 火を消してくれ、で、ことわられ、
岸 水にかぶさってくれ、で、ことわられ、
ゾウ 岸をふんでくれ、で、ことわられ、
最後にコナジラミに ゾウの目にたかってくれ、
で、やっと承知してもらって、今度は逆の順番になって、漁師がやっとカラスを討ってくれ、カラスは豆をはきだした、ゴマをはきだした、
7つぶ7ます、ということになって、孫は帰ってきたばあさんとじいさんに叱られずにすんだ、というものです。
で、文で説明するのはつまらないんですが、著作権の関係で中のページはあげられない・・・
と思ったら、
チーワン先生みずからが紙芝居で語る動画がありました!
省略してはありますが、中の絵が見られます!
「ねこ」はシャムねこだし、「水」の波はタイのお寺の壁画にあるような描き方ですよね。
そこをお見せしたかったのでよかったです!
でも、「7つぶ7ます」の表現は省略されていました・・・
そして、ゾウの目にたかる、コナジラミ・・・ですが、
ウィーหวี って書いてあるんですが、これもタイ日大辞典で見たら、めっちゃくわしく書いてありました。
「半翅目、同翅亜目 腹吻群(カイガラムシ、アブラムシの仲間) コナジラミ科の虫、
世界に約1550種。体調1-2mmで白い粉に包まれている。
柑橘、マメ、ウリ、トマト、タバコなどの害虫。
これがつくとアリがやってきて、下の方はススが降ったように黒くなる。飛ぶときかすかにหวี(ウィー)という音をたてる」
・・・・
そんなに説明いる?!細かすぎるよ、富田竹二郎あんど赤木攻先生!
お話はそんな感じですが(ばあさんとじいさんより、孫のほうがほぼ出てくるんだけど・・・)
最後にふろくのページがあって、登場するものたちの紙人形描かれて切り抜かれるようになっています。
そして、「ニターン・プアンラック」シリーズのキャラクターのふくろうおばさんが、この絵を切り取って、おとうさんおかあさんといっしょにゲームができますよ、とあとがきに書いてあります。
「同じように絵を描く」ゲーム、
「孫がカラスをおいはらうのをまねする」ゲーム、
「人形を使っておとうさんおかあさんに話してあげる」ゲーム、「学校の先生にイベントにしてもらっても楽しいわね」
ということです
考えてみれば、チーワン先生の絵本には「あとで遊べる」要素が強くて、それは編集の依頼のせいだけではないと思うところがあり、ほかの絵本も読みながら、おいおいご紹介しようと思います。