仲間たちと定期的に読書会を開いています。
今回は、
『活版印刷三日月堂』
川越で、祖父の残した活版印刷所を人の縁で少しずつ復活させていく若い女性の物語です。
この物語は、悪い人が出て来ず、気持ちよくすーっと読める作品
問題提起、ということが無いので、お話が広がるだろうかと思っていましたが、さすがみなさん、毎回ですが、今回もとてもおもしろい会になったので、ぜひブログでシェアしたいと参加者のみなさまにお許しを得ました
活版印刷とは、作中の説明を借りると、
「むかしの印刷方法ですよ。ほら、いまはコンピューターに入力すれば、そのまま文字が出てくるじゃないですか。
でも、むかしはそんなのなかったから、『活字』っていう小さな一文字ずつのハンコみたいなのを並べて、型に入れてインクをつけて刷ってたんですよ」
でも今もその味わいが好きな方もいるそうです。
その活版印刷を現代にどう活かしていくかも、物語とともに描かれていくのも興味深いところです。
銅版画と組み合わせると絵入りのものもできますし、そのことも2巻目に描かれています。(全6巻です)
そして・・・この『活版印刷三日月堂』の巻末に、
「活版印刷の取材に関しては、九ポ堂」の多大なご協力を得た、とありますが、活版印刷のフェアのようなもので、この「九ポ堂」さんの作品を買ってきた方が実際に見せてくれたのです!
なるほど、味わいがある・・・!
そして、1冊まるごと活版印刷の本も!
でも昔は、文学全集も、新聞も、みな人がひとつずつ膨大な量の「活字」を組みこんで版をつくっていたのですね!
たいへんな労力です
さらに、かつて校正の仕事をされていたメンバーが、職について初期の初期に、この活版印刷の校正をされたことがあるそうで、ときどき「活字」が横向きになっていたりしたそう。
すぐにオフセット印刷にかわり、活字印刷所を見たことはなかったそうです。
そのうえ、バンコクにいたとき、フェアで、なんとトンロー(スクムヴィットSOI55)の「Pianissimo press」という「Letterprint」の工房の作品を買われたということで持ってきてくれた方が。
Letterprintは辞書では「凹版印刷」とありますが、つまり活版印刷のようなものです。
なんと、このPianissimo pressさんの日本での通販サイトがありました!
Instagramもあって、こちらからいろいろな作品や、印刷のようすの動画も見られます。
通販サイトや、カードの裏のこちらの説明にはこう書いてありました。(少し略して意訳しています)
「ピアニッシモとはイタリア語の音楽用語でとてもしずかにという意味です。私たちはスタジオの名前をピアニッシモにしました。しずかな音や声は耳にここちよく、やさしさや謙虚さを伝えてくれます。」
「ぴったりのカードを選んで特別な人に書いて送る、そうすればあなたの手書きのメッセージはくりかえしくりかえし喜びとともに読んでもらえる、それがピアニッシモの表わしたいことです」
「私たちはちいさなプリントや紙こものを、ほぼ凹版印刷でつくります。
これはとてもふるい技術で、活字を組みこんだり、鋼板を紙に押し付けたりします」
「この型押し加工によって、ユニークなあじわいの効果が出ます」
「私たちは、手動の機械を使っているので少量しか制作できません」
これは、まさに『活版印刷三日月堂』に出てくる「手キン」ですね!
そしてこう結んでいます。
「私たちの手作業のカードの上のあなたの手書きのメッセージは、あなたとあなたの愛する人たちにとってたいせつなものになるでしょう」
これ、ほぼ『三日月堂』の精神といっしょです!
タイでも日本でも、手仕事の活版印刷の美しさを愛する気持ちが共通だったなんて、ほんとうにサプライズでした
なお、このPianissimo pressさんは、店舗はなくて工房だけのようなので、作品はフェアやイベント、通販などで購入できるようです。
そして作者ほしおさなえさんは、ほかにもいろいろなシリーズ作品を書いていますが、和紙ととものに成長する女性を描いた
『紙屋ふじさき記念館』の第5巻では、日本橋の和紙記念館で働く主人公たちが、なんとこの三日月堂を訪ねていっしょに仕事をする、というコラボレーションがありますよ
ご紹介した本の詳細はこちらをごらんください。