Laz iCONというサバイバル番組を観ていると・・・
あ、サバイバル番組というのは、ボーイズグループデビューをめざして、35人の候補生たちがグループに分かれて歌やダンスで競い合い、視聴者や審査員の投票で勝ち残っていくという形式です。
その競い合いの中で、ドラマの挿入歌で競い合う、というものがあって、そこでタイの古典『クン・チャーン・クン・ペーン』が新しくドラマ化されているというのを知りました
これです。『ワントーン』といって、ヒロインの名まえです。
演じるのは、まもなく公開される歴史ドラマ『The Empress of Ayodhaya』でもヒロインをつとめる、マイ・ダビカさん。
この画像にもあるとおり・・・この『クン・チャーン・クン・ペーン』の物語をざっくり要約すると、美女ピム、後の名をワントーンが、イケメンな戦士だけれど手あたり次第に関係を持つ女たらしのクン・ペーンと、お金持ちでいちずだけれど、ワントーンに執着して汚い手もつかう、「小さいときから頭がはげていて外見のよくない」クン・チャーンの間でとりあいっこされて・・・
最後にはワントーンが、「二人の夫をもった」ということで処刑されてしまう、という悲劇です
もとはアユタヤのスパンブリー地方の伝説を、ラーマ2世が、自分もふくめ、たくさんの文人を集めて文学形式にしたものだそうです。その中には詩聖とうたわれた、スーントンプーも入っていました。
この物語はタイなら『源氏物語』のように有名な古典だそうですが、クン・チャーンの外見は特にはずせないもののようで・・・
(現代ならルッキズムとかで問題になりそう)
本の表紙でも、
とか、
とか・・・
そしてこの物語は、タイ古典ですから、韻文なのですが、セーパーという珍しい形式だそうで、クラップと呼ばれる拍子木とともに詠唱されるそうなのです。
拍子木とともに・・・というので、歌舞伎のつけうちのようなものを想像してたら、大ちがいでした!
動画を見つけたのですが、
学生さんに向けて、拍子木の鳴らし方と、『クン・チャーン・クン・ペーン』の実際の詠唱を最後に見せてくれます。
で、この動画の7分あたりくらいをごらんになってください!
日本の拍子木を片手に持って、それで細かいトレモロというかコオロギの鳴くような音を奏でるのです!
この技、どうなってるの?!
さてそれで、『クン・チャーン・クン・ペーン』について調べてみると、『ラスト・ウォリヤー』という映画がヒットしました。
待ってこの映画のDVD・・・以前、タイ映画のDVDがあるのを知って、まとめて買った中にあったような・・・
戦争ものが苦手なので、観てなかったけど、まさか『クン・チャーン・クン・ペーン』の映画だったとは!
よく見ると、原題が『クン・ペーン』となってました!
2002年の1時間半の映画です。さっそく観ました。
画面がまだワイドになっていません。
タイではヒットしたそうですが、お話は、もうみんな知っているでしょ、とばかりに短いカットにつぐカットを重ねたものです。
クン・チャーンはあばれる君を思わせる、愛嬌のある俳優さんです・・・
女好きのクン・ペーンのぬれ場多し!
この中で、タイ文化的に目にとまったところがありました!
クン・ペーンは僧侶になっていたとき、タイでは有名な「大生経説法会」が開催されます。
これは「マハ―・ウェートサンドーン・チャードック(本生経)」を声自慢の人たちが交代で一晩がかりで詠唱し、それをみなが聴いて楽しむという行事です。
クン・ペーンはその一番いい部分をまかされ、それを詠唱する場面が一瞬出てきます。
なるほどー、こういうふしまわしか!
その後、クン・ペーンはワントーンを妻にするためにクン・チャーンの策略で、財産を奪われ追放されます。
そこで、クン・ペーンは僧侶のもとで魔術を学びます。
その呪文が書きつけてあるもの、「コーイの木」から作った「コーイ・ブック」ではないでしょうか?
さらに、クン・ペーンが「胎児からつくるお守り」クマントーンを作る場面があります。
(かなり残酷!)
そしてこのクマントーンが活躍する場面も見られます。
クマントーンについては、Singtoさんが出てくるドラマ「とな墓」でもことばが出てきます。
以前このブログのこちら(『とな墓』『2gether』で知った「このタイ語生きてた!」)でご紹介しています。
そして、クン・ペーンがクン・チャーンを殺そうとしたとき、ヤモリが「ちっちっちっ」と鳴く声が聞こえて、殺すのを思いとどまる、というシーンもおもしろく思いました。
『クン・チャーン・クン・ペーン』は抄訳が、『タイ古典文学名作選』に載っています。
また、タイ文学の宇戸清治先生による『アジア理解講座 タイ文学を味わう』によると、この文学には大きな特徴があって、
それまでのタイ文学は王様や貴族を描いたものだったけれど、地方官僚という「平民」の物語になっている。
アユタヤ時代からバンコク時代初期にかけての、タイの風俗習慣、民間信仰、社会通念、言語学などなどの貴重な資料の宝庫になっている、
などがあるそうです。
それでは最後にLaz iCONの中から、その『クン・チャーン・クン・ペーン』のドラマ『ワントーン』の挿入歌を歌う動画をあげておきます。
題名はソーン・ジャイ、二つの心、という意味で、イケメンで大好きだけれど、女たらしのクン・ペーンと、好きではなかったけれど、自分だけを愛してくれて何不自由ない生活をさせてくれるので情がわきつつあったクン・チャーン、そのどちらかを選べなかったばかりに処刑されたワントーンの心を表しています。
アユタヤ時代もの、『ワントーン』のマイ・ダビカさん演じる『The Empress of Ayodhaya』のトレイラーもご参考までに(日本語字幕あり)