デイヴィッド・ウィーズナーさん講演会行ってきました。 | タイの子どもの本日記

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タイの絵本や子どもの本、タイの文化などについてぽちぽちと書いていきます。もと日本人会バンコク子ども図書館ボランティア。ご質問などはメッセージにお寄せください。


タイの子どもの本




「子どもの本の日フェスティバル」の行事の一環として、これまでに3回もアメリカの権威ある賞コールデコット賞を受賞している絵本作家デイヴィッド・ウィーズナーさん、その不思議な絵本世界にはファンも多く私のその一人ですが、なんと来日講演会とサイン会があるそうで、急いで応募して行ってきました。


客席には、お子さん連れや若いお嬢さんや男性の方々、そして欧米の方もちらほら!
ウィーズナーさんの人気が感じられました。


そしてウィーズナーさん登場!
細身でステキなナイスミドルです!


それから、パソコンの画像をふんだんに使って、創作の秘密を次々に語ってくださいました。

ウィーズナーさんの絵本世界は不思議な世界ですが、どこからインスピレーションを得るのかよく質問されるそうです。
ウィーズナーさんは、チャック・クロスという画家のことばを引用して答えました。
「インスピレーションはしろうとのもの。ぼくたちは仕事に生き仕事をする。インスピレーションが来るのを待っていたらアートはつくれない」
ウィーズナーさん自身も、仕事をする、つまり「絵を描く」プロセスの中で、頭の中のものが出会ってアイディアがうかぶ、それをA-haの瞬間、と呼んでいるそうです。


『かようびのよる

では、最初、『クリケット』という少年雑誌の表紙を頼まれて、自由な題材で、と言われたのですが、カエル特集号だというので、いろいろなカエルを描いていたとき、水連の葉に浮かぶカエルを描いたとき、ひらめいたのです。
まるで、フライング・ソーサー(空飛ぶ円盤)にそっくりだと。

何かに乗って空を飛ぶ、というのは実は自分にとっては重要なモチーフと。

そこで、もっとカエルのことを描いてみたくなって、絵本を作ることにした。


そこで絵本を作る過程を、画像を見せながら話してくれました。

まずは、えんぴつで下書き。
それから、ラフといわれる、絵本としての下書き。
ここで、カエルのことを本格的に調べます。
ほかの絵を描くときもそうだけれど、写真を見たり、骨格の標本を見たりするそうで、また本物を机に置くわけにもいかなので、ねんどで模型を作り、光りをあてて、どこに影ができるか見るそうです。
模型は必ず作るそうです。

そのえんぴつのラフや、ねんど模型すらもうすでにすんごい上手なんです!


それから、テレビを観ながら寝ている人などくわしい情報を考えて描いていきます。
たとえば、最終的に老婦人になったけれど、その老婦人の人生を語るもので部屋を満たします。

そうやって最後に色を塗ると。


ウィーズナーさんは5人きょうだいの末っ子で、兄姉がアートの才能があって、家に油絵、パステル、水彩画など、画材道具は全部そろっていたそうです。

そして、子どものころからの絵を親が全部とっていてくれて、お父さんが、絵に描いた日付を書きなさいと言ってくれたおかげで、いつ自分が描いたのかよくわかって助かっているそう。

5-6才のころの絵というのを画像で見せてくれましたが、本人いわく、このころの絵はほかの5-6才児とまったくかわらない。
ほかの子どもはだんだん大きくなると自意識が出てきて自分はへただと思ったり、絵から離れていってしまうけれど、自分は離れずに描いただけだ、と。


いやーーー!それだけでないやっぱり才能ってありますよーーー。


11才のころ油絵を描くとともに、コミックスに出会い、「絵でお話が語れる」という手法をとてもおもしろく思った、そこで自分でもコミックスを描いたりした。
それとともに、ルネサンス絵画、ピーター・ブリューゲルの風景画、そしてダリなどのシュルレアリズムもおもしろいと思い、図書館で美術書をながめていたそうです。

当時の絵で、巨大なコインに乗って空を飛ぶ冷蔵庫の絵というのがあって(画像出してくれました)このころから、飛ばしていたと。


ことばのない本として、リンド・ウォードの『MAD MAN'S DREAM』という、版画で大人向けのことばのない本を見て、絵だけで物語を語れることを知り、自分もやってみたいと思い、絵本はぴったりだと思った。

ことばのない絵本には、レイモンド・ブリッグス、ピーター・スピア、ショーン・タン、ピーター・シス、そして安野光雅さんなどがいる。


ここで、自作の

『フリーフォール』、『漂流物 』、『セクター7 』の、下書き、ラフ、創作過程などを語ってくれました。



タイの子どもの本

『漂流物』までは、水彩画で描いていたそうです。


水彩画であのように美しい絵が描けるなんて・・・!やっぱりすごいなぁと思いました。


で、そこから今度は、いろいろな手法が使ってみたくなって、家にあったテンペラで描いているうちに、テンペラは時間がたつとひびが入ることを思い出し・・・

もしひびが入ってはがれおちても、その下に絵があったら・・・A-ha!キター!


ということで生まれたのが、

『アートとマックス―ゴキゲンなゲイジュツ―』 だそうです。



タイの子どもの本

話全体をお聴きして感じたことは、不思議な世界を描きながらも、ウィーズナーさんは、「子どものため」に描いているのだということがわかってきました。


ウィーズナーさんの字の無い絵本を見て、子どもたちからいろいろな反応や創作の手紙をもらうのがうれしいことや、(図書館の先生などが送ってくれる)、絵を見て子どもが笑ってくれるのがうれしい、というしめのことばなど。

ウィーズナーさんは、ご自身が絵を描くのがたまらなく好きな方であり、そして、ご自分の絵で子どもたちに喜んでもらうことに幸せを感じられる方なのでした。


そして、「絵で語らせる」ということにされていると伺って、ウィーズナーさんの絵本はすみずみまで表情や動作などおもしろく「読める」絵本であることにあらためて得心しました。


そして、講演会が終わったら、サイン会です!
私も絵本にサインしていただいて、
「アイム・ベリー・ハッピー」
と申し上げたら、ウィーズナーさんのほうから手を出して握手してくださいました。


(ただいまブログのお引越しをしている最中です。この記事は、ココログに描いたものをお引越し先にするこちらのアメブロに転載したものです)