平成26年度司法試験短答式試験(刑法)分析 | 司法試験ブログ・予備試験ブログ|工藤北斗の業務日誌

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資格試験予備校アガルートアカデミーで司法試験・予備試験の講師をしている工藤北斗のブログです。司法試験・予備試験・法科大学院入試に関する情報を発信しています。時々弁理士試験・行政書士試験についても書いています。

◎ 入門講座レベルの知識や簡単な現場思考で正解できる優しい問題
○ 入門講座レベルの知識と短答頻出の知識,及び現場思考で正解できる比較的優しい問題 
△ 比較的細かい知識や判断に迷う肢が含まれている正解しにくい問題 
× 細かすぎる知識や判断不能の肢が含まれている正解できなくても良い問題 

※ 「入門レベルの知識」とは,リニューアルする新入門講座(仮称)及び新3倍速インプット講座(仮称)を基準としています
※ 「短答頻出の知識」とは,新規開講の短答インプット完成講座(仮称)で扱っている知識を基準としています

第1問 △ 肢1を確実に切ることはかなり難しい。累犯の増加→再犯可能性を中心とする考え方へ,という論理を思いつけなくもないが。
第2問 ◎ すべて入門レベルの知識。
第3問 ◎ ア~エは入門レベルの知識。アは単純なひっかけ肢としてよくあるパターン(他にも,必要的か任意的かを問うひっかけ)。オは短答用の知識としてはぜひ知っておきたい。
第4問 ◎ 入門レベルの判例を素材とする問題。判例知識があればすぐに正解が導けるが,知らなくとも判旨を読めば国語力で正解が出せる。
第5問 ◎ 超易問。瞬殺して時間を稼ぎたい。
第6問 × 肢1肢4の前半は短答用の知識としてはメジャーなもの。ただ,他の肢が細かい。考えて解けるような問題でもない。捨て問。
第7問 ◎ 入門レベルの知識と現場思考で十分に正解が導ける。肢5が択一的競合と似て非なる事案であることが分からなくとも,消去法で正解が出せる。
第8問 ○ 肢1肢2肢4は入門レベルの知識。肢4が正しいことから直接正解が導けるから◎でも良いが,肢3肢5が細かいことから○とした。
第9問 ◎ 論文チックな問題。肢5の裁判例は知らないだろうが,消去法で正解が導けるし,論文的な思考で考えれば分かる。
第10問 ◎ 入門レベルの知識で処理できる簡単な論理問題。
第11問 ◎ 肢2以外は全て入門レベルの知識。肢2は短答用の知識としてはぜひ知っておきたい。
第12問 △ 肢4から直接正解が導けるが,肢1肢3は誤りに気が付きにくく,肢2肢5は知識が細かい。
第13問 ◎ 入門レベルの知識で処理できる簡単な論理問題。
第14問 ◎ すべて入門レベルの知識。
第15問 ○ 簡単なパズル問題。こういったタイプの問題では,各見解の特徴をザックリと掴むことと,事例についての争いの無い結論を考えることがポイント。それで答えが出ない場合に,初めて見解の細部を検討する。
第16問 ◎ 入門レベルの知識で処理できる簡単な論理問題。
第17問 ◎ 超簡単なパズル問題。
こういったタイプの問題では,埋められる空欄から埋めていく(経験則上,最初の方の空欄はすぐには埋まらない),その際には特徴的なフレーズを探す…のが王道(例えば,旧司での問題であれば,学生Yの採る立場は分からず,教授Xの最後の発言からYの見解を推測させるはず)だが,この問題では①から空欄が埋まる(笑)しかも,③まで入れれば正解が導ける。
第18問 ○ 肢4はやや細かいが,残りの肢はすべて入門レベルの知識。ただ,肢2肢3は慎重に読まないと引っかかるかも。◎でもいいか。
第19問 ◎ 超易問。瞬殺して時間を稼ぎたい。
第20問 ○ 論文チックな問題。各構成要件への簡単なあてはめが問われているだけだが,肢5が若干迷う。不法原因給付と横領に関して,昭和45年の民事判例の登場によって,判例法理が流動化していることを知っていると,横領罪は成立しないのでは?と勘ぐってしまう。とはいえ,「甲に財産上の損害を与えていない」という理由付けがおかしいので,誤りだと判断できる。◎でもいいか。

今年は,刑事系の肢切りが多かったようですが,刑訴はともかく,刑法はこのように見てくると,入門レベルの知識さえ完璧にしておけば,7~8割は得点できた問題でした。
どの問題のどの部分でつまづいたのかをしっかり分析しないまま,闇雲に知識ばかり増やしてみても,大幅な得点アップは望めません。知識が足りていなかったのか,それとも論理的な思考力(論文的な思考力)が足りていなかったのか,時間管理が甘かったのか…色々な原因が考えられますので,刑法の得点が低かった人は,まずはその原因探しから始めてみて下さい。

ちなみに,今年出題されたパズル問題は,正直言って旧司の超簡単なレベルの問題と同レベルのものです(第17問目などは,パズル問題ですらないかもしれません)。来年は問題のレベルが上がることも考えられますので,第15問目辺りで手こずった人は,パズル対策をしておいてください。

※ 民法の残りの問題もそのうち解説します。短答インプット講座(仮称)のテキスト作りで民法ばかりやっていて飽きたので,刑法を先にアップしました。