お若いの。「日本を愛しているか」なんて無造作に聞くんじゃないよ。日本という国は長い歴史を背負っているんだ。私が経験した年月だけだって、その間には本当にいろいろなことがあったんだ。幸い戦争らしい戦争はしていないが、海外派兵だってあった。日本は私の国だ。愛すべき点もたくさんあるけれど、反省すべき点もたくさんある。いろいろな国の人たちが日本をいろいろな感慨をもって見つめているのも知っている。そんな簡単に「私は日本を愛しています」なんて軽々しく答えられるものではないのだよ。

自由民主党の憲法草案の問題点の主なものを3点だけ挙げます。

現行憲法の「主権在民」に対し、改定草案では

■ 天皇元首明記(草案第1条)

「天皇は、日本国の元首であり…」としています。一方、現行憲法では天皇は「日本国及び日本国民統合の象徴」(第1条)であり、「元首」という語は使われていません。

「基本的人権」に関しては

■ 97条(基本的人権の不可侵性)を削除しています。

現行憲法97条:「基本的人権は…侵すことのできない永久の権利」

草案ではこの条文が削除されています。

さらに草案12条:

「自由及び権利は責任及び義務を伴う」

となっていて、基本的人権が天与のものであることを否定しています。国民の責任と義務は別個に規定すべきものです。

「平和主義」について、

■ 9条改正(国防軍の創設)

草案第9条の2:

「国防軍を保持する」

現行9条は:

「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」

と明記しています。

これは「戦力不保持」から「軍保持」への明確な転換です。

他にもたくさんあるけれど、この3点だけでも、自民党の憲法草案には賛成しかねます。

今回の衆院選でも見られたのですが、どうも、最近の若い人のものの捉え方が、われわれ旧世代と大きく変わっているように思います。

1. バブル崩壊後の「失われた20年」

理想を語ることへの疲弊感を感じる

「現実的であること」が重視されるようになった

「どうせ変わらない」という諦念が出てきた

2. 2000年代以降の新自由主義的(小泉=竹中)価値観の浸透

「自己責任」論の台頭(菅義偉元首相)

競争社会での「勝ち組・負け組」という発想

権力批判より「いかに自分が得するか」への関心のシフト

3. SNS時代の到来(2010年代)

多少でも知的なことを言うと、「意識高い系」「正義マン」などと揶揄する風潮

社会批判や理想を語ることへの冷笑的な態度

「炎上」を恐れて当たり障りのないことしか言わない風潮

4. 経済格差の拡大と余裕のなさ

生活防衛で精一杯の人が増えた

権力批判する「余裕」がない。また内的な必然性もない。それどころではない。

目の前の利益を確保することが最優先になってきた

5. 「リア充」「勝ち組」文化

権力や強者に近い方が「賢い」という価値観

批判する人を「ルサンチマン」(負の感情)「負け犬の遠吠え」と見る視線

でも、本当にそれが「クール」(かっこいいこと)なのか?

最近の変化の兆し

ただ、2020年代に入って、また少し空気が変わってきた気もします:

• ジェンダー問題、環境問題などで声を上げる若い世代が出てきた

• ブラック企業、ハラスメントへの批判の高まりが感じられる

• MeTooなどの社会運動

「権力批判はダサい」という空気は、一時期確かに強かったけれど、それは本質的な価値観の変化というより、社会的な閉塞感や疲弊感の反映だったのかもしれません。

そして今、「やっぱりおかしいことはおかしいと言おう」という流れが、少しずつでも戻ってきているのだといいのですが。

2025年の読書メーター
読んだ本の数:55
読んだページ数:15222
ナイス数:321

魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)感想
再読、再々読に値する、珠玉のエッセイ集である。(第二次大戦終結前後のソ連の日ソ中立条約違反に関しては私の立場とは違うが)解説を書いている「師匠」の徳永氏とのエピソードが一番面白いが。
読了日:01月07日 著者:米原 万里
藤富保男詩集 (1973年) (現代詩文庫〈57〉)藤富保男詩集 (1973年) (現代詩文庫〈57〉)感想
前から気になっている詩人であるので、この際じっくり読んでみようと思って取り組んでみたが、やっぱりわからないし、面白いとも思えない。漢字に関する考察なんかは面白いし、共感できるところもあるのだけれど。確かに「為」という字は形が悪い。
読了日:01月08日 著者:
こちらあみ子 (ちくま文庫)こちらあみ子 (ちくま文庫)感想
映画「花束みたいな恋をした」で、主人公たちが推してくるので、読んでみた。映画の中では「今村夏子の『ピクニック』を読んでもなんとも思わないような人なんだよ」という形で引き合いに出されるが、正直なところわたしも「なんとも思わないような人」かもしれないと思う。というか、この世界には近づかないようにしたいと思う側の人間かもしれない。ピーナッツを投げて食べさせるという表現が出てくるが、食べ物を粗末にしてはいけないと言われて育っているのでね。
読了日:01月21日 著者:今村 夏子
かかとを失くして 三人関係 文字移植 (講談社文芸文庫 たAC 3)かかとを失くして 三人関係 文字移植 (講談社文芸文庫 たAC 3)感想
久しぶりに途中脱落。わからないといえばわからないし、読んでいると自分の立脚しているものがぐらぐらしてくる…という効果を狙っているのだろうし、それには成功しているのかもしれないが、私の求める読書体験とはあきらかにことなる。このグラグラ感は今村夏子さんの「こちらあみ子」にも感じた。円城塔や伊藤計劃あたりから現代文学からは落ちかけていると思っていたが、わたくしすっかり落ちてしまいました。おとなしく福家警部補でもよんでおこう。
読了日:01月24日 著者:多和田 葉子
人さまの迷惑 (講談社文庫)人さまの迷惑 (講談社文庫)感想
出久根さんの淡々としたエッセイ集である。直木賞受賞の顛末がいくつか書かれていて興味深い。百閒先生あたりとはまた違った飄々とした風情が心地よい。
読了日:01月27日 著者:出久根達郎
あひる (角川文庫)あひる (角川文庫)感想
ふしぎな小説群である。「こちらあみ子」ほど、ひりひりと心をやすりで削られるような感覚はないけれど、しかし、不安な小説である。不安としか表現がしにくい読後感で、これは芥川賞はとるだろうけれど、毎日読みたい小説ではない。
読了日:01月27日 著者:今村 夏子
父と私の桜尾通り商店街 (角川文庫)父と私の桜尾通り商店街 (角川文庫)感想
相変わらず「嫌な話」を書いているのだが、スタートの「こちらあみ子」のヒリヒリ加減に比べれば、かなりマイルドになったように思う。表題作なんかは、世の「前向きになれる物語」と見まごうばかりである。いいのかな、こんなことで。とか思っているうちに他も読まされてしまうのだろう。
読了日:02月02日 著者:今村 夏子
ドキュメント 異次元緩和 10年間の全記録 (岩波新書)ドキュメント 異次元緩和 10年間の全記録 (岩波新書)感想
金融政策だけで経済がなんとかなるというのが思い上がりだと思いますね。財政出動、それも電通やパソナに多額の中抜きをさせてしまうような大雑把な仕事ではなく、ハンズオンでひとつひとつの案件が実需を生んで、受益者が確保でき、経済にプラスのインパクトを与えるものを汗をかいてやらなければだめだ。「異次元緩和」というのはそれを立証する壮大な無駄であり、人体実験だ。株価が上がったとかいうが、日本の経済がシュリンクしているのは明らかである。
読了日:02月23日 著者:西野 智彦
「常識」の落とし穴 (文春文庫)「常識」の落とし穴 (文春文庫)感想
1989年出版の本で、いまさら読み返してもと思ったのだが、これが2025年時点で振り返って読んでみると面白い。日本の凋落を的確に予言しているし、当時考えたこととその後の展開を知っているだけに興味はつきない。アメリカの二本半可通をやっつける話などは痛快だが、これもブーメランで、我々の西洋理解への批判にもなり得るだろうし、日本の新聞がいかにあてにならないかということにもなる。といって、SNSには虚偽があふれているのだが。
読了日:02月26日 著者:山本 七平
不時着する流星たち (角川文庫)不時着する流星たち (角川文庫)感想
読み始めるとつい最後まで読んでしまうのだが、なにか感想を書きたいと思っても非常にあいまいで不確かな感触しか残っておらず途方に暮れる…というのが小川洋子作品である。
読了日:02月27日 著者:小川 洋子
クジラアタマの王様 (新潮文庫)クジラアタマの王様 (新潮文庫)感想
冒頭、お菓子への異物混入のくだりは大変面白かったのだが、中盤以降いまひとつ。ファンタジーが絡んでくるのはいいのだが、それならそれなりになんらかのスジが通っていないと物語として面白くないと思う。
読了日:03月18日 著者:伊坂 幸太郎
クジラアタマの王様クジラアタマの王様感想
最初の部分の「異物混入かもしれない」事件のくだりは大変面白かったのだが、中盤から降盤にかけて今一つ。ファンタジーになるのはいいんだけど、ファンタジーとしても何かスジが通ってないと面白くないんだよね。そういう意味では私としてはあまり納得のいくものがない。
読了日:03月20日 著者:伊坂 幸太郎
まぐさ桶の犬 (文春文庫 わ 10-7)まぐさ桶の犬 (文春文庫 わ 10-7)感想
葉村晶シリーズはファンなんだけど、この小説は私の頭には登場人物多すぎ、関係複雑すぎ、でした。
読了日:03月25日 著者:若竹 七海
新方丈記 (福武文庫 う 115)新方丈記 (福武文庫 う 115)感想
太平洋戦争下、東京大空襲を体験された百閒先生の日記からの抜粋編集された「新方丈記」である。昭和20年の8月8日の記述ののち、次の記述は8月17日にとんでいる。おそらく意図的に15日の敗戦日を避けたものとしか思えない。大空襲の恐ろしさとともにそれを見届けてやろうという百閒先生の覚悟が伝わってくる。
読了日:03月29日 著者:内田 百けん
アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫)アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫)感想
伊坂幸太郎さんが書く恋愛ものは今一つという人もいるけれど、私は結構面白く読みました。(Audibleだから聞きましただけど)
読了日:04月08日 著者:伊坂幸太郎
死神の精度 (文春文庫)死神の精度 (文春文庫)感想
ロックでもクラシックでも聞くのが好きだという点では私は死神によく似ている。
読了日:04月16日 著者:伊坂 幸太郎
あたりまえの研究 (文春文庫 や 9-4)あたりまえの研究 (文春文庫 や 9-4)感想
1980年の本だが今読んでも、というより今読むと大変面白い。日本の当たり前と中東の当たり前はどう違うのか。就中、曽野綾子さんの中東における「うめぼし」の逸話が秀逸である。その後、商の話まで「当たり前」の研究は進んでいく。山本七平さんは原子力推進派であったと思われるが、彼が311を経験されたらどのようなことを言ったか、残念ながら聞くことはできなかった。
読了日:04月17日 著者:山本 七平
まぐさ桶の犬 葉村晶シリーズ (文春文庫)まぐさ桶の犬 葉村晶シリーズ (文春文庫)感想
二回読んでやっと全体の構成がやや把握できた。長編だからとはいえ、あまりに複雑すぎないか。というか、絡み合うサイドストーリーが複雑なのだ。特に最後の方になって新しい何でも知っている登場人物を出して伏線回収を簡単にするというのはいかがなものか。ストーリーとしてはよくできているものの、読み手としては生煮え感がぬぐえない。それと、このシリーズの売りである軽快なテンポが複雑なストーリーに邪魔されている感じがある。三回出てくる「は?」はよかったけどねぇ。ちょっと重苦しい感じが残った。
読了日:04月27日 著者:若竹 七海
死神の浮力 (文春文庫 い 70-4)死神の浮力 (文春文庫 い 70-4)感想
音楽を聴いてさえいれば機嫌のよい死神に非常に共感する。
読了日:04月30日 著者:伊坂 幸太郎
禁忌の子禁忌の子感想
冒頭ショッキングな開始から、最後まで読まされてしまった印象。大変よく書けていると思う。医療倫理の問題に踏み込んでおり、賛否両論あるだろうが、ここまで描き込んだ力量はすごいと思う。途中のカラフルな名前の多くの登場人物のアリバイを検証していくくだりは申し訳ないが面倒なので読み飛ばしました。鮎川賞の選考委員がきちんと検証してくれていることを信じる。っつーかあの部分必要だろうか。
読了日:05月02日 著者:山口 未桜
生きる言葉 (新潮新書 1083)生きる言葉 (新潮新書 1083)感想
はじめの方は息子さんの自慢話に終始するのではないかと心配したがその後は興味深い「言葉」と「短歌」の軽快なエッセイ集であった。俳句だと十七文字に如何に無駄なく詰め込むかとなるが、三十一文字だと言葉の濃度がちょうどよくないといけないとのこと。大変勉強になりました。といって、短歌を作ろうという気力はない。短歌は消費させていただき、いつの日か担架にのせられて啖呵をきる力もなく炭化するのみ。
読了日:05月07日 著者:俵 万智
80年代音楽解体新書 (フィギュール彩 Ⅱ 1)80年代音楽解体新書 (フィギュール彩 Ⅱ 1)感想
スージーさんは私より10歳ほど年下なので、微妙に音楽の守備範囲は異なるのだが、私は後年になってから80年代ベストヒットとかのCDを聞いたりしているので、驚くべきことに(というかほとんど当たり前なのだが)ここで取り上げられている曲のほとんどを我がiTunesコレクションに持っているのであった。時に、この本では触れられていないが、ポップスの黄金の進行IV度へのII-V(vm7-I7-IV)についてスージーさんはどこかで触れておられるだろうか。
読了日:05月14日 著者:スージー鈴木
透明カメレオン (角川文庫)透明カメレオン (角川文庫)感想
どうもストーリーに無理が感じられて、あまり共感できない。がんばって書いておられるのはわかるのですが。
読了日:05月23日 著者:道尾 秀介
大阪ことばの謎 (SB新書 691)大阪ことばの謎 (SB新書 691)感想
大変わかりやすい、「大阪ことば」解剖の書である。万葉集からインターネットスラングまでを網羅して、「大阪ことば」の来歴・性格・影響を全国規模で縦覧するという大技。感服するしかない。時に「なお中野氏は一九〇三年生まれの愛媛県松山市出身で、旧制第三高等学校(京都)卒業後、東京帝国大学で学んでいる。松山氏の方言は」の部分は「松山氏」でいいのか。
読了日:05月24日 著者:金水敏
弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる~OSAKA MOTHER’S SON 1980 ~弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる~OSAKA MOTHER’S SON 1980 ~感想
面白かった。見も知らぬ1970年代の東大阪を走り抜けたような気がする。描写が実体験に基づいているからであろう、非常に鮮烈でかつ地に足がついている感覚がある。しかし、よく中学時代のことを覚えておられますね。私なんぞ中学校のころのことなんか、なにも覚えていない。
読了日:06月17日 著者:スージー鈴木
カフネカフネ感想
世の中どんどん変わっていきますな。憲法も民法も民事訴訟法も時代遅れだねぇ。
読了日:06月23日 著者:阿部 暁子
存亡の条件存亡の条件感想
3,4回読んでる。面白いこともあるが、難しいところもある。むかし「べ平連」ってあったよね、あれが山本さんのいう「知識人党」によく似たもので、北ベトナムの人たちという被害者に「寄りそって」自分たちも同じスタンスを強調するが、全く被害は受けていないという。まあ、一部兵役拒否の米兵を匿うとかほそぼそしたことはあったようだけれどね、似たような事象を平成でも令和でもみるように思う。悪だとはいっていないが欺瞞なのだ。
読了日:06月25日 著者:山本 七平
ミス・パーフェクトが行く! (幻冬舎文庫 よ 27-3)ミス・パーフェクトが行く! (幻冬舎文庫 よ 27-3)感想
私のような素人を騙せる程度には地に着いた(と思わせる)議論で問題解決が図られるので、内容は地味だがそこそこ面白い。
読了日:07月01日 著者:横関 大
村上ラヂオ (新潮文庫)村上ラヂオ (新潮文庫)感想
何度か読み返しているが、そのたび内容は頭の中を過ぎてゆき、また読むことになるが、そのたびどことなくここちよい。連載の回によって重い軽いはあるけれど。
読了日:07月05日 著者:村上 春樹
ババヤガの夜 (河出文庫)ババヤガの夜 (河出文庫)感想
とにかく暴力、という小説だが、喧嘩に長けた女のキャラクターといえば、誉田哲也さんの「ジウ」シリーズの「みさき(伊崎基子)」を思わせる。これがゴールデン・ダガー賞なのか。好みの問題かなぁ。
読了日:07月06日 著者:王谷晶
福家警部補の考察 (創元推理文庫)福家警部補の考察 (創元推理文庫)感想
福家警部補シリーズはどれも面白いが、この考察が一番まとまっていてかつ洒落ている気がする。やっぱりこのシリーズは短編がいいな。
読了日:07月15日 著者:大倉 崇裕
福家警部補の追及 (創元推理文庫)福家警部補の追及 (創元推理文庫)感想
中編二本で、どちらも力作であるが、読者としては短編の方が楽しく読めるような気がする。
読了日:07月19日 著者:大倉 崇裕
三人目の幽霊 落語シリーズ (創元推理文庫)三人目の幽霊 落語シリーズ (創元推理文庫)感想
噺家自身が探偵役という北村薫さんのシリーズを思い出す。「三鶯荘奇談」は手に汗握るという感じでサスペンスとしては上々の出来だと思う。
読了日:08月01日 著者:大倉 崇裕
白戸修の逃亡 (双葉文庫)白戸修の逃亡 (双葉文庫)感想
つぎつぎピンチに過去の関係者が助けに現れて危地を脱していくのはそれなりに面白いが、プロット的にはごたごたしていてすっきりしない。カタルシスがない。こちらの理解力がないのかもしれないが。
読了日:08月09日 著者:大倉崇裕
国宝下花道篇 (朝日文庫)国宝下花道篇 (朝日文庫)感想
歌舞伎にはなじみがないし、好きでもないけれど、小説でここまでやられたら、恐れ入りましたというしかない。読みやすく、ストーリーを軽々と運んでいく文体が見事だと思う。全体の構成も豊かで、ゆるみなく、歌舞伎の文句を積み重ねて飽きさせない。楽しく読ませていただきました。
読了日:08月22日 著者:吉田 修一
言葉の虫めがね (角川文庫)言葉の虫めがね (角川文庫)感想
確かに智の字を言うのに「天智天皇」の智です、というのはややハードルが高い気はする。
読了日:08月28日 著者:俵 万智
幻視の庭幻視の庭感想
この詩集でまず感じるのは、ひんやりした空気と果てしない広さである。どちらかというと静かで、どちらかというと乾燥しているその空間は、たとえ少量の焦燥感があったとしても、基本的には落ち着いた居心地のよい場所である。
読了日:09月01日 著者:田畑浩秋
おとうと (新潮文庫)おとうと (新潮文庫)感想
国会図書館のデジタルコレクションで読んだ。見事な文章だと思う。無駄なく情景と感情を描いて過不足がない。二度映画化されていると承知しているが、最近の吉永小百合=笑福亭鶴瓶版はかなり設定は変えられているが、姉弟がリボンで手を結ぶというエピソード、最後に鍋焼きうどんを所望されるというくだりは原作からずっと引き継がれているのを知った。
読了日:09月12日 著者:幸田 文
愛する源氏物語 (文春文庫 た 31-7)愛する源氏物語 (文春文庫 た 31-7)感想
俵さんの、和歌を現代語の和歌に翻訳する、という力業あってこそ可能だった画期的な源氏物語ガイドだと思う。それにしても俵さん含め、源氏物語の研究者、現代語訳の訳者、そろいもそろって、ほとんど源氏物語を現実のことのように感じて評論しているのに驚かされる。もちろん時々我に返って「これは紫式部がそのように書いているのであるが」という注釈が入るのだがそれにしても皆さん物語に没入しすぎ。それだけ源氏物語が偉大な創作だということだろうが。
読了日:09月17日 著者:俵 万智
存亡の条件存亡の条件感想
何度か読み返して、著者のいう「臨在感的把握」というのはどういうことなのかがわかった。確かにわれわれ日本人は何か、これという絶対的なものを見つけて「臨在感的」に把握してしまうことが多いと思う。「臨在感的把握」をしないようにするのは難しいが、そうしないと対象の把握そのものが危うくなる。
読了日:09月17日 著者:山本 七平
顔の見えない世界に降りそそぐ君の光 (角川文庫)顔の見えない世界に降りそそぐ君の光 (角川文庫)感想
プロットはごたごたしていてあまり感心しない。推理小説としては謎の解決のプロセスも結果もすっきりしない。恋愛小説としては…今の高校生ってこんななの。こんなに手間かけないと恋愛できないの?昭和ジジイにはわからないわー。
読了日:09月21日 著者:天野 コハク
流れる (新潮文庫)流れる (新潮文庫)感想
「主人」が清元をさらっていて、どうしても上手くいかない部分が、ある朝「するっと」できる。それに気づいた主人公の女中「梨花」がそれを指摘する場面が印象に残っていたが、他は全部忘れていた。内容が置屋の内情ということではごたごたするのはしょうがないが、文章もごたごたとしているように思える。慣れない読者(私)は振り回されてしまい、筋がよくわからない。
読了日:09月28日 著者:幸田 文
10プラス1 87分署シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)10プラス1 87分署シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
評判の高い小説なのだが、どこがいいのかわからない。古めかしくなってしまったということか。50年前には新鮮だったのだろうか。
読了日:10月13日 著者:エド マクベイン
警官嫌い (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-1)警官嫌い (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-1)感想
ストーリーはまずまず納得できるが、一人殺せば済むものを、3人も殺すだろうかという点と、如何に新聞記者が書かないといったところでそれを信用してあろうことか個人情報をべらべらしゃべるのもどうかしているように思う。昔の方が新聞記者に信用があったのか。
読了日:10月16日 著者:エド マクベイン
殺意の楔 87分署シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)殺意の楔 87分署シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
よくできたサスペンスだが、アイデアを詰め込み過ぎじゃないか。
読了日:10月17日 著者:エド マクベイン
金髪女 (1980年) (世界ミステリシリーズ―ホープ弁護士シリーズ)金髪女 (1980年) (世界ミステリシリーズ―ホープ弁護士シリーズ)感想
原題のGoldilocksとは、3匹のくまの童話に登場する女の子(あるいは原話では老婆)の名前だそうで、転じて「丁度いい」という意味らしい。Goldilockという言葉自身は金の髪であるから題名の「金髪女」が間違っているわけではない。殺人事件は起きるが、むしろ不倫小説とでもいうべきだと思う。殺人事件の当事者のみならず主人公の弁護士まで不倫しれるのだから。ミステリーとしてはあまりいい出来ではないと思う。
読了日:10月24日 著者:エド・マクベイン
新宿ミステリー傑作選 (河出文庫)新宿ミステリー傑作選 (河出文庫)感想
昭和62年(1977年)のアンソロジー。木谷恭介作品が強烈だった。トルコ風呂という言葉もなくなって久しい。
読了日:10月27日 著者:半村 良
二丁目の角の物語 (1963年)二丁目の角の物語 (1963年)感想
伊丹十三ボットが「読まないと損だというくらい面白い」などと煽るからつい読んでしまったが、一に貧乏、二に貧乏、三四がなくて五に借金というような、自伝的小説であった。風俗的な興味はあるが、そんなに面白いとは思わない。
読了日:10月31日 著者:
ヒカルの碁 11 (ジャンプコミックス)ヒカルの碁 11 (ジャンプコミックス)感想
11巻まで読了。昔のマンガに通じるものがあって読みやすいし、絵も好きだ。特に藤原佐為が美しく描かれている。ここで一段落。
読了日:11月06日 著者:小畑 健
下町探偵局―センチメンタル・オプ下町探偵局―センチメンタル・オプ感想
幸い国会図書館のデジタルコレクションで読めました。最終話がここで一番ホームラン、と思わせておいて、見事に空振りするあたり、身の丈にあったほのぼの感がよろしいかと思います。
読了日:11月09日 著者:半村 良
下町探偵局〈part 2〉 (1982年)下町探偵局〈part 2〉 (1982年)感想
どこかでうまくいかなくなるのではないかとよもやにひかされて最後まで読まされてしまった。まぁ、たまにはこういう結末もありかな。これも国会図書館デジタルコレクションで読みました。
読了日:11月16日 著者:半村 良
ハウスメイド (ハヤカワ・ミステリ文庫)ハウスメイド (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
ミステリであるとともにオカルト要素のまったくないホラーともいえる傑作だと思う。
読了日:11月20日 著者:フリーダ・マクファデン
幻視街 (角川文庫)幻視街 (角川文庫)感想
昭和50年~51年発表のファンタジーよりの短編集だが、さすがに今読むにはちょっときついかなぁ。半村さんでも「おんな帖」あたりの酒場モノは息が長いが、SF・ファンタジーは比較的賞味期限切れかもしれない。
読了日:11月23日 著者:半村 良
戦士の岬 (1976年)戦士の岬 (1976年)感想
昭和50-51年の小説で、面白いのだが、結末がなぁ。なんかカタルシスがないよな。成功するにしろ失敗するにしろ、何か急展開、どんでん返しみたいなものが欲しい。
読了日:12月14日 著者:
ハウスメイド2 死を招く秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫)ハウスメイド2 死を招く秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
読後感がすっきりしているのが、このシリーズの良さだと思う。トリックは周到に仕組まれている。とても面白く読みました。
読了日:12月21日 著者:フリーダ マクファデン

読書メーター

北区王子本町に住んでいたのは、1970年代半ばまでである。

住んでいた家というのは長屋というのは不正確で、二軒並んだ一戸建ての真ん中をつないで、それも最初の内は板を渡していたような気がするのだが二軒を一軒にして住んでいた。

家の前は細い露地で、向かいの家はNさんといって、わが家も貧乏だったが輪をかけて貧乏な一家が住んでいた。そこの長男がRちゃんで、私より5つか6つ上だっただろうか。Rちゃんは近所のガキ大将であった。

夏の日に「日本のロケット技術はまだまだなので、俺がロケットを開発する」といって、近所の子供を集め、何をするかと思えば、露地に糸を渡して、膨らませたゴム風船にストローをつけて糸を通して飛ばすという他愛のない「芸」をやって見せたのをよく覚えている。

Rちゃんはその後中学を出て、派手に遊んでいたようだが、交通事故であっけなく亡くなってしまった。葬式の日は、ピアノもギターも厳禁といわれておとなしくしていた。

N家には妹が確か二人いて、上の子は私と同世代だったが、中学を出ておそらくは水商売に出たのだと思う。

これも大変暑い夏の日に、彼女が家の2階でマーヴィン・ゲイのYou Are Everythingを繰り返し繰り返し蓄音機で聞いていたのを覚えている。その間に化粧でもしてそのあと仕事にでたのではないかと勝手に想像していた。

東京新聞を除いて、7名の「裏金議員」の副大臣・政務官への登用をごく小さくしか扱っていないという(TBSラジオ)翼賛新聞だ。
そもそも自民党は「民間から金をもらって便宜を図る」ことを党是としているような党で、故・家元談志に「自民党ってのは金で動くから健康的な党なんですよ。そう思わないかい?」といわれていたくらいだ。だから、カネで動くことをなんとも思わないし、それが当然だと思っている。
結果として、エスタブリッシュメント=大企業からの献金を受け取って、大企業に利する政策をとるから、時代遅れの重厚長大産業がいつまでもぐずぐずと退場しないことになり、新しい産業の芽が摘まれて、「失われた30年」ということになる。
高市政権というのは、おそらく旧安倍政権の復活なのだろう。米国追従を第一優先に考えて、経済的繁栄を追求する。円はあくまで安く、輸出産業に有利にことを運ぶ。もっともトランプはドルが高すぎるといって第二プラザ合意を実現するかもしれないが。
金で動く政治もあまり行き過ぎると肝心の経済を停滞させかねないのでよく考える必要がある。ほったらかしにしておいた自動車産業が、自由勝手に日本の屋台骨になったような僥倖はそうそう落ちていないだろう。アニメーションやインバウンドが旧来の産業に代わって屋台骨を支えてくれるようになれば結構な話だが。

平成6年(1994)の小林信彦「日本人は笑わない」を読み返しているのだが、美空ひばりに関する記述があって興味深い。
レコード大賞の「柔」が28歳、「悲しい酒」が29歳の時、そして初期の最後の大ヒット「真っ赤太陽」が30歳の時だそうだ。1937年生まれでいらっしゃるから、それぞれ1965年、66年、67年になる。
私は「真赤な太陽」をテレビでみて、「この人は演歌を和服で歌うのが似合う人なのに、こんなロック調の曲でイメージチェンジしたいのだろうけれど、痛々しいなぁ」と思った記憶がある。
1949年に古川ロッパが、美空ひばりの印象として「笠置シズコの真似をする12歳の少女、まことに鮮やかであり、気味わるし」と書いているそうだ。
小林信彦さんは(これは炯眼であり)「その後世間はひばりについて『鮮やか』派と『気味わるし』派に二分される」という。
先日のAIひばりも「気味わるし」だったが、それ以前に美空ひばりという人は「気味わるし」という一面を持っていたのだ。

2025年9月24日放送分 TBSラジオ森本毅郎スタンバイ、伊藤芳明氏(聞き書き)

 

トランプ氏の前で、大丈夫かアメリカの報道

 

ABCテレビは先週水曜日 ジミー・キンメルの番組を無期限停止するとした。

キンメル氏は「チャーリー・カーク射殺事件からトランプ氏の周辺が政治的得点を稼ごうとしている」と言明していた。

9月17日、連邦通信委員会ブレンダン・カー委員長は、ABCに対して放送局の態度を変えるか、さもなければ連邦通信委員会は更なる仕事をすることになる(放送免許取り消しもあり得る)、と脅した。

これを受けて数時間後にABCはキンメル氏の番組を無期限停止を発表した。

ABCの親会社ウォルトディズニーは23日、番組再開を決定したと発表。

トランプ氏は、最終的にはカー委員長の判断次第とコメント。

明らかにトランプ氏は、報道の自由をイヤがっている。

トランプ氏は取材に答えて9月17日「ある人物(トランプ)に関する報道の97%が悪い内容であるなら、それは言論の自由ではなくイカサマである。」(トランプに対するリベラル・左派の攻撃にすぎない)、という認識をしめした。

チャーリー・カーク氏の追悼式典などで、トランプ陣営はこれを奇貨として、米国が大事にしてきた報道の自由を踏みにじろうとしている。いよいよメディアに対する強硬姿勢を示してきた。

 

新聞も標的になっている。ニューヨークタイムスに対してトランプ氏は、150億ドルの損害賠償請求を提訴。(2兆2000億円相当)理由は2024年の大統領選で、カマラ・ハリスを支持する社説を書いたことで「これは史上最大の違法献金だ」としている。「NYTはいままで何十年にわたって、嘘をつき続けてきた」と主張。

ウオールストリートジャーナルについても、7月、未成年少女人身売買にかかわる「エプシュタイン事件」において、トランプ=エプシュタインの交友関係を報じたのは名誉棄損であるとして、100億ドル、1.5兆円の損害賠償を求めている。2003年にエプシュタインの50歳の誕生日を祝って女性の裸体を描いたカードにトランプ氏がサインをしているものがあるとWSJは報じたが、トランプ氏はこれを否定した。しかし、後になって、当該の書類が9月8日下院の監視説明委員会によりエプシュタイン氏の遺品から発見されて公開された。

 

これらは、トランプ氏が自らに対する反抗的な報道をすれば巨額賠償訴訟を起こすぞという脅し以外の何物でもない。報道に対し自粛をさせる効果をねらっていると思われる。

ハーバード大学法科大学院のアンドリュー・クレスポ氏が、次のような指摘をしている。「民主主義的な方法で選ばれた人物が、独裁者として振舞うためにまず第一に攻撃するのは、言論機関・裁判所・大学の三つである」。まさに今のトランプはこれを実行しており、新聞に対しては巨額の賠償訴訟を乱発、放送に対しては放送権の免許取り消しなどをちらつかせ、大学に関しては反ユダヤ主義を理由として補助金を減額する方向であるし、さらに連邦準備制度理事会もトランプ陣営で固めようとするなど、独裁者への道をひた走っているように見える。クレスポ氏は最後の望みは人々の良識であり、まさに今抵抗すべき時である、と言っている。

選挙中はな、「ワイが当選したら戦争なんか24時間でピタッと止めたるわ!」って、めっちゃイキって言うてたくせにな。いざ自分の思い通りにいかへんかったら、「こんなんワイの戦争ちゃうし、仲介なんかせぇへんわ」って、ポイッて投げ出すんやで?そんなん、めっちゃ無責任ちゃうん?口だけ達者で、ええカッコしいやけど、ほんまに困ったときに頼りにならんタイプやん。大阪のおばちゃんでも、もっと筋通すで、ほんま!

2024年の読書メーター
読んだ本の数:48
読んだページ数:14832
ナイス数:427

ツミデミックツミデミック感想
短編集で、どれもたいへんよく書けているのだが、どうも刺さるものがあまりない、という正直な感想です。すみません。
読了日:12月29日 著者:一穂 ミチ
黄色い家黄色い家感想
人はだれしも少しずつ常軌を逸しているのだから、これは誰にとってもありえたストーリーなのだろう。全員、頭おかしい。知識が決定的に欠如していれば、児童相談所も動きようがないか。
読了日:12月25日 著者:川上未映子
「むなしさ」の味わい方 (岩波新書 新赤版 2002)「むなしさ」の味わい方 (岩波新書 新赤版 2002)感想
むなしさは常にそこにありどうしようもない、ということだけが書いてある本だな。いろいろ学問的なことも書いてあるがほぼこじつけに感じるし、結局加藤の自死を防げなかった北山の愚痴のようにも聞こえる。まぁ、読み終わってこんなにむなしい本もなかなかない。
読了日:12月13日 著者:きたやま おさむ
三体3 死神永生 下 (ハヤカワ文庫SF)三体3 死神永生 下 (ハヤカワ文庫SF)感想
いやー、長い旅でございました。ちょっとIIIは惰性で読んでしまった感があるけれど、あそこまでやられたら感服するしかない。SF的アイデアは疑問がめちゃめちゃあるが、ファンタジーということでいいことにする。長い旅でした。劉先生お疲れさまでした。
読了日:12月06日 著者:劉 慈欣
百鬼園先生言行録 (福武文庫 う 103)百鬼園先生言行録 (福武文庫 う 103)感想
再々読くらいだろうか。随筆というべきなのか、しかし相当部分フィクションのような気もする。全体に面白いのだが、「七体百鬼園」はノリの悪かったジャズのアドリブのようでどうも未消化である。
読了日:11月30日 著者:内田 百けん
日本教について―あるユダヤ人への手紙日本教について―あるユダヤ人への手紙感想
再々読くらいであるが、この示唆に満ちた隅から隅まで面白い本が、古書でしか手に入らないというのは残念なことである。だれかこの本の内容をもっと新しい事案に適用しなおして書き直してくれないだろうか。令和になっても「日本教」は健在だし、ベンダサンさんのロジックは充分に通用するものだとおもうのだが。何度も読んでいると以前ピンとこなかったことがわかるようになってくる。今でも日本人は空体語を積み重ね、踏み絵で相手を判断し、「お前のお前」の関係を希求し、そして「人間」と「自然」に絶対的な価値を置いている。
読了日:10月27日 著者:山本七平,イザヤ・ベンダサン
三体2 黒暗森林 下 (ハヤカワ文庫SF)三体2 黒暗森林 下 (ハヤカワ文庫SF)感想
気宇壮大なすごいSFだと思うのだけれど、こちらの知識が追い付かないので、どうも落ち着かない。智子のアイデアだが、11次元を2次元に展開するというような超絶な技術があってしかも量子もつれを利用して瞬時の通信ができるという段階でどう考えても勝負あったという気がする。何らかの方法で、例ですけどね、たとえば全地球上の原子力発電所を核爆発させるとか、核ミサイルを暴発させるとか、大船団を何百年もかけて送らなくても地球文明を滅ぼすことなんか簡単にできそうだと思いますが、その辺は整合性があるのかなぁ。
読了日:10月23日 著者:劉 慈欣
三体 (ハヤカワ文庫SF)三体 (ハヤカワ文庫SF)感想
評判に背かぬ大作。次から次へとよくまあこんなことを思いつくものだというアイデアの奔流、イマジネーションの爆発の連続。面白かったけれど、ハードSFと呼ぶには若干のためらいがある。ハードとハチャハチャ(横田順彌)の間を行くというか…。我々の知るセンスオブワンダーとは少々異なるものだという感を禁じ得ない。
読了日:09月17日 著者:劉 慈欣
オヨヨ大統領の悪夢オヨヨ大統領の悪夢感想
おそらく60余年の読書歴でもっとも面白く何度も読んだ本の一冊。特に「不眠戦争」のノリがよく、風化しつつある第二次世界大戦とマスコミの関係の風刺も効いている。手に入りにくいのは惜しい。
読了日:09月14日 著者:小林信彦
御馳走帖 (中公文庫 う 9-4)御馳走帖 (中公文庫 う 9-4)感想
昔読んで面白いと思ったが、あらためて読み返してみると、単なる偏屈爺の与太話であることが明白となってしまった。たいしたことは書いてない。ほとんど食い物の話で、大事件が起きるわけでもない。それをなんとか読ませてしまうのが百閒先生の文豪たる所以でもあろう。
読了日:09月14日 著者:内田 百けん
土神ときつね土神ときつね感想
樺の木と土神ときつねの三角関係なのだが、それぞれに事情があるところがミソである。土神の方にシンパシーを感じるが、きつねにはきつねの事情があるであろう。樺の木も三角関係をまとめるには経験不足であった。
読了日:09月08日 著者:宮沢 賢治
あの子とQあの子とQ感想
ファンタジーだから理屈に合わないことがあってもかまわない。かまわないのだが、その世界観の中でなんとか筋が通るというかルールに従っていて納得感がないとファンタジーは成り立たない。この小説に関しては前半と後半が複雑骨折を起こしており、結末も本当に無理矢理だと感じる。あまり好きになれない。
読了日:09月07日 著者:万城目 学
深夜特急1 ー 香港・マカオ〈文字拡大増補新版〉 (新潮文庫)深夜特急1 ー 香港・マカオ〈文字拡大増補新版〉 (新潮文庫)感想
題名との関連がよくわからないが、要は香港の話ですな。ただの旅行記・紀行文に見せかけて実はタネもネタもありありの小説になっているあたりがミソですね。名作。懐かしい香港・マカオが彷彿とします。
読了日:09月04日 著者:沢木 耕太郎
存在のすべてを存在のすべてを感想
キンドルのサンプル部分が面白かったので購入したのだが、少し進んだところで全体の構図は明らかになってしまう。美術ひいては芸術の話や、親子の関係性の話に持っていきたいのだろうが、実に都合のいい協力者が次々現れるとか、ご都合過ぎませんか。本来サスペンスじゃないんだろうな。ちょっと損しました。
読了日:08月31日 著者:塩田 武士
猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫 お 17-3)猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫 お 17-3)感想
受け取り方はひとそれぞれだろうが、私には後味の悪い小説だった。
読了日:08月27日 著者:小川 洋子
無理難題が多すぎる (文春文庫 つ 11-23)無理難題が多すぎる (文春文庫 つ 11-23)感想
哲学者にしか書けない本である。読みながら池田晶子さんの著作を思い出した。月とスッポンではあるが(もちろん土屋氏の本の方がスッポンである)思わず爆笑してしまったところもあるが、あまり役に立つという本ではない。もちろん読書に「役に立つ」ことは求めていないが。
読了日:08月24日 著者:土屋 賢二
ヒトコブラクダ層戦争(下) (幻冬舎文庫)ヒトコブラクダ層戦争(下) (幻冬舎文庫)感想
面白いのは面白いのだが、文章がくどい。何度も同じことを読まされる(連載だったのかな)。伊坂幸太郎さんの流れるようなアクションシーンにならされているといかにもぎくしゃくする。Audibleで聴いたので一層そう感じたのかもしれんないが、もう少し流麗に描いていただきたい。
読了日:08月20日 著者:万城目学
プラスティック (講談社文庫 い 72-4)プラスティック (講談社文庫 い 72-4)感想
以前、図書館で借りて読んだのだが、本屋大賞の発掘本に選ばれていたので再読した。仕掛けはわかっているのだが、それでも面白い。作者が、アイデアに忠実に小ぶりではあるが堅牢な構造物を作ろうと丹精しているのがわかる。フロッピーディスクが主人公(?)であるあたり時代を感じさせるが、それは全く気にならない。不朽の名作と言ってよい。
読了日:08月19日 著者:井上 夢人
プロジェクト・ヘイル・メアリー 下プロジェクト・ヘイル・メアリー 下感想
物理の得意な人には面白いだろうと思われるかなりのハードSFである。小説としては工夫は凝らされているとは思うが、だいたい読者の予想の範囲内でストーリーは展開していく。もっとも、手に汗握るハラハラドキドキなんてぇのは若い人の特権かもしれない。よくできたハードSFというところ。常識を覆すような奇想に満ちているという小説ではない。
読了日:08月15日 著者:アンディ・ウィアー
数学ガール/ゲーデルの不完全性定理数学ガール/ゲーデルの不完全性定理感想
わからなかった、というか、わかろうとする気力が途中で萎えた。でも面白かった。不完全性定理の「薫り」くらいは感じることができた。46の定義の解説お疲れ様でした>結城先生
読了日:08月04日 著者:結城 浩
新 もういちど読む 山川世界史新 もういちど読む 山川世界史感想
この辺で第二次大戦で終わってしまうのではないもう少し先まである世界史を読みたくなって購入。歴史の概観としてはいいのだが、もう少し「なぜそうなったか」についてところどころでも解説が欲しい。なぜ日本は対英米開戦したのかとか。ないものねだりかもしれないが。一応プーチンが大統領の2期目をやってるとか9.11とかトランプの名前は出てくる。残念ながらウクライナ戦争、ハマス/イスラエルには触れられていない。
読了日:08月02日 著者:
AX アックス (角川文庫)AX アックス (角川文庫)感想
Audibleにて。これは再読だと思う。だいたいストーリーは覚えていた。恐妻家の殺し屋という設定で全編もたせるという力業。面白かったし身につまされる。
読了日:07月18日 著者:伊坂 幸太郎
マリアビートル (角川文庫)マリアビートル (角川文庫)感想
Audibleにて。殺伐とした話でありながら、ところどころで笑いを誘うのが伊坂さんのストーリーテリング。それぞれのキャラクターが立っているのがすごい。
読了日:07月18日 著者:伊坂 幸太郎
時間のパラドックス―哲学と科学の間 (中公新書 (575))時間のパラドックス―哲学と科学の間 (中公新書 (575))感想
30年前にもわけのわからない本だと思ったが、再読してもわからないことは変わらなかった。内容のうち半分は自明のことだと思うし、残り半分は全く理解できない。ゼノンの矢は的まで飛ぶし、アキレスは亀に追いつく。
読了日:07月05日 著者:中村 秀吉
猫を処方いたします。 (PHP文芸文庫)猫を処方いたします。 (PHP文芸文庫)感想
Audibleで読んだ(聞いた)のだが、なんとも不思議なほんわかした世界である。実はその根源には目をそむけたくなる事態が伏在しているのだが…
読了日:06月26日 著者:石田 祥
成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ感想
「成瀬」のキャラクターがすごい。何も超自然なことも起きないし、複雑な謎があるわけではないのだが、ついつい物語に引き込まれていく。本屋大賞おそるべし。オーディブルで聴いたのだが、朗読の域を超えた「演技」にも賞賛を送りたい。
読了日:06月10日 著者:宮島未奈
ぼくの大好きな青髭 (中公文庫)ぼくの大好きな青髭 (中公文庫)感想
1969年、アポロ11号の年。このシリーズの中ではもっともメタファーだらけで、まるで村上春樹を読むようだが、この時代の熱気、若者たちの行き場のないエネルギーと新宿の空気を思い出させる。実は、赤、白、黒までは読んでいたのだが、どういうわけか完結編であるこの青髭を読んでおらず、この度1977年から50年近い年月を経てやっと読み終えました。
読了日:06月03日 著者:庄司薫
日本の仏教 (岩波新書 青版 299)日本の仏教 (岩波新書 青版 299)感想
30年前に読んだ本を再読。こんな過激な本だったっけという印象。法然、親鸞、日蓮、3人まとめて「口先だけ」とバッサリ。天台宗にしても「無智と誤解の上に成り立っている」とこれもバッサリ。要するに実践の伴わない仏教は仏教にあらずという立場で、相当過激な論を展開していて、大変面白かった。
読了日:06月02日 著者:渡辺 照宏
ビブリア古書堂の事件手帖IV ~扉子たちと継がれる道~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖IV ~扉子たちと継がれる道~ (メディアワークス文庫)感想
ああややこしい。もちろん、こちらの頭も老化しているからその分もあるだろうが、同じようなキャラクターが3代おりその配偶者がおり、同様に3代続く登場人物が複数おり、頭の中がこんがらかるのである。一応の区切りはついたようだが、三上先生、まだ書くのだろうな。
読了日:05月28日 著者:三上 延
ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~ ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~ ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ (メディアワークス文庫)感想
登場人物の行動が回りくどい。語り口もまわりくどい。推理小説は、手掛かりを淡々と追っていって、最後に「そこで探偵さてといい」でいいのだ。くどい。まぁ、ここまでつきあったから最終巻も読むけど。とにかくまわりくどいんだよ。
読了日:05月17日 著者:三上 延
ビブリア古書堂の事件手帖II ~扉子と空白の時~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖II ~扉子と空白の時~ (メディアワークス文庫)感想
横溝正史ってあまり好きではないんですよ。筋立てが無理矢理…俳句どおりに殺人とか…ないわー。この本は面白かったけれど。
読了日:05月11日 著者:三上 延
ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ (メディアワークス文庫)感想
このシリーズは面白いのだけれど、混乱するからはっきり通しで番号を振るとか、シリーズ名を変えるとかしてほしい。掌編4つのうち、最後の一編が一番面白かった。
読了日:05月08日 著者:三上 延
ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)感想
やれやれやっと完結しましたな。最後はそれほど驚くほどの大展開はなく終わりましたな。作品としてはシリーズ前半の方がノリがよかったような印象があります。
読了日:05月04日 著者:三上 延
ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)感想
なんだか人間関係がごたごたと複雑になってきましたね。一度、関係図を示してもらわないと、老人にはきついです。まぁ、7巻も読みますけどね。
読了日:04月27日 著者:三上 延
噺歌集II (文春文庫)噺歌集II (文春文庫)感想
基本的には噺歌集と同じ情報が多いかな。二度も読む本じゃないね(読んだけど)あとがきで、ご本人が「おれは暗くない」と叫んでおられる。いいのにね、そんなこと気にしなくても。いや、気にしないと書いておられるのだが、その実相当気にしているね、これは(笑)
読了日:04月20日 著者:さだ まさし
文章読本 改版 (中公文庫 み 9-7)文章読本 改版 (中公文庫 み 9-7)感想
私にはやや難しいのだが、それでも面白く読んだ。書籍は偉大である。すぐそこに三島自身が立って文学を語ってくれるのだから。確かに鴎外の「澁江抽斎」の系図を読み下すような退屈な部分に挟まれた逸話は実に生き生きとしているし、鏡花の筆の力はすさまじいものがある。三島が漱石と露伴をどう評価していたのかが知りたいところである。
読了日:04月17日 著者:三島 由紀夫
ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)感想
参考文献リストを見て戦慄する。これだけ調べて書いていて、失礼な話だがもとはとれるのだろうか。人気シリーズだから大丈夫なんだろうな。改めて読んでその蘊蓄のすごさに圧倒される。寺山修司はよくわからないのだけど…
読了日:04月15日 著者:三上 延
福家警部補の考察 (創元クライム・クラブ)福家警部補の考察 (創元クライム・クラブ)感想
殺人をしようというのだから、何かしらのっぴきならない理由があるのだ。ただ、それが自業自得の事情ではなく、犯人側にもそれなりの理由があり、尊敬すべき面も備えているというのが、本歌取りの本家にも通ずる特徴であろう。特に最後の一話は、その設定が実によくできている。恐れ入りました。
読了日:03月27日 著者:大倉 崇裕
福家警部補の追及 (創元推理文庫)福家警部補の追及 (創元推理文庫)感想
福家警部補はいいキャラクターだったのだけれど、運動全般オールマイティーってのはちょっとやりすぎじゃないかなぁ。もう少し、弱みがあった方がキャラクターとして好感が持てるんですけど。
読了日:03月20日 著者:大倉 崇裕
福家警部補の報告 (創元推理文庫)福家警部補の報告 (創元推理文庫)感想
3編収録されているが、「少女の沈黙」は特に傑作。ヤクザの描写が秀逸だと思う。大変面白く読んだ。
読了日:03月12日 著者:大倉 崇裕
にっぽんの商人にっぽんの商人感想
「日本人は虚構を虚構として尊重する」「日本が世界に誇れるのは『商事』だけ。軍事も政治も思想もなく、国会は麻痺している」1978年の主張は今でも通用するが、『商事』=経済力にも陰りが出ること久しく、日本は本当に沈没してしまった。各章の結論部分がどれもあっさりしていて、理解するのに少々骨が折れるが、一冊を通しての主張は明快で、江戸時代以来、日本は本当に変わらないということを証明している。読み継がれるべき本だと思うのだが、もう古書でしか手に入らないようだ。
読了日:03月09日 著者:山本七平,イザヤ・ベンダサン
福家警部補の再訪 (創元推理文庫)福家警部補の再訪 (創元推理文庫)感想
ベースに「刑事コロンボ」という大発明があるとはいえ、福家警部補の人物造形は秀逸だと思う。紺色の野暮ったいスーツを着たフチなしメガネの小柄な若い女性の警部補が出てくるだけでうれしくなる。どうしても見つからなくなる警察手帳をついに首から下げることになってしまったのもおかしい。
読了日:03月07日 著者:大倉 崇裕
ぬいぐるみ警部の帰還 (創元推理文庫)ぬいぐるみ警部の帰還 (創元推理文庫)感想
今一つのり切れないのは、主人公の造形がそれほど「のっぴきならない」ところまで煮詰められていないからかなぁ。
読了日:02月16日 著者:西澤 保彦
パッとしない子 (Kindle Single)パッとしない子 (Kindle Single)感想
つかこうへいじゃないけど「傷つくことだけ上手になって」。逆恨みによる、権力をかさに着た言葉の暴力以外の何物でもないですよ。
読了日:02月10日 著者:辻村 深月
怪しい店 (角川文庫)怪しい店 (角川文庫)感想
軽い推理小説を5編。楽しく読ませていただきました。「潮騒理髪店」がよかった。
読了日:02月08日 著者:有栖川 有栖
文芸の哲学的基礎文芸の哲学的基礎感想
読了しました。流石漱石、読んで(おそらくは聞いても)面白い文章になっています。いろいろの例示を添えているのがわかりやすくなっている所以かと思います。 まずは「意識は連続を欲す」という哲学的考察から説き起こして、結論としては「文芸は理想をもたざれば意味なし」ということなのかと思います。
読了日:02月08日 著者:夏目漱石
日本世間噺大系 (新潮文庫)日本世間噺大系 (新潮文庫)感想
これも読むのは3回目くらいかな。時代は変わったけれども面白いのは変わらない。何かのテレビ番組でみたけれど、伊丹さんはインタヴューのテープを大量に録りためてあったらしいですな。その中からこれは面白いというものを選んで文章に起こしたのだろうから面白いのは当然といえば当然かもしれない。
読了日:01月18日 著者:伊丹 十三
噺歌集 (文春文庫)噺歌集 (文春文庫)感想
読むのは二度目くらいだと思うが、この時代とさだまさしさんの古い価値観が感じられて面白い。私が就職して住むことになった、大阪の会社の寮の近くの本屋さんのカバーがまだついており、それを亡父に貸したらしく、父の筆跡でカバーの背に書名が書いてあるという珍品である。昭和57年4月の単行本を文庫(昭和61年)になってから買ったようだ。
読了日:01月10日 著者:さだ まさし

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