ケアンズへの道① | ドリアン長野の読書三昧

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娘は小学生の頃から海外に連れて行けと連呼していた。いつだったか、先生が「海外に行ったことのある人?」と聞いたら、クラスのほとんどの児童が手を挙げたと言う。
ほとんどっていうのは普通少なくとも8割だろう。まさか4割じゃないだろうな。水増ししてんじゃねぇだろうな。この地域は割と富裕層が多い。だからか。
言っとくけど、うちは富裕層じゃないからな。たまたま中古マンションが安かったから買っただけだけど、それが15年で1.5倍に跳ね上がった。マンション自体は古いが、立地場所がよかったのでラッキーだった。定年になってもまだローンは残ってるがって、何の話だよ。
とにかく先生も嫌なことを児童に聞くねえ。
中学に入学しても娘の海外熱は冷めない。

「うちはビンボーなの?」と娘。

映画「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」でミッキーローク扮するホワイト警部が妻に「君は本当の貧しさを知らない」って言うシーンがあるが、ポーランド出身のホワイト警部はニューヨークに来てからも苦労したんだろう。

そんなことを思い出したが、娘に言っても「それがどうした」と言うのに決まっている。

あんたの塾代にどんだけ注ぎ込んだと思ってんの?
という妻の正論もeastern window blows into the ears of horse.だ。

中学受験に合格したら、アメリカに連れてってな、と言っていたが不合格で良かった、いや、良くないが。

中学生になっても娘の海外熱は下がるどころか強固になるばかりである。
連日の執拗な攻撃にさすがの旅順港も陥落した。妻が折れたのである。
乃木将軍、万歳。

いやいやいや、いいのか。傍らで聞いていた私は驚いた。実は妻は癌治療をしていて、今は再発予防の治療をしているのだが、癌保険がおりた。それを将来の大学進学のためにプールしておこうとの算段だったのだが、堅実で心配症の妻がいいと言うのなら異論はない。

それでも三人分の旅費を捻出することは厳しく、妻は抗がん剤の副作用で下痢が頻出するので私と娘だけが行くことになった。

近場ならいい、という妻の言葉に従って娘はタイかフィリピン、どちらがいいかなと言っていたが、そのうちアジア以外の国に行きたいと言い出した。
おい、要求のエスカレーションかよ。
都知事三選を目指す小池百合子かよ(意味不明)。

「それじゃあ、ケアンズはどう?」と妻。

え、ケアンズってどこだよ。