手塚治虫文庫全集 火の鳥5 | ナナとトモのブログ

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最近は書評メインですがナナ(ダックスフント)のかわいさを世界に広めるブログです。

「火の鳥」は手塚治虫の代表作としてよく知られています。ただ手塚氏は単行本化

するときにかなり手を入れる人なので、

・角川書店角川文庫 全12巻
・復刊ドットコム復刻大全集 全11巻

・講談社手塚治虫文庫全集 全11巻

といった感じでいろいろな出版社から出されている全集自体にも微妙に差があると

いう状況になっています。

 

復刊ドットコム版は連載時のを復刻したものらしいので大元に一番近いでしょう。

講談社版は角川版と比べると結構削られているようですが、一番手に入れやすいと

思います。ということで今回は講談社版を読んでみることにしました。

 

5巻は復活編と羽衣編。復活編は2482年が舞台です。ある理由で事故死したものの

再生させられたレオナと、事務ロボットのチヒロ、そして3030年という二人より

だいぶ未来に登場するロビタというロボットが繰り広げる物語です。

 
火の鳥の生き血を飲むと不死になるといいますが、死んだ人間を再生できる時代を
描くことで、生命や意識とは何かを描こうとしているのでしょう。ここ最近 AI の
発展が著しいですが、ロボットと人間を分ける「人間らしさ」とは何かを考えさせ
られます。
 
波長の異なる光が目に映っているだけなのに色覚として感じられる「クオリア」と
いう現象がなぜ生じるのかはまだ解明されていませんが、レオナが普通の生命には
クオリアを感じずロボットに感じるという設定はなかなか面白いものです。そして
人間くさいロボットであるロビタの人工頭脳にレオナとチヒロの記憶が移植されて
いたというのも面白い。人間から理不尽な判決を受けたとき人間に反乱するのでは
なく、自殺を選んだというのも象徴的です。
 
羽衣編は「天女の羽衣」の物語を歌舞伎風に描いたもの。天女は未来からの旅人で
羽衣は未来の衣類という設定以外はあまり面白くはありません。

 

個人的な評価は復活編は5段階中の5。他の人にもぜひおススメしたい面白さ。

羽衣編は5段階中の1。あまり面白くない。