「火の鳥」は手塚治虫の代表作としてよく知られています。ただ手塚氏は単行本化
するときにかなり手を入れる人なので、
・角川書店角川文庫 全12巻
・復刊ドットコム復刻大全集 全11巻
・講談社手塚治虫文庫全集 全11巻
といった感じでいろいろな出版社から出されている全集自体にも微妙に差があると
いう状況になっています。
復刊ドットコム版は連載時のを復刻したものらしいので大元に一番近いでしょう。
講談社版は角川版と比べると結構削られているようですが、一番手に入れやすいと
思います。ということで今回は講談社版を読んでみることにしました。
6巻は望郷編。地球からエデン17という辺境の星にやってきたジョージとロミ。
ジョージの事故死のあと残されたロミが苦難に耐えながらエデン17を発展させて
いき、死ぬ前に元の地球をもう一度見ようと苦労する物語です。
あまりにもつらい環境の星なのにエデン17という名前が皮肉。しかも何とか地球に
戻ってきてもロミが思い焦がれた美しい自然はほとんどなくなっているのも皮肉。
美しい自然をもう一度「見たい」ロミに対して、ついてきたコムは目が見えないと
いうのも象徴的です。
またコムは途中でチヒロに出会うのですがチヒロは自分に心がないと認識している
ことに触れてコムが人間とロボットの違いを考える描写も、生命や人間とは何かを
考えさせられます。他の巻では女性はサブの立場ですがこの間はロミという女性が
メインなのも毛色が違っていて面白い。
個人的な評価は5段階中の4。かなり面白い。