「火の鳥」は手塚治虫の代表作としてよく知られています。ただ手塚氏は単行本化
するときにかなり手を入れる人なので、
・角川書店角川文庫 全12巻
・復刊ドットコム復刻大全集 全11巻
・講談社手塚治虫文庫全集 全11巻
といった感じでいろいろな出版社から出されている全集自体にも微妙に差があると
いう状況になっています。
復刊ドットコム版は連載時のを復刻したものらしいので大元に一番近いでしょう。
講談社版は角川版と比べると結構削られているようですが、一番手に入れやすいと
思います。ということで今回は講談社版を読んでみることにしました。
4巻は鳳凰編。火の鳥といったら茜丸と我王を思い浮かべる人が多いのではない
でしょうか。それくらい有名な編です。
悪逆非道を繰り返す我王。その我王に腕を切られた仏師茜丸は、片腕が使えない
ことで一段上の高みに達します。我王自体もたまたま助けたテントウムシの化身
である速魚を自分の誤解で殺してしまって変わっていきます。良弁僧正との旅を
通じて心の内を彫刻として吐き出し続け、我王も仏師となっていきます。
最終的に茜丸と我王は大仏殿の鬼瓦作成で対決することになります。誰が見ても
出来映えは我王が上なのに茜丸は「我王が悪党だったこと」を持ち出して負けを
認めない。火の鳥にも会って高みに達したかと思わせておいてやっぱりこの程度
だったか、とがっかりさせられます。一方の我王は腕を切られて山へ逃げますが
自然の美しさに感動して涙を流します。大仏建立という「宗教と政治」の醜さと
離れることで「ただ生きること」の美しさを感じたからでしょう。
個人的な評価は5段階中の5。他の人にもぜひおススメしたい面白さ。