DVD「幕末太陽傳」

幕末太陽傳
日活/1957年/110 分
監督:川島雄三
脚本:田中啓一、川島雄三、今村昌平
美術:中村公彦、千葉一彦
監督助手:浦山桐郎、遠藤三郎、磯見忠彦
出演:フランキー堺、左幸子、南田洋子、金子信雄、山岡久乃、
石原裕次郎、岡田真澄、小沢昭一、芦川いづみ、菅井きん
今日は、今村昌平監督の命日、
今村昌平とはちょっと縁があるので…。
この映画は、川島雄三監督の代表作。今村昌平は脚本&演出助手で関わっている。
明治維新まであと6年という時代の、品川宿の遊郭が舞台。
制作した年が売春防止法施行直前という時期。
かつての品川遊郭に当時の品川赤線がなんとなくダブる。
「時代を超えた何かを見せたいんだな。」との意図を感じる。
しかしこの作品での、川島+今平のハチャメチャぶりは凄い。
この作品、日活の記念映画。「大作」でなければいけない。
川島「日活といえば太陽族=石原裕次郎!幕末版、太陽の季節を作りましょう!」
と言ったかどうか知らないが、企画の始まりはこんなところだろう。
けどこの映画、品川宿が舞台の落語=「郭噺」を構成した喜劇である。「大作」の雰囲気はない。
たしかに「相模屋」という遊郭が完璧に再現されていたり、
品川宿のロケーションも相当お金使ってはいる。
川島監督らの作家性が強く前に出る。
日活「いやいや、そういう金のかけ方じゃなくてさぁ。」
川島「遊郭を完全再現するのは文化として意義のあることです!」
日活「何ていうか、もっと解りやすく、スケールの大きい作品にしたいんだよ。」
川島「何言ってるんです。溝口健二監督だって松の廊下を(「元禄忠臣蔵」1942年作品)
再現したじゃないですか。次は遊郭ですよ。」
(…以上妄想。)
川島監督や今平が口八丁で口説いたのであろうか?確かに今平監督は口が上手かった。
都合良く嘘付いたのか、よぼど幹部が緩かったのか、
企画が通ったこと自体そもそも不思議である。
配役もしかり。石原裕次郎&小林旭が高杉晋作と久坂玄瑞としてからんだりする。
けど主役は佐平次役のフランキー堺だ、石原裕次郎は脇役。「えっ大丈夫?」
芸者役には、左幸子と南田洋子の二枚看板。
この二人に二階建てのセット一杯に使ったとっくみあいの喧嘩をさせたりする。
「えっえっ?」ハラハラする。
日活「郭噺じゃなぁ。せめて源氏物語とか、できたら忠臣蔵みたいにならない?」
川島「遊郭は美女の集まりですよ。日活の綺麗な女優の花魁姿は話題を呼びますよ。
彼女たちに遊女らしからぬ活き活きとした演技をさせるんですよ。
それに幕末の志士たちが登場します。彼らの活躍は忠臣蔵以上にドラマチックです。」
日活「でも裕次郎君が脇役をやるかなぁ。」
川島「何言ってるんです。太陽ですよ。高杉晋作ですよ。石原裕次郎の作品です。
居残り佐平次が主役なわけないでしょう!」
(…再び妄想。)
しかし、目立ったのはフランキー堺に小沢昭一など。
裕次郎は良かったが、勤皇の志士たちは、酒を飲み、くだを巻く、時代に保守的な若者たちとなる。
制作中も終わってからも、そうとう揉めた。川島雄三監督はこれで日活を去っていく。
「さよならだけが人生さ」…とその時言ったかどうか?
しかし、出来た映画は素晴らしい。
佐平次を核としたみごとな群像劇。
その年のキネマ旬報第4位。
1999年の「日本映画史ベスト100」では第5位。
大作でないが、歴史的名作であることは間違いない。
時代の大変革期に悶える若者たち、そんなことちっとも気にしない庶民たち。
「太陽」=人間の「生」のエネルギーと感じる。「威勢がいい!」しかも「深い!」
今村「一つのシーンに2つとか3つの要素じゃだめだ、10も20も詰め込むんだ。」
この言葉は本当。
深さはそこらへんから来ていると思う。
昔も今も変わらない人間の業や営み。人間の「生」のずぶとさが愛おしい、
「今村昌平らしいなぁ。」と感じる。






