どうもWatakoです。
今回は女子高時代の怒子の話です。
怒子(いかりこ)とは?
Watakoが通っている底辺女子高校のクラスメイト。
演劇部所属。
テストでは毎回全教科0~20点くらいしか取れず、学力にコンプレックスを抱いている。
承認欲求が強いがそれが思うように満たされなくてほぼ毎日イライラしている。
理想の自分と現実の自分のギャップに苦しみ周囲に当たり散らす。
アニメや漫画が好きだ同じ趣味の子を見下している。
彼氏がいたようだが一か月?くらいで別れている。
①怒子、それウソ?ホント?大丈夫?事件
「わたし、中学時代にクラスメイトに彫刻刀で手の甲を思いっきり刺されたことがあるの」
初期の頃、怒子はこんな中学時代のエピソードとしてそんなことを話してくれた。
その話を聞いた子達は怒子の話す内容から怒子の身に起きたその状況を想像して、その時のことを悲痛な表情で語る怒子を慰めた。
しかしその怒子のエピソードを同じ部活のブル子(仮名)に話すと
「はぁ?!彫刻刀で刺された?それおかしくない?嘘じゃない?」
「え?なんでそう思うの?」
「だってさぁ~、彫刻刀で勢いよく手の甲に刺さされるなんて確実に傷が残るレベルの重症
で、下手したら後遺症とかも残るんじゃん?怒子の手の甲に傷とかあった?」
私はブル子にそう言われて次の日、怒子の両方の手の甲も手のひらとそして腕に至るまで見てみたがどこにもそのような目立つ傷はなかった。
「彫刻刀で刺された」という出来事はまるっきり嘘なのかもしれないし、本当にあったことで怒子は嘘をついてはいないのかもしれない。怒子の話を聞いた私たちが怒子の話を大すぎるくらいに大げさに悲惨に捉えてしまっていただけなのかもしれない。
いくら軽傷で傷が残っていなくても彫刻刀で手の甲を刺されるというのは怖い経験だと思う。
何が本当で何が嘘なのかなんて、真実なんて誰にも分らないがブル子の言葉を聞いて私は何となくこれからは怒子の言うことを全面的にすぐには信用しないほうが良いのかもしれないと思った。
このエピソード自体は他人に話してもたいしたインパクトがないものだが、私にとってはなんだか印象深くてなぜか忘れることができなかった。
②差別的ホワイトデー事件
底辺女子高に入学してから3学期に入り初めてのバレンタインの日が来た。女子高のバレンタインというのはほぼ友チョコ交換会でもありチョコレートパーティーのようなもので私も仲がいい子に友チョコを渡していて怒子に対しても友チョコを渡していた。
その時は怒子からチョコをもらうことはなく交換というよりもプレゼントといった感じでお返しについても強要したりしなかった。あってもなくてもどちらでもいい感じで単にイベントごとを楽しみたいという気持ちだった。
そして、迎えた3月14日のホワイトデー当日。
朝、教室に入ると怒子の周囲に人だかりができていた。
怒子の周囲にいたのはギャルグループや体育会系のグループの子達でみんな怒子が持っている何かに夢中で食らいついていた。
怒子はテンション高く笑顔で
「もぉ~☆そんなにがっついちゃダメぇ~」
と言いながら自身が持っているタッパーに入った手作りのチョコケーキのようなものに夢中で食らいついているギャルグループの子や体育会系の子に対応していた。
私はその光景を見て驚いたがホワイトデーだからきっとお返しで渡したんだろうと思った。
そして
(私も怒子にチョコ渡したからあの子たちが食べてるおいしそうなチョコケーキ、お返しとしてもらえるのかな・・・?)
と怒子に期待した。
しかし、普段怒子と仲良くしていた他の友達はなぜか複雑そうな表情で満面の笑みでタッパーに入れていたチョコケーキを配る怒子とそれに群がるギャルグループと体育系系グループという光景を見ていた。
(なんでみんな浮かない顔してるんだろう?)
それから、タッパーに入っていたチョコケーキがなくなり最後の残りかすまでも食欲旺盛な体育会系グループの子が食べ切ったと同時に怒子の周囲にいたギャルや体育会系グループの子達は散り散りになり、空になったタッパーを手に怒子がこちらに近づいて来た。
「もぉ~あんなにがっかれてほんと困っちゃぁぁ~う☆」
「あ・・・あの怒子・・・」
「は?!なに?!」
怒子は汚い乞食を見るような目で私たちを見て来た。
私たちは怒子と普段からよく話していたしバレンタインに怒子にチョコをあげていたので期待するような雰囲気や表情を自然と表にわかりやすく出してしまっていた姿は怒子にとってそれは目障りなものだったようだ。
怒子は「しっ、しっ」と野良動物やたかってくるハエを追い払うようになジェスチャーをしてその場を去って行った。
次の日の3月15日
ホワイトデーの次の日に、怒子は私たちのところにうつむいたままで睨むような目つきのままつかつかと私と普段よく話している子達がいるところに近寄ってきた。そして無言で怒子に友チョコを渡した私ともう一人の子に紙袋を目の前に勢いよく突き出すように渡して来た。
「はい、コレ」
「え・・・?」
「ちゃんとお返ししたんだから私の評判が落ちるような噂とか流したりとかしないでよ!」
そう言うと怒子は自分の席に座って頬杖をついてわざとらしく浮かない顔でため息をつく。
怒子からもらった紙袋を開けるとそこには板チョコが一枚入っていた。
(あ~ホワイトデーのお返しか~)
そう納得したが私ともう一人のお返しをもらった子が微妙な表情で顔を合わせた。
「なんか、すっごくわざとらしいよね。扱いにあからさまに差つけてさ、わざわざ、あっちには14日に手の込んだもの渡して、こっちにはホワイトデーの次の日に板チョコ1枚とか・・・いやらしいっていうか。あんたらは私のとってその程度の存在だから、みたいな」
その場にいたグループのうちの一人であるスネ子(仮名)がぼそっと言った。
私たちはスネ子の発言に無言で同意した。
一方の怒子はというと昨日、手作りチョコをあげたギャルグループと体育会系グループの子達がわいわいしている姿を見てわざとらしく大きなため息をついてぼそっと言った。
「もらうだけもらっといてなんもねぇのかよ・・・どいつもこいつもばかにしやがって・・・・」
怒子がつぶやいたその言葉を聞いて、私は怒子はギャルグループや体育会系グループに入るために私たちをわざと邪見に扱ったのだというとをこの時やっと理解した。
私やスネ子は、怒子の支配的な言動に反抗したことがあるから怒子から塩対応されていたのでこのような言動をとられても「まぁ、そうだろうな」と思ってそこまで驚かなかったが怒子の言動に何も突っ込まず終始優しくしてくれた他の子達のこともまとめて雑に切り捨てようとしたことについてはとても驚いた。
おそらく、怒子は手作りチョコをあげたことで次の日から自動的にギャルグループや体育会系グループの子達が積極的に話しかけてくれて仲間入りできるという展開を期待していたのだろう。しかし、彼女らにとっては
「なんか知らないけどほとんど絡みない怒子がお菓子くれた~ラッキ~🎶」
という感じだったのだ。
怒子がここでむくれてあきらめずにギャル・体育会系グループに入るためにギャルたちが興味あるような流行のファッションや芸能について勉強したり、体育会系グループに入るためにスポーツの話題を仕入れるなどすれば望んだとおりに怒子は仲間に入れたかもしれない。
しかし、それは怒子のプランには入っていなかったのだろう。
なぜなら怒子の望みはそのままの自分で受け入れられたいというものだったからだ。
おしゃれをするのもスポーツに詳しくなるのもそれは、今ある受け入れてほしい本来の”自分”らしさから遠ざかる行為だからやりたくないのだ。
そして怒子はプライドが高かった。
怒子の理想は
「私は望んでないけど人がたくさん寄ってきて困っちゃ~う☆」
というかぐや姫的な人気者ポジションに着くことなのだ。
コンプレックスが強い怒子は自分が絶対的に上で相手が下という形の明確な一生変わる可能性がない形の上下関係をつけてからでなければコミュニケーションがとれないのだ。
なので自分から彼女たちに近寄るために労力や財力を使うことは相手にへり下る行為、下になる宣言にあたるから死んでもやりたくなかったのだ。
こうして怒子のグループ移籍作戦は失敗して怒子は不本意ながら気にくわない私やスネ子がいるイケてない(怒子から見て)グループの一員としての日々を再び過ごすことになったのだった。
③怒子自サバ発言事件
「ほんっと女ってくっだらない!だから、あたし女って大っ嫌いなの!」
ホワイトデー事件から数日後、ある日の昼休みに怒子は唐突に、何の前触れもなく爆発した。
前後に誰かが誰かの悪口を言っていたわけでも、争っていたということもなかった。
和やかな雰囲気だった教室内は怒子の発言によって静まりかえる。
呆気にとられてしまったが、あの出来事から怒子は唐突に何かのアニメキャラになりきったような、こことは別の世界で生きているかのような言動をとるようになっていたので今回もそうなのだと私や他の怒子とよく話す子達も今回もそうなのだと思った。
例
・「オレさぁ!」と一人称を変えて自分語りを始める
・「別にあんたのためじゃないんだからね!」とツンデレキャラっぽい言動
・日常会話で唐突に「オィィィィィィィ」という突っ込み …etc
「あははは・・・も~怒子ってばどうしたの~突然~」
私は苦笑いしながら一人で何かと戦っているような様子の怒子に話しかけた。
「あたし、女だ~いっきらい!ねちねちしてて卑怯で汚い!男同士はさっぱりしてて最高!男とのほうが気が合うし!」
「ちょっとも~怒子~ほんとどうしたの~」
怒子をなだめるように私は話しかけるが怒子の機嫌は悪いままで私はそんな怒子に言った。
「じゃあ、どうしてここ(女子高)にいるの?」
「怒子、ここ女子しかいないよ?なんで共学の学校受験しなかったの?」
たたみかけるように言うと怒子は私に図星を突くような発言をされたことの衝撃で目をひん剥き、奥歯をかみしめるような表情をした。
私はここで怒子がキレるかと思ったが怒子はうつむいてか細い声で言った。
「だって・・・先生から・・・ここしか入れないって言われたんだもん・・・」
その発言を聞いて私は
「そっか~」
としか返せなかった。
そして、その日以降、怒子に話しかけても
「フン!」
と思いっきりそっぽを向かれて完全無視されるようになった。
(現実にフンって言って無視する人始めて見たわ~)
これが怒子との最後のまともな会話となった。
それから2年生、3年生と怒子が自ら申し出たのかわからないが怒子とは同じクラスにはならなかった。
たまに話しかけて来たかと思ったら
「私はお前みたいな能力の低い人間とは違うからwwww」
といった類のマウント発言を毎回、周囲に人目が少ないことを確認してから仕掛けてきてさらに私が何かに追い詰められているときや困っているときにやってくるので卑怯だなぁ~と思ったが、怒子にとっては正当な復讐だったのかもしれない。
それからの怒子は学力コンプレックスからなのか、大学進学を目指す私やスネ子や、同じ学科で同じ演劇部の読子(よみこ)にたいしてもあからさまにガン無視し出したりして、体育会系グループやギャルグループの中の大学進学志望の人に対しては最初から関わらないようにその子達がいるとその場所から逃げたりして、関わる人を徹底的に選別していた。
(大学進学希望だけど私は大して成績良くないしうちの底辺女子高のうちの学科からすごい偏差値高い大学に行く人っていないんだけど大学進学を希望してるというだけで気にくわないらしい・・・)
私とスネ子以外のイケてない認定された子達(専門学校や就職希望の子)とは「仕方ないから仲良くしてやる」といったスタンスで上から目線で接して、大学進学希望の子の中でもトップクラスの子に対しては冷たく接すると周囲から学力コンプレックスで人によって態度を変えていることが公になって自身の評判が落ちることを懸念してなのか弱々しく波風立てないように接していた。
時折、仲良くなりたかったギャルや体育会系グループの子達のほうに視線を送り仲良くなりたいオーラを出していたが思ったように関心を持ってもらえず落胆してはまた次の日も希望をもって話しかけてほしいオーラを出して・・・という生活を送っていた。
(たまに隣のクラスの様子を見に行くときに見かけた怒子はそんな感じだった)
以上が怒子との高校生活の中で起きた大きな出来事である。
3年位前の秋頃、母校がある地域に行った際に高校時代に放課後や休日によく行っていたアニメ専門店に立ち寄った際に怒子らしき人(おそらく100%本人)を見かけた。
そのとき見かけた怒子は高校時代と同じ髪型をしていて同じ顔つきをしていた。
高校卒業してから何年も経つと、女子の場合は大幅に髪型を変えていたりヘアカラーをしていたり化粧をしていたりする場合が多いので制服ではなく私服だからすぐにはわからなかったりするのだが、怒子は当時から外見的にはなにも変わっておらず、さらに高校の制服を彷彿させるような色合いの服装だったためすぐにわかってしまったのだ。
(やばい!怒子だ!どうしよう!)
と思ったが怒子は私の存在にも視線にも気づかずに新刊コーナーをじろりと一瞥した後に、ため息をついて早歩きでつかつかと早歩きでお店を出て行った。おそらく目当てのものはなかったからすぐに立ち去ったのだろう。
(あれだけオタク嫌いって言ってたのにオタクやめてなかったんか~い)
怒子は今でも自分の人生や生活を劇的に変えてくれるようなる都合のいい「誰か」との出会いや、ある日突然起こる「何か」を待ち望みながら過ごしているのだろうか、自らは変わることはせずに「誰か」や「何か」がしてくれると思っているのだろうか。
怒子を目撃した当時の私は自分の人生が高校時代に思い描いていた理想の人生とはほど遠い仕上がりになっていることに不満や焦りを感じつつも何もできなくて、だけど、具体的にどうなれば満足できるのか何をすれば満足できるのかわららず、偏った他責的な考え方で情緒が不安定になる時が増えていた。
だけど、怒子を見かけて昔を思い出して自分に都合のいい「誰か」や「何か」を待ち望んでいるだけでは何も変わらない、自分が積極的に動かなければ自分の人生は何も変わらないのだから何かを期待するだけで時間を消費するのはやめてもっと能動的に生きよう、そして自分にないものを数えるよりも、今あるものを大事にして、自分に優しく親切にしてくれる人との関係を大事にしてくことの大切にしていこうと思った。
(怒子との思い出は良いものではなかったがこのように考えさせてくれたので無駄ではなかったとは思いたい)