どうもWatakoです。

今回は女子高時代の怒子の話です。

 

怒子(いかりこ)とは?

Watakoが通っている底辺女子高校のクラスメイト。

演劇部所属。

テストでは毎回全教科0~20点くらいしか取れず、学力にコンプレックスを抱いている。

承認欲求が強いがそれが思うように満たされなくてほぼ毎日イライラしている。

理想の自分と現実の自分のギャップに苦しみ周囲に当たり散らす。

アニメや漫画が好きだ同じ趣味の子を見下している。

彼氏がいたようだが一か月?くらいで別れている。

 

 

①怒子、それウソ?ホント?大丈夫?事件


「わたし、中学時代にクラスメイトに彫刻刀で手の甲を思いっきり刺されたことがあるの」

 

初期の頃、怒子はこんな中学時代のエピソードとしてそんなことを話してくれた。

その話を聞いた子達は怒子の話す内容から怒子の身に起きたその状況を想像して、その時のことを悲痛な表情で語る怒子を慰めた。

しかしその怒子のエピソードを同じ部活のブル子(仮名)に話すと

 

「はぁ?!彫刻刀で刺された?それおかしくない?嘘じゃない?」

「え?なんでそう思うの?」

「だってさぁ~、彫刻刀で勢いよく手の甲に刺さされるなんて確実に傷が残るレベルの重症

で、下手したら後遺症とかも残るんじゃん?怒子の手の甲に傷とかあった?」

 

私はブル子にそう言われて次の日、怒子の両方の手の甲も手のひらとそして腕に至るまで見てみたがどこにもそのような目立つ傷はなかった。

 

「彫刻刀で刺された」という出来事はまるっきり嘘なのかもしれないし、本当にあったことで怒子は嘘をついてはいないのかもしれない。怒子の話を聞いた私たちが怒子の話を大すぎるくらいに大げさに悲惨に捉えてしまっていただけなのかもしれない。

いくら軽傷で傷が残っていなくても彫刻刀で手の甲を刺されるというのは怖い経験だと思う。


何が本当で何が嘘なのかなんて、真実なんて誰にも分らないがブル子の言葉を聞いて私は何となくこれからは怒子の言うことを全面的にすぐには信用しないほうが良いのかもしれないと思った。


このエピソード自体は他人に話してもたいしたインパクトがないものだが、私にとってはなんだか印象深くてなぜか忘れることができなかった。

 

 

②差別的ホワイトデー事件

底辺女子高に入学してから3学期に入り初めてのバレンタインの日が来た。女子高のバレンタインというのはほぼ友チョコ交換会でもありチョコレートパーティーのようなもので私も仲がいい子に友チョコを渡していて怒子に対しても友チョコを渡していた。

その時は怒子からチョコをもらうことはなく交換というよりもプレゼントといった感じでお返しについても強要したりしなかった。あってもなくてもどちらでもいい感じで単にイベントごとを楽しみたいという気持ちだった。

 

そして、迎えた3月14日のホワイトデー当日。

朝、教室に入ると怒子の周囲に人だかりができていた。

怒子の周囲にいたのはギャルグループや体育会系のグループの子達でみんな怒子が持っている何かに夢中で食らいついていた。

怒子はテンション高く笑顔で

 

「もぉ~☆そんなにがっついちゃダメぇ~」

 

と言いながら自身が持っているタッパーに入った手作りのチョコケーキのようなものに夢中で食らいついているギャルグループの子や体育会系の子に対応していた。

私はその光景を見て驚いたがホワイトデーだからきっとお返しで渡したんだろうと思った。 

そして

(私も怒子にチョコ渡したからあの子たちが食べてるおいしそうなチョコケーキ、お返しとしてもらえるのかな・・・?)

と怒子に期待した。

しかし、普段怒子と仲良くしていた他の友達はなぜか複雑そうな表情で満面の笑みでタッパーに入れていたチョコケーキを配る怒子とそれに群がるギャルグループと体育系系グループという光景を見ていた。

(なんでみんな浮かない顔してるんだろう?)


それから、タッパーに入っていたチョコケーキがなくなり最後の残りかすまでも食欲旺盛な体育会系グループの子が食べ切ったと同時に怒子の周囲にいたギャルや体育会系グループの子達は散り散りになり、空になったタッパーを手に怒子がこちらに近づいて来た。

 

「もぉ~あんなにがっかれてほんと困っちゃぁぁ~う☆」

「あ・・・あの怒子・・・」

「は?!なに?!」

 

怒子は汚い乞食を見るような目で私たちを見て来た。

私たちは怒子と普段からよく話していたしバレンタインに怒子にチョコをあげていたので期待するような雰囲気や表情を自然と表にわかりやすく出してしまっていた姿は怒子にとってそれは目障りなものだったようだ。

怒子は「しっ、しっ」と野良動物やたかってくるハエを追い払うようになジェスチャーをしてその場を去って行った。

 

次の日の3月15日

ホワイトデーの次の日に、怒子は私たちのところにうつむいたままで睨むような目つきのままつかつかと私と普段よく話している子達がいるところに近寄ってきた。そして無言で怒子に友チョコを渡した私ともう一人の子に紙袋を目の前に勢いよく突き出すように渡して来た。

 

「はい、コレ」

「え・・・?」

「ちゃんとお返ししたんだから私の評判が落ちるような噂とか流したりとかしないでよ!」

 

そう言うと怒子は自分の席に座って頬杖をついてわざとらしく浮かない顔でため息をつく。

怒子からもらった紙袋を開けるとそこには板チョコが一枚入っていた。

(あ~ホワイトデーのお返しか~)

そう納得したが私ともう一人のお返しをもらった子が微妙な表情で顔を合わせた。

 

「なんか、すっごくわざとらしいよね。扱いにあからさまに差つけてさ、わざわざ、あっちには14日に手の込んだもの渡して、こっちにはホワイトデーの次の日に板チョコ1枚とか・・・いやらしいっていうか。あんたらは私のとってその程度の存在だから、みたいな」

 

その場にいたグループのうちの一人であるスネ子(仮名)がぼそっと言った。

私たちはスネ子の発言に無言で同意した。

一方の怒子はというと昨日、手作りチョコをあげたギャルグループと体育会系グループの子達がわいわいしている姿を見てわざとらしく大きなため息をついてぼそっと言った。

 

「もらうだけもらっといてなんもねぇのかよ・・・どいつもこいつもばかにしやがって・・・・」

 

怒子がつぶやいたその言葉を聞いて、私は怒子はギャルグループや体育会系グループに入るために私たちをわざと邪見に扱ったのだというとをこの時やっと理解した。

私やスネ子は、怒子の支配的な言動に反抗したことがあるから怒子から塩対応されていたのでこのような言動をとられても「まぁ、そうだろうな」と思ってそこまで驚かなかったが怒子の言動に何も突っ込まず終始優しくしてくれた他の子達のこともまとめて雑に切り捨てようとしたことについてはとても驚いた。

 

おそらく、怒子は手作りチョコをあげたことで次の日から自動的にギャルグループや体育会系グループの子達が積極的に話しかけてくれて仲間入りできるという展開を期待していたのだろう。しかし、彼女らにとっては

 

「なんか知らないけどほとんど絡みない怒子がお菓子くれた~ラッキ~🎶」

 

という感じだったのだ。

 

怒子がここでむくれてあきらめずにギャル・体育会系グループに入るためにギャルたちが興味あるような流行のファッションや芸能について勉強したり、体育会系グループに入るためにスポーツの話題を仕入れるなどすれば望んだとおりに怒子は仲間に入れたかもしれない。

しかし、それは怒子のプランには入っていなかったのだろう。

なぜなら怒子の望みはそのままの自分で受け入れられたいというものだったからだ。

おしゃれをするのもスポーツに詳しくなるのもそれは、今ある受け入れてほしい本来の”自分”らしさから遠ざかる行為だからやりたくないのだ。

 

そして怒子はプライドが高かった。

怒子の理想は

 

私は望んでないけど人がたくさん寄ってきて困っちゃ~う☆」

 

というかぐや姫的な人気者ポジションに着くことなのだ。

 

コンプレックスが強い怒子は自分が絶対的に上で相手が下という形の明確な一生変わる可能性がない形の上下関係をつけてからでなければコミュニケーションがとれないのだ。

なので自分から彼女たちに近寄るために労力や財力を使うことは相手にへり下る行為、下になる宣言にあたるから死んでもやりたくなかったのだ。

こうして怒子のグループ移籍作戦は失敗して怒子は不本意ながら気にくわない私やスネ子がいるイケてない(怒子から見て)グループの一員としての日々を再び過ごすことになったのだった。

 

 

③怒子自サバ発言事件

 


「ほんっと女ってくっだらない!だから、あたし女って大っ嫌いなの!」

 

ホワイトデー事件から数日後、ある日の昼休みに怒子は唐突に、何の前触れもなく爆発した。

前後に誰かが誰かの悪口を言っていたわけでも、争っていたということもなかった。

和やかな雰囲気だった教室内は怒子の発言によって静まりかえる。

呆気にとられてしまったが、あの出来事から怒子は唐突に何かのアニメキャラになりきったような、こことは別の世界で生きているかのような言動をとるようになっていたので今回もそうなのだと私や他の怒子とよく話す子達も今回もそうなのだと思った。

 

・「オレさぁ!」と一人称を変えて自分語りを始める

  ・「別にあんたのためじゃないんだからね!」とツンデレキャラっぽい言動

  ・日常会話で唐突に「オィィィィィィィ」という突っ込み …etc

 

 

「あははは・・・も~怒子ってばどうしたの~突然~」

 

私は苦笑いしながら一人で何かと戦っているような様子の怒子に話しかけた。

 

「あたし、女だ~いっきらい!ねちねちしてて卑怯で汚い!男同士はさっぱりしてて最高!男とのほうが気が合うし!」

「ちょっとも~怒子~ほんとどうしたの~」

 

怒子をなだめるように私は話しかけるが怒子の機嫌は悪いままで私はそんな怒子に言った。

 

「じゃあ、どうしてここ(女子高)にいるの?」

「怒子、ここ女子しかいないよ?なんで共学の学校受験しなかったの?」

 

たたみかけるように言うと怒子は私に図星を突くような発言をされたことの衝撃で目をひん剥き、奥歯をかみしめるような表情をした。

私はここで怒子がキレるかと思ったが怒子はうつむいてか細い声で言った。

 

「だって・・・先生から・・・ここしか入れないって言われたんだもん・・・」

 

その発言を聞いて私は

 

「そっか~」

 

としか返せなかった。

 

 

そして、その日以降、怒子に話しかけても

 

「フン!」

 

と思いっきりそっぽを向かれて完全無視されるようになった。

 

(現実にフンって言って無視する人始めて見たわ~)

 

これが怒子との最後のまともな会話となった。

それから2年生、3年生と怒子が自ら申し出たのかわからないが怒子とは同じクラスにはならなかった。

たまに話しかけて来たかと思ったら


「私はお前みたいな能力の低い人間とは違うからwwww」


いった類のマウント発言を毎回、周囲に人目が少ないことを確認してから仕掛けてきてさらに私が何かに追い詰められているときや困っているときにやってくるので卑怯だなぁ~と思ったが、怒子にとっては正当な復讐だったのかもしれない。

 

それからの怒子は学力コンプレックスからなのか、大学進学を目指す私やスネ子や、同じ学科で同じ演劇部の読子(よみこ)にたいしてもあからさまにガン無視し出したりして、体育会系グループやギャルグループの中の大学進学志望の人に対しては最初から関わらないようにその子達がいるとその場所から逃げたりして、関わる人を徹底的に選別していた。

 

(大学進学希望だけど私は大して成績良くないしうちの底辺女子高のうちの学科からすごい偏差値高い大学に行く人っていないんだけど大学進学を希望してるというだけで気にくわないらしい・・・)

 

私とスネ子以外のイケてない認定された子達(専門学校や就職希望の子)とは「仕方ないから仲良くしてやる」といったスタンスで上から目線で接して、大学進学希望の子の中でもトップクラスの子に対しては冷たく接すると周囲から学力コンプレックスで人によって態度を変えていることが公になって自身の評判が落ちることを懸念してなのか弱々しく波風立てないように接していた。

時折、仲良くなりたかったギャルや体育会系グループの子達のほうに視線を送り仲良くなりたいオーラを出していたが思ったように関心を持ってもらえず落胆してはまた次の日も希望をもって話しかけてほしいオーラを出して・・・という生活を送っていた。

(たまに隣のクラスの様子を見に行くときに見かけた怒子はそんな感じだった)

 

以上が怒子との高校生活の中で起きた大きな出来事である。

 

3年位前の秋頃、母校がある地域に行った際に高校時代に放課後や休日によく行っていたアニメ専門店に立ち寄った際に怒子らしき人(おそらく100%本人)を見かけた。

そのとき見かけた怒子は高校時代と同じ髪型をしていて同じ顔つきをしていた。

高校卒業してから何年も経つと、女子の場合は大幅に髪型を変えていたりヘアカラーをしていたり化粧をしていたりする場合が多いので制服ではなく私服だからすぐにはわからなかったりするのだが、怒子は当時から外見的にはなにも変わっておらず、さらに高校の制服を彷彿させるような色合いの服装だったためすぐにわかってしまったのだ。

 

(やばい!怒子だ!どうしよう!)

 

と思ったが怒子は私の存在にも視線にも気づかずに新刊コーナーをじろりと一瞥した後に、ため息をついて早歩きでつかつかと早歩きでお店を出て行った。おそらく目当てのものはなかったからすぐに立ち去ったのだろう。

 

(あれだけオタク嫌いって言ってたのにオタクやめてなかったんか~い)

 

怒子は今でも自分の人生や生活を劇的に変えてくれるようなる都合のいい「誰か」との出会いや、ある日突然起こる「何か」を待ち望みながら過ごしているのだろうか、自らは変わることはせずに「誰か」や「何か」がしてくれると思っているのだろうか。

 

怒子を目撃した当時の私は自分の人生が高校時代に思い描いていた理想の人生とはほど遠い仕上がりになっていることに不満や焦りを感じつつも何もできなくて、だけど、具体的にどうなれば満足できるのか何をすれば満足できるのかわららず、偏った他責的な考え方で情緒が不安定になる時が増えていた。

だけど、怒子を見かけて昔を思い出して自分に都合のいい「誰か」や「何か」を待ち望んでいるだけでは何も変わらない、自分が積極的に動かなければ自分の人生は何も変わらないのだから何かを期待するだけで時間を消費するのはやめてもっと能動的に生きよう、そして自分にないものを数えるよりも、今あるものを大事にして、自分に優しく親切にしてくれる人との関係を大事にしてくことの大切にしていこうと思った。

 

(怒子との思い出は良いものではなかったがこのように考えさせてくれたので無駄ではなかったとは思いたい)

初めての方はこちらから↓

大学のいじめっ子①

大学のいじめっ子シリーズ登場人物まとめはこちら↓

大学のいじめっ子シリーズ 登場人物まとめ

 

 

3月某日。

新四年生の歓迎会が学校近くの居酒屋で行われることになった。

そこは私の住む学生寮から近くて、通学する際にいつも通りがかるお店だったので私は安心した。

 

(もし住んでいるところから遠いお店で行われることになってたらミンコやドキコと帰りの交通機関で一緒になってしまうなんてことも可能性として起こりえたので本当に良かった)

 

参加者は新四年生

 

女 Watako・音無・きび子・ミンコ・ドキコ

男 真実王・ジョウ・幹野・ラノ田

 

旧4年生

女 サバ美・にこ

 

担当助教授

男 大出小三

 

研究室のOG

女 OG子

 

 

の計13名によって行われることとなった。

 

OG子はB大学出身で大出研究室出身でフリーのデザイナーで研究室が決まってから何度か進級前のゼミにも参加していて新4年生は全員面識があった。

OG子は謎多き人で、フリーのデザイナーながらCDデビューすることが決まったりしているらしく(本人談)などデザイナーの枠にとらわれずに自由に活動しているような人だった。

 

そんなメンバーとともに居酒屋に行って

案内された居酒屋の個室には大きなテーブルが二つあって、以下の図のように座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

奥の席を選んだ理由は隣にミンコ、ドキコ、きび子が座ってきたり、その3人のうちの一人に挟まれる形になったら嫌だったからである。

私の隣に音無が隣になってさらにきび子とは同じテーブルだったが、音無に間に入ってもらう形になったのできび子を怒らせてしまいきび子の不興を買うような出来事が起こることはないだろうと思い私は奥の席を選んで正解だったと思った。

だが、同じテーブルにはなぜかミンコとドキコも座ってきた。

どうやら、ミンコとドキコはどうやら現役フリーデザイナーのOG子から色々とデザイナーとしての話を聞きたかったようでそれでOG子と同じテーブルに座ったようだった。

 

「もっとお姉さまのお話聞きたぁ~い~」

 

(お、お姉さま?!)

 

ドキコはOG子を慕いOG子のことを「お姉さま」と呼び出した。

そしてミンコも同様にOG子のことをお姉さま呼びし始めた。

ミンコとドキコはOG子を慕うのは将来的にはOG子のようにフリーランスのデザイナーになりたいからというのもあったのだろうが、この歓迎会にいる人間の中でOG子は上位の人間だから今後味方につけておくといい思ったようでOG子にわかりやすいくらいに媚を売るように懐いていた。

そして話が進むにつれてOG子のCDデビュー決定の話から大出はデザイナーこそ外に出て色々な活動をすべきだという話を始めた。

 

「僕はこう見えて登山にも行くし毎年、冬にはスキーをしたりもしていて○○にも△△にも行ったことがあって・・・」

 

私が座っているテーブルは大出の多趣味さや有能さや華麗な経歴や交友関係の自慢話を大出の機嫌を損ねないように聞く場となっていた。

もう一つのテーブルではにこ先輩は唐突に

 

「ねぇ~みんなはぁ~好きな人いるぅ~?」

 

と修学旅行の夜にするような話題を出してわいわいしていた。

同じ空間にいるのに別世界にいるにいるようで、この席を選んだことを後悔していた。

将来のためになることなどを考えたら大出とOG子がいる席を選んだほうが良いのかもしれないが大出の話す内容は正直言って中身がないただの自慢話で黙って聞くだけののうなずきマシーンにならなければならないのが苦痛だった。

ミンコとドキコは「すご~い」「さすが~」と言って大出の話を聞いていた。

私と音無ときび子はただ黙ってひたすら聞いていた。

 

どうしても大出の自慢話をこれ以上聞くのもミンコとドキコのいるテーブルにいるのも苦痛だった私は隣のテーブルのにこ先輩のところにどうしても行きたくてトイレに立った。

 

飲み会で席を変えたい場合はトイレに行ってから別の席に移動したらいいという情報を思い出してそれを実践することにしたのだ。

にこ先輩のいるテーブルに行きたかったのは自己愛の強そうな大出にターゲットにされず同性に厳しいサバミ先輩に陰口をたたかれたり直接きつい言葉をかけられたりしていてもマイペースに図太く明るく振る舞うにこ先輩に感銘を受け、にこ先輩からその生き方を今後、研究室でやっていくためにも個人的に学びたいと思ったからである。

しかし、トイレから戻る途中でトイレに行こうとしていたサバミ先輩に遭遇して話しかけられた私は衝撃的な事を聞かされる。

 

「ほんっと、ありえないんだけど・・・にこのやつ・・・」

「どうしたんですか?」

「帰りやがったの!あいつ!始まってからまだ30分しか経ってないのに!」

「えぇっ?!」
 

なんと、にこ先輩は私がトイレに行っている最中に家が遠くて帰りが遅くなると親に怒られるからという理由で帰ってしまったのだ。

 これで隣のテーブルに移動したところでミンコとドキコや大出から上手く逃げられるのかと不安に思いながらも私は自然になんてことないようににこ先輩がいた隣のテーブルに移動した。

私が移動したのを見て、他のメンバーも席を移動しはじめて私が移したテーブルに音無ときび子がやってきた。

ミンコとドキコとサバミはOG子と大出の近くの席から一歩も動かなかったので安心した。

 

音無ときび子も私と同様に大出の自慢話に聞くのが苦痛だったようでリラックスし始め、そして二人そろってマイスケッチブックを取り出して絵を描き始めた。

 

(えぇっ・・・飲み会の席で絵描くの?!あれ?でもデザイン学科の飲み会だからいいのか?あれ?でもこれっていきなりスマホいじり始めるくらいねマナー違反じゃないの?でもデジタルじゃなくてアナログ?だからいいのか?ってよくわからん!)

 

私は生まれて初めて遭遇する状況に戸惑いながらったが、もう二人の好きにさせたらいいかと考えて出された料理をひたすら口にいれていた。

今思えば私も音無ときび子のように空気を読むことやマナー違反だとか色々考えずに一緒に絵を描き始めていれば良かった。

そうすれば、クセ強すぎてコントロールできなさそうとミンコとドキコと大出に思われてターゲットから外れていた可能性があった。

私の中途半端に空気を読もうとしてしまうところは自己愛強めの人間からしてみたらターゲットにしやすかった点でもあったのだろう。

音無ときび子が絵を描いている様子を見ながらその後新たにやって来た幹野とラノ田と食事しているとそこへ大出がやってきた。

音無は大出に描いている絵を見られたくなかったのかスケッチブックを隠してその場から少し離れたが、きび子は何も気にせず絵を描き続けていてそんなきび子に大出は

 

「おっ、大先生じゃないっすか?!なになに?!新作っすか?!」

 

と気安くチャラめの若者が女性に話しかけるようにからかい混じりの口調でで話しかけた。


※ちなみに大出は当時50代


私は大出は酔っていたのもあるのだろうし、親しみやすい気のいい感じを演出したかったのであろうがこのきび子に対する「大先生」呼びにはどこかきび子を敬いながらもバカにしているでは?というニュアンスと違和感を感じた。

しかしそんな私とは違いきび子は研究室で一番偉い大出からの「大先生」呼びがうれしかったようで得意げに嬉しそうに絵を描き続けていた。


今にして思えば、これも大出が自分の信者を増やすためのやり方だったのだろう。


大出はきび子やサバミのような負けず嫌いでプライドが高いフキハラ癖があり、「他人には頼りません!」という姿勢で生きているタイプの女が怖くて本来は苦手なのだ。

このタイプは一人でも平気なように振る舞うが、内心ではどこか孤独感やフラストレーションを感じながら生きている場合が多い。

大出はきび子やサバミのようなタイプと関わることになると不安で毎回、最初は低姿勢で近づき人前で褒め殺しをして子分のように低姿勢で敬うようなコミュニケーションをとって自分の味方にしているのだろう。

大出はそのような女性の心の隙間に漬け込んで味方にするのが上手かった。


(この人、ヤバいかも。何がヤバいのか具体的に何て言ったらいいかわかんないけど。なんかヤバい)



 

→大学のいじめっ子⑫

 

 

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大学のいじめっ子①

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大学のいじめっ子シリーズ 登場人物まとめ

 

 

 

「ねぇ~Watako~。昨日のゼミで音無ってば大出先生のこと怒らせたんだって~?」

 

前回のゼミの出来事から次の日、白石が私にこう言ってきた。

 

「なんでそのこと知ってるの?」

 

と聞くと

 

「え~~~~ミンコとドキコから聞いたんだよぉ~。あの二人ってば大出先生のキレっぷりとかぁ~怒られてる音無のみじめな姿とかめっちゃ面白おかしく教えて来たんだよぉ~~~」

 

と白石は言った。そして日吉は

 

「それでその状況でWatakoは音無に助け船出してたんだって?」

 

と質問して来た。

 

白石と日吉はミンコとドキコともう関わりたくないと何度も言っていて関わりを少なくしていた。

しかし、はっきり絶縁宣言してと縁切りすることはしなかった。

それはミンコとドキコから恨まれて揉めることになることを恐れていたからである。

なので白石と日吉はミンコとドキコとは話しかけられたら話す程度の仲レベルから初めてそこから少しずつ関わりを薄くして平和に過ごそうとしていたようだった。

 

だけど二人はミンコとドキコのことを関わったら面倒な人間だから切りたいと口では言いつつも、反面、どこかかわいそうなネタ要員だとも思っているようで私(Watako)の味方だと言いながらミンコとドキコに絡まれている私(Watako)の状況を他人事のエンタメのように面白がっているような節があるように見えた。


ここで改めて白石と日吉の人間性について二人と半年間関わって個人的に感じたように書いていく。

 

白石はふざけ好きな笑い上戸のような感じで、誰かに何か真面目に注意されてもどこ吹く風といった感じで学科内ではミンコとドキコよりも毒気は少ない方だが要注意人物扱いだった。

からかい癖やいじり癖がひどくて、他人や物事をすぐに茶化して相手が怒っても「ネタじゃんww」「こんなのギャグじゃんww本気にするほうがバカなんだよwwwノリわっるwww」というような自称一軍のようなメンタルを大学生になってまで少し引きずっているような片鱗が時折垣間見えた。

 

どうやら、白石は今までの人生を通じて

「いじめる側に回ればいじめられない」

「いじめ加害者のほうが人数多いしリア充でイケてる」

「いじめ加害者は人生の勝ち組確定だからいじめる側に回れば人生何もかもうまくいく」

と独自に解釈して学んだようで、

「いじめ加害者は要領が良くて生きる能力も高くて一生幸せ」

という価値観をなんてことないように自然と言葉や態度に出していた。

なので他人のいじめられた系のエピソードや理不尽に傷つけられた系エピソードを聞いたりしたときは、そのような片鱗を計算できているときは見せないが気が緩むといじめ加害者側に肩入れしたり、いじめ加害者側を擁護するような発言をしがちだった。

そして何より他人の不幸が好物のようだった。

そして、その部分については自分ではうまく隠せていると本人思っているようだったが、周囲にはその部分を見抜かれていて、だけど本人はそのことなは全く気が付いていない、そんな感じの子だった。

 

 

日吉は、白石の揉め事を第三者視点で腹黒く楽しんでるような言動にどこか思うところはあっても、今までの人生で得た経験から日和見しているような感じだった。

なぜ日吉がそのような性格になったのかというと、元々の性格もあるのだが中学時代の出来事が関係しているようだった。

 

日吉は中学時代に学級崩壊しているクラスに所属していて、その学級崩壊の主犯は美形で勉強のできる男子で誰も逆らえず地獄のような毎日を送っていた。

その男子(以下:サイ夫)について、日吉は「悪魔ってこの世に存在するんだ」と思ったそうな。

 

サイ夫は自分からは動くことはなく不良などを煽ったりして授業中にターゲットを一人決めて暴力を伴ういじめをしていた。

毎日、授業中にいじめられっ子は体格のいい不良にサンドバックにされて殴られ、時々投げ飛ばされていた。

そして、その投げ飛ばされたいじめられっ子にぶつかってしまうと次の日からそのいじめられっ子(男)と一緒にいじめのターゲットになってしまうので日吉や他の授業を真面目に受けたいクラスメイトは毎日「こっちに飛んでこないで!」と願いながら過ごしていたという。

私はその話を聞いていじめはダメだという考えは変わらなかったが、もし中学時代に日吉と同じ立場だったらきっと日吉と同じように思っていたし、日吉と同じ選択をしてしただろうとも思った。

もしその状況で女子一人で「やめなよ!」なんて注意しようものなら次の日からいじめれっ子と強制的にカップリングさせられてセットでいじめられるだろうし、最悪、無理矢理性的な行為を強要される可能性すらある。

 

そんな状況でいじめを止められるようにうまく動くのはとても難しいと思う。


そして、もし、止めるとしたらクラス内にいる学級崩壊&いじめ反対組で集団を作って一致団結して学級崩壊させたい組と戦争する覚悟で挑まなければならないだろう。

だけど、そこまでできる人間がこの世に何人いるだろうか?

そして、自身がそのような団体を勇気をもって先導できるか、前線に立って戦えるのかと問われたらハッキリ「できる!」とは言えない。


日吉は高校進学した後も中学時代のようにいじめられたくないという気持ちから、すべての価値基準が「イケてるorイケてない」というような極端で閉鎖的な価値観を持ついじめ気質のタイプの子とつるんでしまい、害はないのにただ「イケてない」という理由で大人しめの子に対して、いじめ気質の子たちと一緒に聞こえるように「キモッ」などの傷つくような言葉を言ってその言葉でその子たちが傷ついた反応を見て溜飲を下げていたらしい。

内心、悪いことをしている自覚はあったものの中学時代の経験から自己保身が強い性格になってしまったようで大学でもミンコとドキコのようなタイプと仲良くなってしまったようだった。

 

 

以前の記事にも書いたが、白石と日吉は大学生になるまでどちらかというといじめ加害者に目を着けられたくなくて、いじめや嫌がらせに保身のために加担していた経験がある人間で私はそのようなタイプに対してはいじめ加害者同様に嫌悪感を抱いていた。

だけど、白石と日吉は大学に入ってミンコとドキコと関わってその考えに変化が訪れた。

ミンコとドキコに「友達だから」という理由で安易に貸したお金を返してもらえない(少額なので言い出しづらいとのこと)、都合のいいように利用される、学内で話したことがない人や街中にいる知らない通りすがりの人の悪口や偏見に満ちた陰口に付き合わされたりしてストレスがたまってしまったことと、ミンコとドキコのようなタイプは大人になるにつれて周囲から距離を置かれるような存在で無理に付き合わなくてもいいということを学び、変わりたいと思っていたようだった。

そんな二人を無下に切り捨てるのはちょっと短絡的かなと思い私は二人と親しくしていた。

 

また、個人的に二人と関わることでいじめに加担したりする人間の心理を知りたいという好奇心があった。

なので私は二人は変わろうとしている渦中なのでまだこのような、コウモリ的な言動もしょうがないのだと今後の生きて行く上での学びの一貫だと思って割り切って付き合っていた。

 

 

 

そして前回のゼミから数日後、研究室の新4年生歓迎会をやることになった。

そこで私は大出小三という人間とそれを取り巻く人間のカオスさを目の当たりにすることになるのであった。

 

→大学のいじめっ子⑪

 

 

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大学のいじめっ子①

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大学のいじめっ子シリーズ 登場人物まとめ

 

冬休みが終わって4年生は各々所属する研究室が正式に決まった。

 

私は平面のデザインについてやりたかったのでデザイン学科の助教授の大出小三の研究室を希望して、なんとか希望通りに大出助教授の研究室に配属することになった。

ミンコとドキコも同じ研究室になった。

ミンコとドキコが私と同じく大出の研究室を希望していることは白石や日吉からの情報で知っていたが大学の固定化されていない人間関係に馴れきっていた私は「もう大学4年生だし同じ研究室だからってそこまで深くかかわることはないでしょ。それにそれぞれ卒業研究で忙しくなるからいじめなんていしてる暇ないでしょ」と考えてやりたいことを優先してミンコとドキコと同じ研究室を選んだのだ。

白石と日吉はミンコとドキコともう関わりたくないからと二人で大出の研究室に所属するようなそぶりを見せながら別の研究室を希望してそこに所属することになった。

 

私はミンコとドキコのせいでやりたいことができなくなってしまうのは違うと思って彼女らと同じ大出助教授の研究室を選んだがそれは大きな間違いだったと後から気づく。

 

研究室というのは1年間同じ部屋で研究をやっていくメンバーなのでなんだかんだで関わらなければならない。

 

毎週決められた曜日に研究の進捗報告というものをしなくてはならないし、研究室に行ってPCを使いながら調べ物をしたり報告書を作成したり、卒業研究の成果物の作成をすすめたりするので、卒業の時期が近くなればなるほど同じ研究室の人間が出入りや滞在時間が増えていくのでいやでも苦手な人間と顔を合わせる機会が増えていくばかりなのだ。

 

このときの私はそんなことがあるとは露も知らずミンコとドキコのことなど時間がたてば解決するだろうと楽観視していた。

二人と同じ研究室に所属することがさらなるいじめられる日常の、ストレスMAXのパワハラ・モラハラ自己愛強め集団からのターゲットになる日々の始まりだとは知らずに。

 

私と同じく大出助教授の研究室に配属されたのは私も含めて4年生男女8名と大学院生の女性1名。

大出助教授の研究室に配属が決まった私たちに大出助教授は自身が銀座で開催する入場料無料の個展に来るようという課題を与えられた。

期間は10日間でそのうちの一日でもいいから見に行ってその際に来場者名簿に名前を記入していくというものだった。

 

銀座は私が通うB大学のキャンパスからも学校近くの寮からもとても遠い場所にあって、交通費はもちろん自費だったので少し気が重かったがこの程度でへこたれていては、これからも都内で生活なんてできないと思い個展に行った。

(往復で1000~1500円くらい。人によっては安い方だが貧乏苦学生にはまぁまぁの出費)

 

大出の個展に行った際にミンコやドキコと遭遇してしまったらどうしようと思っていたが、私が言った日にはミンコとドキコは来ておらず、個展は小さなビルの地下で行われていて大出助教授が作った大型~小型の作品が数点並んでいる小規模なもので滞在時間は大出助教授と会話した時間なども含めて20分程度だった。

思ったよりもあっさりと課題が終わったので私はその日は同時期に他のビルでも行われている他の入場料無料の個展に立ち寄ったりして普段は行かない銀座付近を満喫した。

 

 

そして次の週の月曜日に初めてのゼミが行われた。

その時、大出はゼミについての説明を一通りしたあとにこう言った。

 

「この中に僕の個展に来なかった人間が一人います」

 

(え?何?)

 

教室内に緊張が走り、ゼミの学生たちはざわつき「誰だ、誰だ」「なんだなんだ」と周囲を見渡し始めた。

 

「音無さん、どうして僕の個展に来なかったんですか?」

 

(え?!音無?!)

 

私は隣に座っていた音無の方を見た。

音無は大出に名指しされたことで恐怖を感じてびくびくと小動物のように震えていた。

 

「どうしてですか?何か大事な用事でもあったんですか?ただ10日間のうちの一日だけ僕の個展に来ればいいという簡単な課題なのにどうしてそれだけのことができなかったんですか?

 

「あ・・・その期間は部活の合宿中で都内にいなくて・・・」

 

「その部活って何の部活ですか?合宿というのは何日間行われたものなんですか?」

 

「・・・・」

 

大出は穏やかだがどこか冷たい感じのするトーンで追及するように音無に話しかけた。

音無は大出の態度に恐怖を感じてそれ以上離せなくなってしまいそのまま無言になってしまった。

教室内が静かになりゼミの参加していたメンバーのの視線が音無に集まって音無はさらに身体を縮こまらせてしまった。

 

音無は派手に自己主張をするタイプではなかったが特別無口なタイプでというわけではなく私や仲良しの友人たちとは楽しく会話する子だった。

だが、大勢に注目されるようなで状況でピンポイントで話しかけられたりすると無口になってしまうタイプの子だった。

私はこのままではさらに大出が何も言えずに黙っている音無に対して激高してその様子を見た音無がさらに委縮して何も言えなくなるのではという展開を想像してしまい「このままではまずい!なんとかしなきゃ!」と思い行動に出ることにした。

 

「音無が入ってる部活って確か吹奏楽部だったよね?」

 

私は音無を怖がらせないように音無が話しやすいように、慎重に、大出が音無にした質問を再度してみた。

 

 

「うん・・・」

「その合宿って何日間だったの?」

「えぇっと・・・一週間くらい・・・」

「そっか~」

 

音無は小さな声でおそるおそるだが質問に応えてくれた。

だんだんと話せるようになった音無に対して大出はこう言った。

 

「部活というのも学生時代に大切かもしれませんが、それは僕のゼミの課題をさぼってまで打ち込む価値のあるのですか?吹奏楽部・・・ねぇ」

 

大出は嫌味っぽく音無を見ながらそう言った。

B大学はスポーツ推薦などで入学してくる学生も多いのでそのような強豪の部活に入っている学生ならばある程度は大目に見ようと思っていたのだろう。

 

(もしスポーツ推薦で我がB大学への入学が決まった際の学科選びでうちのデザイン学科を選んでしまうと在学中は部活のレギュラーに選ばれなくなってしまうくらい課題が多くて必修の講義も多くて忙しい)

 

うちのB大学の吹奏学部はそのようなスポーツ推薦を積極的に行っている体育会系の部活に比べて特別強豪というわけではない。

そのことから大出は「レベルの低いうちの文科系の部活で合宿?それは自分のゼミの課題をさぼってまでやる価値のあるのものなのか?」というような意味あいを含んだような言い方をしたのだ。

 

大出のやり方は正しいようで、個人を人前でつるし上げて嫌味をいうという行為はいくら課題をさぼってしまったとはいえやりすぎだ。

確かに音無には合宿が終わってからもまだ2~3日はあったので合宿が終わってすぐにでも大出の個展にいけば今回のような事態にはならなかった。

 

そして、大出からそのような意味を含んだ言葉を言われて音無はすぐにそうすればよかったと思い反省した。

 

それなのに、大学の担当助教授の個展に行かなかったということは、ねちねちと時間をかけて人前で恥をかかせるように責められなければならないレベルのことなのか?

私にはそれがわからなかった。

 

私はこのときうっすらと大出が音無に対してした説教は、ナルシストで自己中な芸術家気質から来るもので、自身の個展の来場者数をあげることに貢献しなかった、自分の作り上げた素晴らしい作品を見に来なかった不届き者への説教なのではないかと思った。

そしてそれはその後に当たっていたことを知る。

 

「はい・・・すいません・・・・」

 

音無は大出に対して消え入るような声で謝罪をした。

その姿を見て満足したのかその日は大出は音無をそれ以上責めることはせず、他のゼミ生に対しては今回音無がしたように課題をサボらないようにという注意喚起のような言葉を行ってその日のゼミは終わった。

 

音無は大出に責められたことで意気消沈していて

 

「Watako・・・ありがとね。私、すごく悪いことしちゃった・・・」

 

というと教室を出て行った。

申し訳なさそうに教室を出ていく音無に対して私はそれ以上何も言えずに黙って見送った。

 

「ね~今日まじやばくなかったぁ~?ね~ミンコ~」

「わかる~wwwwマジやばいよねwwwww私はあんなヘマしないようにしよ~っと」

 

そんな私と音無の姿を見てミンコとドキコはどこかエンタメのように面白がって笑っていた。

 

大学のいじめっ子⑩

 

初めての方はこちらから↓

大学のいじめっ子①

大学のいじめっ子シリーズ登場人物まとめはこちら↓

大学のいじめっ子シリーズ 登場人物まとめ

 

 

過去にミンコにいじめられていたきび子がミンコの意見に同意したのには考えられる理由が2つある。

 

一つ目の理由として考えられるのは「プライドを傷つけられたから」

 

きび子は絵を描くことが何よりも誰よりも好きで絵を描いている自分に高い誇りとプライドを持っていた。

休み時間や大学の講義の空きコマの間も暇さえあれば絵を描いていて、2年生のときに共通で受けた講義で自分が寝ているときに見た夢についてパワポで資料を作って発表するという課題があったときには、きび子は片腕がなくなった夢を見てその内容について発表していた。

 

「夢の中の私は片腕がなくなったことについて特に動揺していなくて、でも”私は片腕がなくてもこれからも死ぬまで絵を描き続けるんだ!”と思っていた」

 

と話していて、さらに自分の主義主張を補強するかのように現役で活躍する片腕の画家の名前を出して自分もその画家のように何があっても絵を描き続けると主張していた。

 

そのような気質だったのでスケッチ教室のときにマニアックな画材について話していた私にイラついたのだと思う。

 

そして2つ目の理由は単純に私のことが嫌い、気にくわない、気が合わないと思っていたからであろう。
 

私は大学2~3年生のときにきび子の不興を買ってしまった出来事が何度かあり、思い出せる限りでは3つの出来事があった。

 

 

Watakoのきび子に嫌われ事件簿①

「トナラー事件」

 

当時、きび子と私が住んでいる場所は近くてその日の学校帰りの電車で私はきび子と遭遇した。

電車内はガラガラできび子はドア近くの端の席に座っていて、私は「きび子~」と話しかけながらきび子の隣に座った。

きび子はタブレットで何かを見ていて私に気づいて軽く会釈をしてからもタブレットに集中していた。

私はきび子が何をしているのかが気になり

 

「きび子~、何してるの?」

 

と隣に座るきび子の横顔を見ながら話しかけた。するときび子は

 

 

「ちょっと!!人のタブレット勝手に見てこようとしないでよ!!最っっっっ低!!そういうのマナー違反だって教わらなかったの?!常識ないの?!ありえないんだけど!!」

 

「ごっごめん。でも、タブレットの画面は見てないから安心して!きび子の顔を見て話しかけたからが何してたかわかんなかったから!」

 

「ハァ?!そういう問題じゃないから!それに車両がスカスカなのにわざわざ隣に座ってこないでくれる?!それもあり得ないから!常識ないの?!」

 

きび子はそう言うと座席から立ちあがって、隣の別の車両に足早と移動していった。

まだ、世に「トナラー」という言葉が出てくる前だった。

「トナラー」という言葉を知った時に、私はきび子が怒った理由が分かった。

きび子的には、同じ電車で遭遇して挨拶して少し会話するのはまだ常識の範囲内だったが、その後に「じゃあね」「またね」など一言言って違う車両に移動してそこで会話終了というのが正しい距離感だったようだ。

仲がいい(同じ学科でそれなりに会話する子)と思っている子がスカスカの車両に乗っていて、声をかけて隣に座っておしゃべりするという行為は私にとってそれほどおかしな行為ではないと思っていたが、きび子にとってはNGな行為だったのだ。

 

そもそも仲がいいというのも私の思い込みで”私”だったから嫌だったのかもしれないし、気分的な問題だったのかもしれない。

当時の私ははただきび子は”そういう人なんだな”という認識しかしておらずきび子に嫌われている、きび子とは相性が悪いなどという考えは浮かばなかった。

なので、このようなことがあっても私はそれからもきび子に話しかけたりしていた。

 

Watakoのきび子に嫌われ事件簿②

「共感しなかったからブチギレられた事件」

 

それはある日の空きコマの時間、私は同じように空きコマの時間に仲がいい同じ学科の人が集まっている教室を見つけてそこにいた。

その教室には私を含めて女子5人がいてその中にきび子もいて、その日のきび子はお腹をおさえて机に突っ伏していた。

理由を聞くと、きび子は生理で重い生理痛で苦しんでいるとのことだった。

 

 

「あぁ~~~~~~なんで女はこんなに毎月毎月苦しまなきゃならないんだ~~~~~~~~不公平だ~~~~~~」

 

「あはは・・・辛いよね~~~~~。まぁ、でも男に生まれて生きるのも生理痛とはきっと違う苦しみがあるよ~~~」

 

私はきび子にそう返した。

するときび子は

 

「あのさぁ・・・!こういうときはただ共感してくれるだけでいいのになんで余計なこと言ってくるわけ?!人が苦しんでるときに否定系のこと言ってくるとかデリカシーないの?!」

 

と机に突っ伏したまま、私をにらみながら普段よりもドスの効いた低い声でそう言った。

私はハッとしてすぐに謝ったがきび子から許してもらうことはできず、きび子に対して悪いことをしてしまったと思いしばらくきび子関わらないようにしていた。

この経験から、私は共感を大事にして会話することの大切さを知った。

 

 

 

Watakoのきび子に嫌われ事件簿③

「先生役放棄事件」

 

ある日、私が授業の課題をできなくて悩んでいるといち早く課題を終わらせたきび子が機嫌よく満面の笑みで

「しょうがないなぁ~私が教えてあげるよ!」

といってわからない問題を解くことを手伝うと言ってきた。

しかし私はきび子の説明をすぐに理解できず、きび子の顔から笑顔が消えていった。

そして開始2分くらいで

 

「なんっでこんなんもわかんないの?!」

「なんで理解できないの!!ほんっと頭悪い!!」

 

ときび子は激高し始めた。

そして

 

「もう知らない!!勝手に単位落とせば!!」

 

といってそのまま教室のドアを乱暴に閉めて出て行ってしまった。

私とその教室にいた人間はきび子の言動に唖然としてしまい教室内は静寂に包まれた。

その後、優しい他のクラスメイトの力を借りてその日の課題をこなして単位も無事にとることができた。

 

この一件から、私はきび子が怖くなってしまい積極的に関わることはだんだんとなくなっていった。

 

きび子は私以外の人とも度々衝突していて、学科内で誰かと仲良くなっては喧嘩→疎遠というを繰り返していたた。

そのため、きび子はだんだんと学科内で周囲から避けられ気味な存在になっていてた。

自身が避けれられている事実に気づいたときにきび子があれだけきつく当たってきていた私に対して弱々しく話しかけて来たときにはとても驚いた。

 

きび子は言葉や態度がきついほうだが、それほど強い人間ではないのだなと私はそのとき思った。

 

 

きび子もミンコもデザイン学科の学生としてそれなりにプライドを持っていた+「私は能力が高くてすべてにおいてWatakoより格上の人間だ!」という考えで生きていてマウンティング気質だったために私の発言にむかついたのと、そしてきび子もミンコ同様に単純に私のことが嫌い、気が合わない、気にくわないと思っていたのだろう。

 

(仲が良かった白石と日吉を奪った極悪人認定して私を逆恨みでいじめてくるくらいだし)

 

二人とも趣味趣向も違うし仲もよくないが「自分は誰よりも絵がうまくて知識があって周囲にいる人間の中で一番能力が高くて素晴らしくてすべてのことにおいて格上の人間だ」「Watakoのことが嫌い・気にくわない」という部分が共通していたために敵対していたにもかかわらず今回の件では意見が合致したのだと思う。

 

そして、ミンコもきび子もナルシストだった。

 

私の発言に対して怒りを感じたミンコときび子は二人とも共通してプライドが高く、能力が低いと格下認定した相手(Watako)に対してはどの分野であろうとも勝っていたいという気質を持っていたのだ。

 

ただ、二人はナルシストだが似ているようでタイプが違っていてミンコは

「たくさんの人から称賛される私SGEEEEEE」

な周囲に認めてくれる信者が存在することで自己を肯定できるタイプのナルシストで、きび子は「才能ある私ってSGEEEEEE」

なナルシストでいくら信者がいても目に見える結果(数字)や成果が出なければ意味がないと感じるタイプのナルシストだった。

 

 

きび子は自分の信者を作って幅を利かせることによって承認欲求を満たしたがるインフルエンサー系のミンコとは違って人脈を作るのはあまり得意でない職人気質の気難しい親方タイプだった。そして、ミンコに比べて不器用で人間的な可愛げがあって向上心もあり正当な過程を経て評価されることを願うタイプだった。

 

しかし、きび子もミンコ同様に不機嫌で周囲を振り回したり、失敗したりうまく出来ない人を見つけては指導や注意の名目で周囲に自分の有能さをアピールするかのように大声で怒鳴りつける・ひどい言葉でなじるなどの行為を

「正義執行!」

とのたまい実行するパワハラ・モラハラ気質を持っていた。

 

 

スケッチ教室での一件から、ミンコはきび子に対して1年生のときのようにバカにするような態度をとることなくなり、むしろ同志的な感情を抱いたようだった。

もしかしたら、ミンコはこの頃からきび子のことを私を追い詰めるための協力者のように思い始めていたのかもしれない。

 

今回の記事は底辺女子高シリーズです。

女子高とはいっても、私がX年前に通っていた女子高の場合はこうだったという記事なのですべて女子高に当てはまるわけではないので軽い気持ちで読んでください。

過去記事はこちら↓

 

底辺女子校に入ったらどうなるの?② 女子校のスクールカースト 怒子の場合 前編

 

底辺女子校に入ったらどうなるの?②女子校スクールカースト編 怒子の場合 中編

 

 

高校に入学してから3か月がたった。

怒子のブチギレ事件や怒子の彼氏との破局事件など怒子関連で色々なことがあったがそのうち、私も怒子と仲がいい子たちも怒子の機嫌よりも学校の勉強や部活のことや学校外の交友関係や活動ことのほうが重要になっていたので怒子に対して時間や暇や精神をさくことがなくなっていた。

 

当の怒子も演劇部に入部してイキイキとしていた。

演劇部は怒子の性に合っていたようで怒子は

 

 

「あたし、女優になる!」

 

と高らかに宣言するほどだった。

 

そして迎えた怒子の初舞台。

その日、怒子は体育館でダンスを披露した。

怒子のパワフルな踊りに私や観客は釘付けになって体育館は大いに盛り上がった。

怒子はかなり目立っていたようで、他の学年やクラスの子も「あの子、すごかったね~」と怒子のことを話題にしていた。

 

(やったじゃん!!怒子!!こんなに注目されてすごい!!)

(これで怒子が満たされて情緒が安定すればいいんだけど・・・・)

 

私は今回のステージ発表の成功体験がきっかけで怒子が自信をつけて、怒子の態度や人生がいい方向に行くといいなと思った。

 

しかし、誰もが成功だと思っていたステージ発表は怒子にとっては”失敗”だったようで

 

「ありえないんだけど!!」

ステージ発表が終わってから3日ほどたってから怒子は毎度のことながら突然キレだした。

 

「だってひどくない?!あたしのステージ発表のダンス見て口々に話したこともない奴らが「おもしろかった」だの「なんかすごかった」だの好き勝手言いやがって失礼にもほどがある!!」

 

「?それってどこがひどいの?どっちも悪い言葉のようには思えないけど・・・」

 

私がそう聞くと怒子は一瞬黙って

 

「・・・・とにかく!あたしもうあんなやつらに好き勝手言われるのなんてもう嫌!!」

 

と言った。

私はなぜ怒子がそのように怒ったのかそのときはわからなかった。

そのあと、色々考えた結果、おそらく怒子が欲しかった評価は高価で希少な美術品ににされるような評価だったのに、実際にもらえた評価は個性的なゆるキャラに対するような評価だったからなのだろうと思った。

怒子が本当に欲しかったのは「美しい!!」「この世に二つとない!!」「アメイジング!!」

といった評価、もしくは「あんな風になりたい!」「憧れる!」みたいな化粧品のイメージキャラクターに選ばれるような正統派の美形芸能人に対してされるような類の評価だったのだろう。

しかし、世間は怒子に対して「おもしろい」「個性的」「かわいい(ゆるキャラとか個性的な姿・形の動物に対してのものでそれになりたいわけじゃない)」と怒子の求める評価とは違う評価を怒子にした。

その理想と現実のギャップに憤怒したのだろう。

 

(女優になったら多分、今回みたいに見た人に好き勝手に評価される日々なんだけど。怒子、女優の夢どうするんだろ~?)

 

私は怒子は承認欲求が強くて、演劇部に向いていると思っていたし、演劇部に入ったことによって情緒が安定しだしたのを見ていたのでできるだけ演劇部の活動を続けてほしかった。

私は怒子が演劇部を辞めることによって注意魔の部分が大幅にパワーアップして暴走する危険性を危惧していた。

 

しかし、怒子はなんだかんだで演劇部の活動を継続することにしたようで私の心配は杞憂に終わった。

 


 

 

 

前編・中編・後編・で読んでくれた方々、ありがとうございます。

怒子のエピソードはまだまだ続きますが今回はここまでとなります。

 

今回の前編・中編・後編は当初の予定では女子校スクールカースト上昇を目指した怒子について書いていこうとしたものの、結果的に怒子がどのような子なのか知ってもらうための序章のような記事シリーズになってしまい申し訳ございません。

 

次回から、タイトルを変更して怒子がスクールカースト上昇のためにどのような行為をしたのか、その結果どのような高校生活を送ったのかについてについて覚えている限り詳しく書いていきたいと思います。

大変長らくお待たせいたしました。

最初に前後編にすると言ったのに前編・中編・後編の3部制になってしまい申し訳ございません。

 

今回の記事は底辺女子高シリーズです。

女子高とはいっても、私がX年前に通っていた女子高の場合はこうだったという記事なのですべて女子高に当てはまるわけではないので軽い気持ちで読んでください。

 

この記事は前編の続きです。

初めて読む方は底辺女子校に入ったらどうなるの?② 女子校のスクールカースト 怒子の場合 前編からお読み下さい。

 


 

「私はあんたらみたいな○○要員とは違うから~!だからこのラインの内側には入ってくんなよ~!」

 

怒子は彼氏ができてから私もふくめて仲が良かった子達に対して冗談まじりで選民的で差別的な思想を丸出しにしたような態度や発言を繰り返していてそれは日々を追うごとエスカレートしていった。

彼氏ができる前は怒子とアニメや漫画の話題で盛り上がっていた子がいる前で

 

 

「彼氏ができたからアニメや漫画なんて子供っぽくてキモいもの卒業しなきゃ♪彼氏に嫌われちゃうもん♪」

 

 

など「勝手にすれば?だけどその発言どうなの?大丈夫?」と思われるような発言したり、アニメや漫画よりも芸能関連やアイドルの話題が好きな仲良しの子についても怒子は自分勝手な裁量で同じアニメ漫画系のオタクカテゴリーに入れて、私や他の彼氏がいなくて学校に毎日すっぴんで登校するタイプの人間をどんどん遠ざけていた。

 

しかし、怒子にはアニメ・漫画を簡単には卒業できなかったようで

 

 

「〇ャンプ漫画を読んだり、〇ャンプアニメ観るのはオタクじゃなくて一般人だし!」

 

「オタクっていうのは深夜アニメとか見てるやつのことでしょ?私は違うし!」

 

 

 

など怒子は独自のここまではセーフだというラインを作って自分はイケてる女子であると主張していた。

 

上記の怒子の発したオタク嫌いなオタクの典型のような発言は、今まで怒子とアニメ・漫画の話題で盛り上がって仲良くしていたメンバーから反感を買った。

 

しかし、当の怒子はどこ吹く風で毎日のようにイキり散らしていた。

 

そして冒頭の発言は、アニメ化(深夜放送)されたこともある某有名少女漫画の中に出て来たキャラクターの発言を真似したものである。


↑あれだけ観ないと言っていた深夜放送のアニメのネタを使うことに関しては怒子いわく、「少女漫画は女の子のものでイケてる女子も読んでるし恋愛描写があるから視聴してもオタクじゃないから」とのこと

 

※〇〇の部分は令和では完全なる差別的表現になるものだったので伏字にしました。

※作品の名誉のため作品名は伏せさせていただきます。

 

(アニメや漫画がキモいといいながら、後からアレはよくてこれはダメみたいな発言して漫画のキャラのネタを会話に盛り込んでイキるとか・・・もうわけわからん)

 

怒子の言動に呆れていた私は

 

 

 

「怒子も遂にオタク卒業か・・・寂しいね・・・」

 

 

と言い目伏せして冗談っぽくしんみりムードを作って

 

「怒子ーーーーーー!オタク卒業してもわたしたちのこと忘れないでねーーーーー!」

 

 

と小学校の卒業式のときに卒業生が一人一人する呼びかけのように怒子に対してギャグっぽく返した。

 

怒子は私から余裕のある返しをされることが予想外だったのと自分のワンマンステージを台無しにされたからなのか

 

 

「はぁ?!なんなの?!」

 

 

と言ってきたが私は怒子のイキりに対してうまくあしらえたことに満足していたので晴れやかな気分だった。

 

 

 

「ふんっ!!なによ!なによ!なによ!寄ってたかって私のこと仲間はずれにして!!」

 

 

(仲間はずれになんてしてないけど・・・)



「ムッッッッカァァァァァ!!絶対にあんたらなんかよりも幸せになってやるんだから!」



(どうぞどうぞ~)

(というか、漫画の効果音みたいなのを言葉にして言う人ってリアルにいるんだな…)


 

 

それが金曜日の出来事だった。

 

そして週明けの月曜日、仲良しの者同士で談笑していると

 

 

「みんな~♪おっはよ~ん♪元気~?ねぇ~見てみてぇ~ん、じぁ~ん☆☆新しいBL本買っちゃったぁ♡」

 

 

怒子はルンルンしながらハイテンションで登校してきて、朝一番に教室内で二次創作BL本を見せびらかしながら話しかけて来た。

 
「い・・・怒子?どうしたの?朝から・・・?オタク、卒業するんじゃなかったの?」
 
私がそう質問すると怒子はハイテンションな笑顔を消して無口になった。
そしてぽつりと言った。
 
「彼氏とは・・・別れたし・・・」
 
「えぇ・・・土日に一体なにがあったの・・・?」
 
「も~~~~~~!そんなことあんたらになんか話してもわかんないし!言いたくなぁい!」
 
(私たちに言いたくないか・・・・まぁ私、彼氏いないし、それもそうだな~。言いたくないならしょうがない)
 
 
 
私と他の仲良しの子もそれ以上追及するは野暮だからやめようと思ったとき、怒子は誰かを見つけたようで、怒子の先ほどまでどこか哀愁を漂わせて虚ろ気味だった目がキランと効果音を立てるかのように一変した。
 
「ねぇ~~~~~~聞いてよ~~~~」
 
どうやら、怒子は彼氏とのことは彼氏持ちの話を聞いてくれそうなイケてる女子グループの子に聞いてほしかったようでそのクラスメイトと一緒にそのまま教室の外に出て行ってしまった。


(仲良しの友達だからってなんでも話せるわけじゃないっていうのはわかるけどなんか用途分けしてますよってわかるようにあからさまに出されるのってもやもやするな・・・。でもこれから怒子はどうなるんだろう?また前みたいに支配欲丸出しになったら困るな・・・)
 
 

 

後編へ続く

 

 

 

 

 

どうも、Watakoです。

今回の記事は底辺女子高シリーズです。

女子高とはいっても、私がX年前に通っていた女子高の場合はこうだったという記事なのですべて女子高に当てはまるわけではないので軽い気持ちで読んでください。

 

”スクールカースト”

 

それは、実は異性の存在がいると明確になり出来上がるものである。

しかも、女の世界は基本的に横並びの世界なので女子高は実はスクールカーストができづらい場所なのである。

存在するのは、同じ価値観や趣味を持ったグループ分けでありそこに格差は基本的にはない。

(と私は思っている)

 

なので、高校デビューしてイケてる女子高生になりたい!という子が女子高に進学してしまった場合は悲惨である。

今回は、そんな女子高でスクールカースト上位を目指した二名の人間がどのような運命を辿ったのか、そしてどうなったのかについて書いていく。

 

①怒子(いかりこ・仮名)の場合

怒子というのは別の記事で紹介した私が底辺女子校時代に知り合った子なのだが、実は彼女は1年生のときイケてる女子高生を目指して奮闘していた。

怒子は初対面ではアニメや漫画が大好きなフレンドリー面倒見が良い子のように見えたのだが時間が立つにつれてだんだんと支配欲が強い部分を出してきた。

怒子の支配欲が強い部分を露にしたのは、1年生の5月中盤頃の授業で老人ホームの壁を装飾する飾りを折り紙などで作っていたときだった。

各々気の合う者同士でグループになって和気藹々と私語禁止ではなく、相談し合ったり談笑しながらがOKな授業だった。

私と怒子は当時はまだ仲が良い方だったので他の仲が良い子と机をくっつけて作業をすることにした。

他のグループ同様に、わいわいやっていたのだが、机を寄せて私が隣にいた子に「なに作ろっか~」と話しながら作業をしていると怒子は突然、

 

 

「静かに作業しろや!」

 

 

と、ものすごい剣幕でブチギレ出した。

 

わたし達のグループは特段大きな声を出しておらず、どちらかというと他のグループよりも声の音量に気をつけて作業していた。

なので、怒子が突然キレたことにとても驚いた。

 

「怒子~、どうしたの~?いきなり~」

 

私は普段の怒子の振る舞いから考えられないほどのブチギレ具合に、驚きながらも怒り怒子をなだめるように話しかけた。

しかし、

 

「だぁ~かぁ~らぁ~…静か作業しろっつってんだろ!黙ってやれや!!」

 

 

と感情をむき出しにして今にも爆発しそうな様子の怒子の様子を見てただごとではないという様子。

これ以上怒子に何か反論したら教室内の空気が悪くなるし面倒なことになると感じた私たちは怒子の言う通りに口を閉じて、他のグループが会話をしながら楽しそうに作業をしている中でお葬式のような雰囲気で作業をすすめることになった。

 

黙ったまま作業をすすめながら10分程度経過してから、ふと怒子を見るとグループのメンバーは怒子の言う通りに黙って作業していたにも関わらず怒子はなぜか不満気で不機嫌そうな表情のままだった。

 

私は怒子の機嫌を伺わなければならない雰囲気の中で作業しなかればならないことに耐えられずに席を立ってトイレに行くと言って教室の外に出た。

トイレ前に行くとそこには同じグループで作業していたスネ子(仮名)がいた。

スネ子も怒子の機嫌を伺って言いなりにならなければならないような雰囲気に耐えられずに教室の外に出て来たという。

その後、スネ子と少し会話をして教室に戻ろうとしたところで授業終了のチャイムが鳴ってその日はそれで終わった。

 

 

怒子はその日から、仲良しグループのメンバーのぶっきらぼうだが優しく面倒見がいい一面もある力子に対して

 

「なんであんたってそういう態度なわけ?!」

 

と力子の性格を矯正させるという名目で一方的に下手したら力子が周囲から誤解されて嫌われるように怒鳴りつけるなど横暴な一面を隠さずに出してきていた。

最初はもしかしたら怒子と力子の間に私たちが知らないだけで何かあったのではないかと思ったが、すぐにこの頃には、周囲も怒子の支配欲が強くて面倒くさい部分に多少気付き始めていたので「ま~た怒子のアレか~」と怒子の言動に振り回されることはほとんどなくなっていた。

 

そんな怒子にある日、人生初の彼氏ができた。

 

彼氏ができてからの怒子は、冗談っぽくマウントするかのような感じで彼氏とのことを楽しそうに話していた。

女子高で彼氏がいない私や他の仲良しグループのメンバーにとって怒子の話す彼氏の話は刺激的でとても新鮮だった。

彼氏ができてからの怒子は気分で周囲を振り回すこともなくなり機嫌がよさそうに過ごすようになったので私たちは怒子の時々してくる選民思想丸出しのマウントなど相変わらずな部分についてはスルーしつつ過ごしていた。

 

 

後編へ続く

前編の続きです。

 

初めての方はこちらから↓

大学のいじめっ子①

大学のいじめっ子シリーズ登場人物まとめはこちら↓

大学のいじめっ子シリーズ 登場人物まとめ

 

 

大変お待たせ致しました。本編はここからスタートです。↓

 

(ま・・・マウンティング?!)

 

私はミンコのマウンティングされた発言に固まってしまった。

その部屋にいた全員もミンコの発言に呆然としていた。

すると、ミンコの隣にいたドミコがミンコをなだめるようにこう言った。

 

「ちょっと~ミンコってば、いきなりマウンティングとか・・・Watakoはそういうつもりで言ったんじゃないんじゃない?」

 

「いや!今のWtakoの言い方には絶対、バカにした感じのニュアンス入ってた!だから今のはマウンティング!」

 

 

ミンコはドキコになだめられても頑なに私にマウンティングされたと感情的なままだった。

 

(まずいな・・・そういうつもりじゃなかったにしてもそんな風に捉えられちゃったか・・・。こういうのは謝ったほうが良いのかな?)

 

私がうろたえながら色々考えていると、すると白石がミンコに言った。

 

「Watakoの話しぶりからはマウンティング要素なんて感じなかったけどな~」

 

そして、白石の意見に同意するように日吉が続けて行った。

 

「うん。うちも別にWatakoの話し方や内容はマウンティングだと思わなかった」

 

「ハァ?!」

 

距離を置かれていたが、まだ白石と日吉を友達だと思っていたミンコは白石と日吉の私をかばうような発言を聞いて、目をカッと見開いて動揺してわなわなと震え出した。

 

(やばい・・・ミンコ感情爆発5秒前?)

 

誰もがミンコが感情的になって怒り出すか、または泣き出すと思い部屋に緊迫した雰囲気が流れていたとき

 

 

「私もWatakoの言ったことはマウンティングだと思った。ていうか絶対そうだよ」

 

(えぇ?!きび子?!)

 

 

なんとミンコに過去いじめられていたきび子がミンコの意見に同意する発言をした。

 

「だよね?!わかる?私だけがおかしいわけじゃないよね!よかったぁ~!」

 

「うん、ミンコの気持ちわかるよ。Watakoのさっきの発言は知識マウント入ってた。そんなことも知らないのっていうようなバカにしてるニュアンス入ってた」

 

 

爆発寸前だったミンコはきび子自身の発言に自分の感覚がおかしいのかと不安になっていたが、きび子が意見に同意してくれて共感してくれたことに安心したのかきび子と「だよね~」と話し始めて、そして立ち上がって

 

 

「わたし、今日は嫌な気持ちになって気分が悪くなったから帰る!」

 

 

と言って部屋を出ていきミンコに付き添うようにドキコも部屋を出て行った。

 

部屋にいた私・飯尾先生・白石・日吉がミンコの言動に呆気に取られていると、それに続くようにきび子も自分のカバンを持って

 

「わたしも帰るわ」

 

と言ってきび子も自分のカバンを持ってスケッチ教室が始まる前に部屋を出て行った。

 

部屋に残った私と白石と日吉と飯尾先生はミンコとドキコときび子が連続して出て行ったのをみてしばらく呆然としていると日吉が沈黙を破るように口を開いた。

 

「えっ・・・今の何?てか帰るんか~い」

 

そして、それに続くように白石も口を開いた。

 

「何あれ?ていうか飯尾先生さ~ミンコってば飯尾先生のこと『おじいちゃん』とか気安く呼んでたけどいいの?あれ?」

 

「う~ん・・・前から注意してるんだけどやめてくれないんだよね~」

 

飯尾先生は白石に突っ込まれると困ったようにそう言った。

 

どうやら1年生のときから、ミンコは飯尾先生のことをおじいちゃん呼びしては注意されていたが一向にやめないので飯尾先生はあきらめているようだった。

結局、その日のスケッチ教室は、私と白石と日吉の3人だけ受けることになった。

 

私はミンコときび子が私を共通の敵にして気が合っていたような雰囲気だったことに一抹の不安を感じた。

そしてその不安はその後、見事的中するのだった。