初めての方はこちらから↓

大学のいじめっ子①

大学のいじめっ子シリーズ登場人物まとめはこちら↓

大学のいじめっ子シリーズ 登場人物まとめ

 

 

3月某日。

新四年生の歓迎会が学校近くの居酒屋で行われることになった。

そこは私の住む学生寮から近くて、通学する際にいつも通りがかるお店だったので私は安心した。

 

(もし住んでいるところから遠いお店で行われることになってたらミンコやドキコと帰りの交通機関で一緒になってしまうなんてことも可能性として起こりえたので本当に良かった)

 

参加者は新四年生

 

女 Watako・音無・きび子・ミンコ・ドキコ

男 真実王・ジョウ・幹野・ラノ田

 

旧4年生

女 サバ美・にこ

 

担当助教授

男 大出小三

 

研究室のOG

女 OG子

 

 

の計13名によって行われることとなった。

 

OG子はB大学出身で大出研究室出身でフリーのデザイナーで研究室が決まってから何度か進級前のゼミにも参加していて新4年生は全員面識があった。

OG子は謎多き人で、フリーのデザイナーながらCDデビューすることが決まったりしているらしく(本人談)などデザイナーの枠にとらわれずに自由に活動しているような人だった。

 

そんなメンバーとともに居酒屋に行って

案内された居酒屋の個室には大きなテーブルが二つあって、以下の図のように座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

奥の席を選んだ理由は隣にミンコ、ドキコ、きび子が座ってきたり、その3人のうちの一人に挟まれる形になったら嫌だったからである。

私の隣に音無が隣になってさらにきび子とは同じテーブルだったが、音無に間に入ってもらう形になったのできび子を怒らせてしまいきび子の不興を買うような出来事が起こることはないだろうと思い私は奥の席を選んで正解だったと思った。

だが、同じテーブルにはなぜかミンコとドキコも座ってきた。

どうやら、ミンコとドキコはどうやら現役フリーデザイナーのOG子から色々とデザイナーとしての話を聞きたかったようでそれでOG子と同じテーブルに座ったようだった。

 

「もっとお姉さまのお話聞きたぁ~い~」

 

(お、お姉さま?!)

 

ドキコはOG子を慕いOG子のことを「お姉さま」と呼び出した。

そしてミンコも同様にOG子のことをお姉さま呼びし始めた。

ミンコとドキコはOG子を慕うのは将来的にはOG子のようにフリーランスのデザイナーになりたいからというのもあったのだろうが、この歓迎会にいる人間の中でOG子は上位の人間だから今後味方につけておくといい思ったようでOG子にわかりやすいくらいに媚を売るように懐いていた。

そして話が進むにつれてOG子のCDデビュー決定の話から大出はデザイナーこそ外に出て色々な活動をすべきだという話を始めた。

 

「僕はこう見えて登山にも行くし毎年、冬にはスキーをしたりもしていて○○にも△△にも行ったことがあって・・・」

 

私が座っているテーブルは大出の多趣味さや有能さや華麗な経歴や交友関係の自慢話を大出の機嫌を損ねないように聞く場となっていた。

もう一つのテーブルではにこ先輩は唐突に

 

「ねぇ~みんなはぁ~好きな人いるぅ~?」

 

と修学旅行の夜にするような話題を出してわいわいしていた。

同じ空間にいるのに別世界にいるにいるようで、この席を選んだことを後悔していた。

将来のためになることなどを考えたら大出とOG子がいる席を選んだほうが良いのかもしれないが大出の話す内容は正直言って中身がないただの自慢話で黙って聞くだけののうなずきマシーンにならなければならないのが苦痛だった。

ミンコとドキコは「すご~い」「さすが~」と言って大出の話を聞いていた。

私と音無ときび子はただ黙ってひたすら聞いていた。

 

どうしても大出の自慢話をこれ以上聞くのもミンコとドキコのいるテーブルにいるのも苦痛だった私は隣のテーブルのにこ先輩のところにどうしても行きたくてトイレに立った。

 

飲み会で席を変えたい場合はトイレに行ってから別の席に移動したらいいという情報を思い出してそれを実践することにしたのだ。

にこ先輩のいるテーブルに行きたかったのは自己愛の強そうな大出にターゲットにされず同性に厳しいサバミ先輩に陰口をたたかれたり直接きつい言葉をかけられたりしていてもマイペースに図太く明るく振る舞うにこ先輩に感銘を受け、にこ先輩からその生き方を今後、研究室でやっていくためにも個人的に学びたいと思ったからである。

しかし、トイレから戻る途中でトイレに行こうとしていたサバミ先輩に遭遇して話しかけられた私は衝撃的な事を聞かされる。

 

「ほんっと、ありえないんだけど・・・にこのやつ・・・」

「どうしたんですか?」

「帰りやがったの!あいつ!始まってからまだ30分しか経ってないのに!」

「えぇっ?!」
 

なんと、にこ先輩は私がトイレに行っている最中に家が遠くて帰りが遅くなると親に怒られるからという理由で帰ってしまったのだ。

 これで隣のテーブルに移動したところでミンコとドキコや大出から上手く逃げられるのかと不安に思いながらも私は自然になんてことないようににこ先輩がいた隣のテーブルに移動した。

私が移動したのを見て、他のメンバーも席を移動しはじめて私が移したテーブルに音無ときび子がやってきた。

ミンコとドキコとサバミはOG子と大出の近くの席から一歩も動かなかったので安心した。

 

音無ときび子も私と同様に大出の自慢話に聞くのが苦痛だったようでリラックスし始め、そして二人そろってマイスケッチブックを取り出して絵を描き始めた。

 

(えぇっ・・・飲み会の席で絵描くの?!あれ?でもデザイン学科の飲み会だからいいのか?あれ?でもこれっていきなりスマホいじり始めるくらいねマナー違反じゃないの?でもデジタルじゃなくてアナログ?だからいいのか?ってよくわからん!)

 

私は生まれて初めて遭遇する状況に戸惑いながらったが、もう二人の好きにさせたらいいかと考えて出された料理をひたすら口にいれていた。

今思えば私も音無ときび子のように空気を読むことやマナー違反だとか色々考えずに一緒に絵を描き始めていれば良かった。

そうすれば、クセ強すぎてコントロールできなさそうとミンコとドキコと大出に思われてターゲットから外れていた可能性があった。

私の中途半端に空気を読もうとしてしまうところは自己愛強めの人間からしてみたらターゲットにしやすかった点でもあったのだろう。

音無ときび子が絵を描いている様子を見ながらその後新たにやって来た幹野とラノ田と食事しているとそこへ大出がやってきた。

音無は大出に描いている絵を見られたくなかったのかスケッチブックを隠してその場から少し離れたが、きび子は何も気にせず絵を描き続けていてそんなきび子に大出は

 

「おっ、大先生じゃないっすか?!なになに?!新作っすか?!」

 

と気安くチャラめの若者が女性に話しかけるようにからかい混じりの口調でで話しかけた。


※ちなみに大出は当時50代


私は大出は酔っていたのもあるのだろうし、親しみやすい気のいい感じを演出したかったのであろうがこのきび子に対する「大先生」呼びにはどこかきび子を敬いながらもバカにしているでは?というニュアンスと違和感を感じた。

しかしそんな私とは違いきび子は研究室で一番偉い大出からの「大先生」呼びがうれしかったようで得意げに嬉しそうに絵を描き続けていた。


今にして思えば、これも大出が自分の信者を増やすためのやり方だったのだろう。


大出はきび子やサバミのような負けず嫌いでプライドが高いフキハラ癖があり、「他人には頼りません!」という姿勢で生きているタイプの女が怖くて本来は苦手なのだ。

このタイプは一人でも平気なように振る舞うが、内心ではどこか孤独感やフラストレーションを感じながら生きている場合が多い。

大出はきび子やサバミのようなタイプと関わることになると不安で毎回、最初は低姿勢で近づき人前で褒め殺しをして子分のように低姿勢で敬うようなコミュニケーションをとって自分の味方にしているのだろう。

大出はそのような女性の心の隙間に漬け込んで味方にするのが上手かった。


(この人、ヤバいかも。何がヤバいのか具体的に何て言ったらいいかわかんないけど。なんかヤバい)



 

→大学のいじめっ子⑫