湘南の海で雅紀がオレを抱き上げた。
オレの目線の下にいる雅紀が優しく笑う。
雅紀。
雅紀。
誕生日おめでとう。
お前が生まれてくれたから今のオレがいるんだ。
そう思うと見下ろしている雅紀の顔が涙でボヤける。
雅紀の肩に置いていた手を少しづつ曲げて、オレは口付けた。
最大級の愛を込めて。
全身全霊の愛を込めて。
両手じゃ抱えきれないほど、こぼれ落ちんばかりの愛を込めて。
秋が近づく頃にオレを姫抱きにした雅紀はオレの重さに耐えきれずに一緒に倒れこんだけど、今日の雅紀は違った。
ふわりとオレを砂浜におろしてくれたんだ。
オレを抱き上げながらも自分の体を支えることも安定してきてるだなんて、お前、どれだけ努力してんだよ。
「まさ。ありがと」
「んん。凄いだろ?ちゃんとお姫様だっこからのベッドに翔ちゃんを投げるためにめっちゃトレーニングしてっからな」
「ふは。めっちゃ楽しみ♡」
「へへっ」
砂浜に落とされた松葉杖を手渡しながら頬にキスをすると雅紀はくふくふ笑うんだ。
それからなんとなく砂浜をブラブラしてから時計を見るとちょっとヤベぇな。
そろそろ急がねぇと。
「まさ、ごめんだけど行くぞ」
「へ?あぁ、うん」
雅紀の腕に絡みつきながらも雅紀を少し支えて駐車場へ向かった。
で、運転席から腕を伸ばしてシートベルトを締めてあげながらチュッとキスを落としてから車をスタートさせた。
「疲れたろ?寝てていいぞ?」
「大丈夫だよ?」
「何言ってんの。夜だってオレを抱いてて寝てねぇだろ」
「んー。まぁそうだけど??」
キョトンとしている雅紀にハイって左手を伸ばすと、雅紀はその手をモミモミしたり指と指を絡めたりしはじめていた。
でさ。
しだいに口数が少なくなってさ。
寝てやんの。
可愛いな。
信号が赤になるたびにその寝顔を見つめながら車を進めた。
可愛くなったりカッコよくなったり。
日々成長していく雅紀から目が離せねぇよ。
毎日「好き」と「愛してる」が更新されていく。
トントントントントン。
雅紀に握られたまま、ほんの少しだけ動く人差し指でいつものサインを送った。