それからも彼女は一日中オレたちの後ろをついて回っていた。
講義室が変わる度に近くに座ろうとしてオレたちの動きを見ていたり、学食でも近くに来ようと空いている席を吟味していた。
講義室はもう逃げも隠れも出来ないから渋々近くの席にならざるを得ない状況下にあったけど、さすがに学食まで近くに来られてはたまったもんじゃない。
「頼むからもういい加減にしてくれないか」
「もうショーンを放っておいてくれないか」
「キミがくっついてると櫻井も疲れることを分かってくれないか」
ややグッタリ気味なオレを見て見かねた隆ちゃんや滝沢が彼女に声をかけてくれた。
そしてブッキーは向こうに席があるからそっちへ行ってくれないかと彼女をその席へ案内しようと立ち上がった。
「なんで!別に近くにいるくらいいいじゃない!!」
「ダメとは言ってないけどさ。距離感の縮め方ってのがあるだろ?急に自分のパーソナルスペースにそんなに親しくもない人がヅカヅカ入ってきたら疲れるだろ」
相変わらずキャンキャンと吠えている彼女を穏やかな口調で言い聞かせながらブッキーがその席へ座らせた。
さすがにその説得は彼女に刺さったみたいで悔しそうにこちらを見ながらも、大人しくそこへ座ってくれた。
「今度はガキみたいな恋愛ごっこかぁ。ショーンも大変だな」
「モテる男はつらいねぇ?」
「高校時代と何も変わんねぇな、お前は」
「はああああぁあぁああぁ!疲れたぁーー!!」
彼女の視界にオレが入らないように壁になってくれながら3人が笑ってくれた。
もうそうやって笑い飛ばしてもらわないとめっちゃ疲れるわぁ!!!!
何を考えているか分からない状況だった彼女も疲れたけど、ガキみたいな覚えたての初恋にテンション爆上がりの彼女もなかなか疲れる。
ったく。
どうしたもんだろうか。
突っぱね続けたところでなんの決着もつかねぇだろうな。
振られた!!って大騒ぎされるのは目に見えている。かといって友達になんてなれるはずもねぇ。
せめて彼女に友達が出来てくれればまた少しは変わってくるんだろうけどなぁ。
そんなに調子よく簡単に出来るとも思えねぇし。
はあああぁあああぁぁぁ…。
盛大なため息しか出ねぇわ。