次の日、いつものように滝沢と2人で大学の最寄り駅に着いた。
すると。
「おはよう!!翔くん!!!」
「「翔くん!?」」
オレと滝沢の間に誰かが突っ込んできてそれはそれはご機嫌なテンションで挨拶をぶちかましてした。
それはまぎれもなく彼女だった。
でも昨日までの彼女とはまるで別人の姿でオレも滝沢も少々(いや、むしろかなり)引いた。
昨日までの挑戦的なケバケバしく強めな化粧はナチュラルになり、ギャル路線強めな服もいわゆる男ウケしそうな清楚ってこんなんなんだろなというものへガラリと変わっていた。
「…」
「お前。どうした?」
「え?変かなぁ?翔くんに合うような感じにしてみたんだけど??」
呆れてものも言えない状況なオレを察して滝沢が彼女に聞くと、彼女は何の悪びれもないようなケロリとした口調で答えた。
いや、オレ、清楚系な服とはまるで別方向な服ですけど。それに合うようにと言われてもナニヲイッテイルノカワカリマセンが???
「……」
「あれ?もしかして翔くん、私の変身ぶりにときめいてる??」
「ソレハナイ」
「やだぁー♡またまた照れちゃってぇ♡」
「ナニヲイッテイルノカ?」
「もう、照れてる翔くんも可愛いわ!」
やれやれ。
雅紀の言っていた通りだ。
彼女にとって恐らく初恋の対象となってしまったらしい。
だけど急に恋に目覚めて女子高生だか中学生だかみたいなテンションで外見を変えてきたり人懐っこく声をかけてきたとしても。
ハッキリ言ってオレにとっては微塵も関係ないし、なにせ迷惑な話だ。
「ゴメンだけど、オレには雅紀がいる。それは絶対的に揺るがない。一生アイツと一緒にいるって決めたし約束もしてる。キミにそんなことを言うのは酷かもしんねぇけど、ゴメン。オレにはアイツだけだ。じゃぁな」
「えっ!?待って!!翔くん!!!!」
「……離してくれ……頼む。もうオレには関わらないでくれ。それに仲間たちや雅紀にもだ…厳しいことを言っているのは百も承知だ。オレのためにも、キミのためにも…」
「…そんな!!!」
腕にすがりつこうとする彼女を振り切って滝沢の腕を掴んだオレは振り返らずに歩き出した。
「大丈夫か?お前、結構キツイこと言ってたぞ?」
「あれくらい言わねぇと伝わんねぇだろ?あんなことまでしてくるような女には…」
「まぁ、雅紀と付き合う前まではだらしない恋愛遍歴を持ってるお前らしい態度だよな。しつこい女への対処はなかなかだわ」
「褒めてんのか?けなしてんのか?」
「ははっ。両方だな」
「うっせぇわ」
校門の前で手を振っているブッキーと隆ちゃんとも合流して彼女とのことを話すと絵に書いたように呆れた顔をしてポカンとしていた。
そりゃ、みんなそうなるわ。
やれやれ。